ピアノ・ソナタ第10番
英語表記/番号 | 出版情報 | |
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チェルニー(ツェルニー):ピアノ・ソナタ 第10番 変ロ長調 | Sonate für klavier Nr.10, B-dur Op.268 | |
ジャコブ:ピアノ・ソナタ 第10番 | Sonate pour piano No.10 | 作曲年: 1944年 |
アレクサンドロフ, アナトーリイ:ピアノ・ソナタ 第10番 | Sonata for piano No.10 | |
スクリャービン(スクリアビン):ピアノ・ソナタ 第10番 | Sonata for Piano No.10 Op.70 | 作曲年: 1913年 出版年: 1913年 初版出版地/出版社: Jurgenson |
プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ 第10番 ホ短調 | Sonata for piano No.10 Op.137 | 作曲年: 1953年 |
カプースチン:ピアノ・ソナタ 第10番 | Piano Sonata No.10 Op.81 | 作曲年: 1996年 |
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第10番 ト長調
英語表記/番号 | 出版情報 | |
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ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第10番 ト長調 | Sonate für Klavier Nr.10 G-Dur Op.14-2 | 作曲年: 1799?年 出版年: 1799年 |
楽章・曲名 | 演奏時間 | 譜例![]() |
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1 | 第1楽章 1.Satz Allegro | 8分00秒 |
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2 | 第2楽章 2.Satz Andante | 5分30秒 |
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3 | 第3楽章 3.Satz Scherzo-Allegro assai | 3分30秒 |
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作品解説
旧来このソナタは《ホ長調ソナタ》Op.14-1と時期を交差して作曲されたと考えられていたが、近年ではこれが完成した直後から着手され、1799年夏頃に完成したと考えられている。
(第1楽章)ト長調 4分の2拍子 ソナタ形式
[提示部]
主要主題は4度下降+短2度上行という性格的な動機とシンコペーション・リズムの動機からなる。この性格的な動機は、Op.14-1第3楽章におけるロ長調の主題にもみられる。主題の確保は省略されており、終始和声的なアルペジオ伴奏をともないながら、属音(二音)の同音反復、主要主題におけるシンコペーション・リズムの拡大形によって副次主題へ推移する。
ニ長調で提示される副次主題(第26小節~)は、付点リズムと3度重音の2度下降動機からなる。提示部はリピート記号によって反復される。
[展開部+再現部]
まず主要主題をト短調あつかうが、すぐに副次主題が変ロ長調であらわれる(第74小節~)。展開部において副次主題があらわれるのは、初期のベートーヴェンのソナタの中ではこれがはじめてである。
付点リズムを反復した後、上声の16分3連音符によるアルペジオ伴奏をともなって低声部で主要主題の性格的な動機が展開される(第81小節~)。再び主要主題があらわれ、調性は変ホ長調となる(第99小節~)。32分音符による音階パッセージを経て、主要主題の短2度上行動機が繰り返されて(第115小節~)再現部に至る。
主要主題、副次主題ともに主調であるト長調で再現され、最後に主要主題がもう一度あらわれて楽章を閉じる。
(第2楽章)ハ長調 2分の2拍子 変奏曲
反復記号をもたない8小節と、反復される12小節(=24小節)の、計24小節(=32小節)からなる主題と3つの変奏で構成されている。このような変奏曲形式の導入は、葬送ソナタOp.26で再び実践されることとなる。
主題はほぼ四声体で書かれ、スタッカートとレガートの対比が特徴的である。第1変奏(第21小節~)では主題が内声にあらわれ、第2変奏(第41小節~)ではこれが上声に半拍遅れてシンコペーション風にあらわれる。第3変奏(第65小節~)ではバス・ラインをレガート奏法で旋律的にあつかい、上声は分散和音化されている。最後にコーダとして6小節の後奏が付されている。
(第3楽章)ト長調 8分の3拍子 スケルツォ(ロンド)
Allegro assaiという速いテンポ、(八分の)三拍子、さらにスケルツォという表記もされていながら、形式的にはロンド形式である。
