ヘルメス 450
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/07 01:05 UTC 版)
ヘルメス 450

アメリカ合衆国税関・国境警備局のヘルメス 450
- 用途:偵察機、観測機
- 分類:無人航空機
- 製造者:エルビット・システムズ
- 運用者:
イスラエル(イスラエル航空宇宙軍)他
- 運用開始:1998年
- 運用状況:現役
ヘルメス 450(Hermes 450)は、イスラエルのエルビット・システムズが開発した無人航空機(UAV)。
本項では、イギリス向けの改良型ウォッチキーパーについても記述する。
概要
V字尾翼を持つ推進式のプロペラ機であるが、細い円筒形の胴体に短いアダプターを介して主翼を乗せるという、シンプルかつ独特な外見を持つ。エンジンにヴァンケルエンジンを採用しているのも特徴。離着陸には滑走路を使用する。派生型として、航続時間を延長したヘルメス 450LEや武装化を可能にした攻撃機ヘルメス 450S[1]も存在する。
主な想定用途はISTAR(情報収集・監視・偵察・目標捕捉)やELINT(電子情報収集)、COMINT(通信情報収集)で、武装化が可能[2][3]である。武装化された攻撃機は、2011年のイスラエルによるスーダン領域内の「イランの攻撃目標」への空爆で実戦運用が報告された[1]。
操縦は高度に自動化されているため、オペレーターはセンサーの操作に集中でき1人での制御が可能。専用のUGCS(Universal Ground Control Station)には予備を含めて2台のコンソールがあるため、1つのUGCSから2機を同時に制御することも可能である。このUGCSは後に開発されたヘルメス 900とも互換性がある。
なお、名称の数字はkg単位の最大離陸重量を意味するものであるが、あくまでも機体規模の目安であり、本機の実際の最大離陸重量は500kgを超えている。
ウォッチキーパー

イギリス陸軍は、砲兵隊向けの弾着観測・目標捕捉用UAVとして、ヘルメス 450をタレスUKが改良したウォッチキーパー WK450(Watchkeeper WK450)を導入している。外見はほとんど変わっていないが、天候に影響されずに地上の移動目標を探知できるよう、EO/IR(電子光学/赤外線)センサーと合成開口レーダーを組み合わせて装備している。機体は分解してコンテナに収容でき、地上管制ステーション(GCS)もコンテナ式になっているため、トラックで容易に展開することができる。
エルビット・システムズとタレスUKの合弁事業として設立された合弁会社U-Tacs(UAV Tactical Systems)が主契約社となり、2007年7月15日に54機を発注、2010年6月の就役を目指したが、初飛行が2010年4月14日にずれ込み、最終的に就役は2014年となった。このため、イギリス陸軍は繋ぎとしてベース機のヘルメス 450を緊急調達することとなった。
2014年にはアフガニスタンに送られて実戦投入されたが、翌年10月には「引き渡し済みである33機の大半は保管状態にあり、実戦使用されているのは数機で、訓練済みのオペレーターは6名のみ」と報じられている。
2019年2月、ウォッチキーパーがイギリス陸軍における完全作戦能力(FOC)を宣言したことが報じられた[4]。
運用国