ロンド主題は3度順次上行する動機の連続からなる。第2の主題(第23小節~)は平行調のホ短調であらわれ、和音の強奏と16分3連音符の弱奏という対比的な性格をもっている。ロンド主題が回帰した後、ハ長調の新主題による中間部(第73小節~)が挿入される。
再びロンド主題が回帰し(第139小節~)、今度はロンド主題の素材が発展的にあつかわれてコーダを形成する(第175小節~)。
ベートーヴェンは後にソナタ形式のコーダを「第2の展開部」として拡大するまでになるが(ソナタ形式楽章のコーダを拡大する試みは、既に《ハ長調ソナタ》Op.2-3の第1楽章にもみられる)、ここにみられるロンドのコーダを動機の展開技法によって拡大するこの手法に、そうした後年のベートーヴェンを見出すことは、決して的外れなことではないように思われる。
第1楽章の展開部作法の変化、第2楽章の変奏曲形式導入、そして第3楽章ロンドにおけるコーダの動機展開技法による拡大など、この作品は実は、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ創作史のなかで1つの転換点となっているのである。
モーツァルト:ピアノ・ソナタ 第10番 ハ長調
英語表記/番号 | 出版情報 | |
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モーツァルト:ピアノ・ソナタ 第10番 ハ長調 | Sonate für Klavier Nr.10 C-Dur K.330 K6.300h | 作曲年: 1783年 出版年: 1784年 初版出版地/出版社: Artaria |
楽章・曲名 | 演奏時間 | 譜例![]() |
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1 | 第1楽章 Mov.1 Allegro moderato | 6分00秒 |
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2 | 第2楽章 Mov.2 Andante cantabile | 6分30秒 |
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3 | 第3楽章 Mov.3 Allegretto | 3分30秒 |
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作品解説
旧来このソナタは、続く2つのソナタ(イ長調 K.331、ヘ長調K. 332)とともに、パリで作曲されたと考えられてきた。しかし、近年の研究成果(ヴォルフガング・プラートやアラン・タイソンらによる自筆譜の研究)によって1783年にウィーン、またはザルツブルクで作曲されたことが明らかとなった。
現在クラクフの図書館に保存されている自筆譜は、第2楽章の第60小節の後半から64小節までが欠落している。その他、多くの箇所で、初版のアルタリア版(1784年ウィーン)強弱記号や奏法記号に差異が認められるため、新モーツァルト全集では自筆譜を底本に、アルタリア版から多くを採用している。
第1楽章 4分の4拍子 ハ長調 ソナタ形式
32分音符による音階と装飾音型、16分音符の分散和音を素材とする主要主題で開始される。装飾的なパッセージによる移行部(第19小節~)を経て、第34小節より属調で副次主題があらわれる。主要主題と副次主題双方の素材からなるコーダ(第54小節~)によって、ト長調で前半を閉じる。
後半部分(第59小節~)は、まずト長調からイ短調へ転じ、再びト長調を経由して主要主題の主調再現(第88小節~)を迎える。移行部の変形(第109小節)によって、属調ではなく主調にて副次主題を再現(第121小節~)する。
第141小節からのコーダは、前半の終結部分に後半部分冒頭の移行楽想が回帰して楽章を閉じる。
第2楽章 ヘ長調
前半8小節、後半12小節がそれぞれ反復記号によって繰り返される主題には、第1楽章の主題を想起させる素材が盛り込まれている。中間部(第21小節~)では同主短調のヘ短調へ転じる。6度および3度の重音や16分音符による保続バスを特徴とした主題の変奏が行われ、再びヘ長調で主題が再現(第41小節~)されると、コーダ(第61小節~)では中間部分の変奏が主調で回帰する。
第3楽章 ハ長調 ソナタ形式
8分音符を基調とした軽快な主要主題は、16分音符の分散和音伴奏による確保を経て、16部3連音符のパッセージへと発展する。移行部(第21小節~)の後、副次主題(第33小節~)があらわれる。
後半部分(第69小節~)の冒頭を開始する動機は、おそらく副次主題後半部分の同音連打の音型(第59小節)の拡大形であろう。こうした何気ない部分の素材を発展させる点は、モーツァルト独特のものといえるかもしれない。すぐに主要主題の主調再現(第96小節~)をむかえ、副次主題の主調再現(第132小節~)を経てコーダ(第160小節~)へと至る。
シューベルト:ピアノ・ソナタ 第10番 ハ長調
ピアノソナタ第10番
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