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アゼルバイジャン
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ボツワナ
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ブラジル
- ブラジル空軍にてRQ-450の名称で運用。
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コロンビア
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クロアチア
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キプロス
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イギリス
- ウォッチキーパーの他ヘルメス 450も運用しており、後者はH-450と呼ばれることもある。
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ジョージア
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イスラエル
- イスラエル航空宇宙軍では"Zik"と呼称されており、同軍の第161飛行隊、別名ブラック・スネーク[5]及び砲兵隊 (イスラエル)[6]が運用している。
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北マケドニア
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メキシコ
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フィリピン
- フィリピン空軍が4機を導入[7]。
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シンガポール
- 2023年時点で、シンガポール空軍が9機以上のヘルメス450を保有している[8]。
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アメリカ合衆国
- アメリカ合衆国税関・国境警備局などで運用。
注目すべき実戦運用例
ワールド・セントラル・キッチン職員殺害
2023年10月にパレスチナ・イスラエル戦争が発生すると、翌年2024年4月1日に、人道支援NGOのワールド・セントラル・キッチン (WCK) の3台の車両がガザ地区中部に位置するデイル・アル・バラフの倉庫に支援物資を届けた後、イスラエル国防軍との事前調整にも拘わらず、「非戦闘地域」を走行中に同軍のヘルメス450からのミサイル攻撃を受け[9][10]、7人の職員が殺害された[11][12][13]。死者には、オーストラリア人、ポーランド人、英国人、米国とカナダの二重国籍者、パレスチナ人が含まれており、国際社会から大きな批判を受け、WCKや連携する非営利団体の支援活動が一時停止した[11][12]。イスラエル軍は「重大なミスと手続き違反」を認め2人の将校を解任したと発表したが、WCKのエリン・ゴア最高経営責任者は、同軍は「自らおかした失敗について、納得のいく調査を行うことはできない」と指摘し、第三者機関による独立委員会による調査を要求した[13][14][15]。国連のアントニオ・グテーレス事務総長も同様に独立調査が必要だとの認識を示した[15]。
諸元(ヘルメス 450)
- 全長:6.1m
- 全幅:10.5m
- 最大離陸重量:550kg
- エンジン:UAVエンジンズR802/902(W) ヴァンケルエンジン(52馬力)×1
- 最大速度:176km/h
- 運用高度:5,486m
- 航続時間:17-20時間
- 行動半径:300km
- ペイロード:180kg
武装化
- ミホリット (מכחולית、Mikholit)ミサイル - ヘルメス 450用に改造された、イスラエル・エアロスペース・インダストリーズ社の対戦車ニムロッド ・ミサイルの射程10キロの空対地派生型[1][3]。
- スパイク (4基装着可)[16] など。
脚注
- ^ a b c アメリカ陸軍訓練教義コマンド G-2 2011, p. 4-16.
- ^ “Israel: IAF uses Hermes 450 drones for precision strikes on Hamas targets” (英語) (2023年10月16日). 2024年4月19日閲覧。
- ^ a b “ODIN - OE Data Integration Network” (英語). odin.tradoc.army.mil. 2024年4月19日閲覧。
- ^ Tim Ripley (2019年2月7日). “Watchkeeper achieves full operational capability”. janes.com. 2024年12月1日閲覧。
- ^ Egozi, Arie (2023年10月16日). “Israel: IAF uses Hermes 450 drones for precision strikes on Hamas targets” (英語). Defence Industry Europe. 2024年4月20日閲覧。
- ^ “Israel's artillery corps starts using the Hermes 450 tactical unmanned aerial system | weapons defence industry military technology UK | analysis focus army defence military industry army” (英語). Army Recognition (2015年1月28日). 2024年4月21日閲覧。
- ^ Gabriel Dominguez (2021年2月15日). “Philippine Air Force displays recently acquired aerial assets”. janes.com. 2025年4月7日閲覧。
- ^ The International Institute for Strategic Studies (IISS) (2023-02-15) (英語). The Military Balance 2023. Routledge. p. 288. ISBN 978-1-032-50895-5
- ^ Kubovich, Yaniv (2024年4月2日). “IDF drone bombed World Central Kitchen aid convoy three times, targeting armed Hamas member who wasn't there” (英語). Haaretz 2024年4月19日閲覧。
- ^ McKernan, Bethan (2024年4月2日). “Charities halt Gaza aid after drone attack that killed seven workers” (英語). The Guardian. ISSN 0261-3077 2024年4月19日閲覧。
- ^ a b “ガザのNPOスタッフ死者7人に 米英、ポーランド人も”. CNN.co.jp (2024年4月2日). 2024年4月9日閲覧。
- ^ a b “ガザ支援職員7人殺害、イスラエルに圧力高まる 米大統領は「憤慨」”. BBCニュース (2024年4月3日). 2024年4月9日閲覧。
- ^ a b “ガザ支援職員死亡で将校2人解任、イスラエル軍 「重大なミス」”. ロイター通信 (2024年4月5日). 2024年4月9日閲覧。
- ^ “ガザ支援職員殺害、イスラエルが調査報告の要旨発表 西側は全容公開求める”. BBCニュース (2024年4月6日). 2024年4月9日閲覧。
- ^ a b “イスラエル軍、ガザ誤爆で高官2人解任…国連事務総長「ミスが何度も繰り返されている」”. 読売新聞オンライン (2024年4月6日). 2024年4月9日閲覧。
- ^ “Drone Inventory” (英語). RUSI | Armed Drones in the Middle East. 2024年4月9日閲覧。
参考文献
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出典は列挙するだけでなく、脚注などを用いてどの記述の情報源であるかを明記してください。
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- アメリカ陸軍訓練教義コマンド G-2 (2011年12月). “Worldwide Equipment Guide Volume 2: Airspace and Air Defense Systems” (PDF) (英語). アメリカ陸軍. 2024年4月21日閲覧。
- 井上孝司『軍用ドローン年鑑』イカロス出版、2016年8月。 ISBN 9784802201957。
関連項目
外部リンク
「ヘルメス 450」の例文・使い方・用例・文例
- 彫刻されたが上部にある方眼の石柱からなる像(通常ひげのあるヘルメス)
- ゼウスの息子で、メドゥーサを(アテネとヘルメスの助けを借りて)を殺害し、アンドロメダを海の怪物から救い出した
- 彼らが人々の信心を試験するために彼らのアイデンティティを明かさず地球に来たとき、ゼウスとヘルメスにもてなしを提供した純真な同国人
- その炉で450度で1時間加熱できますか?
- お会計は4500円です。
- 中世(時代) (500‐1450).
- 略さないで書き出すと 450 万は 4,500,000 である.
- バルト海の地域からのもので、4500万年前の琥珀の一部で2002年に特定された昆虫の目
- 西暦1100から1450年まで使われた英語
- およそ1450年以降の英語
- インドによって支配されたカシミールの地域と部分の間の境界がパキスタンのそばで制御されたのを示すべきである450マイルの線
- ヒマラヤ山脈にあるインド北部の山(25、450フィート)
- 古代アテネの政治家で、ペロポンネソス戦争の司令官(紀元前450年−404年頃)
- オランダ人の画家(1450年−1516年)
- イタリアの探検家で、1497年に英国の遠征を率いて、北アメリカ本土を発見し、ノヴァスコシアからニューファンドランドまでの海岸を探検した(1450年−1498年頃)
- ポルトガルの探検家で、1488年に喜望峰に着いた最初のヨーロッパ人(これにより、大西洋からアジアまで航路を確立する)(1450年−1500年)
- 約450平方キロの土地が冠水するだろう。
- 沖縄で最も人気がある観光スポットの1つ,首里城は,明治維新後の新しい日本政府の命令によって,最後の王が城を明け渡すまで,約450年間,琉球の王宮であった。
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