『中央公論』から執筆依頼とは? わかりやすく解説

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『中央公論』から執筆依頼

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/05 08:38 UTC 版)

のんきな患者」の記事における「『中央公論』から執筆依頼」の解説

次郎これまでにない身体の悪化感じながら、創作集のゲラ刷り校正連絡などを母に手伝ってもらい、1931年昭和6年4月も床の中で再校までの目を通したこの頃次郎は、再び見舞いに来た辻野久憲に、セルバンテスの『ドン・キホーテ』を読んで以来自身過去の作品のような芸術観飽き足らなくなった漏らした。 陽気が暖かくなり、やや調子戻した次郎は、少しでも良くなりたい一心で、近所の人が殺したマムシもらって肝臓心臓を生で飲み、肉は干物にして少しずつ焼いて毎日食べ煙草すっぱり止める決意の下で「禁煙日記」を付け始めるが、死が近づいていることを明白に自覚していた。 東京去ってから3年間、病状悪化していく現状を基次郎受け止め、〈なにしろこの病気今や僕の現実全部だ。いろんなことを考える。考えたことはみな書き度い。しかし自由に書けない〉という歯がゆい思いであった。 僕も病気がだんだん苦しくなつて来るので困つてゐる、一月十日に寝ついて それ以来ずつと寝巻きのままで着物着たとがないの上ばかりだ 三年も前は自然や風景をのみ眺めてゐた眼は 必然心のなかへ向けられる。これが実に苦しいのだ。しかしこれまでほつておいたのだから 何とも致し方ない生きるにも死ぬるにも この荒廃の地を何とかしなくてはならない。死ぬことは人間としてあきらめなければならないが、こんな心の状態のままで死ぬことは実際恥辱にちがひない。僕は今年になつて、人間三十一、いろんな省察もだんだん地について来たことを感じる。仕事をしても これまでの仕事よりはずつとしつかりしたもの書けるにちがひない、こんな心の状態から何か書き出した何時もそのことばかり思ふのだが それも感傷主義病気のためには超克すべき苦患かもしれない、 — 梶井基次郎中谷孝雄宛て書簡」(昭和6年5月5日付) そして5月刊行された初の創作集『檸檬』喜び感じと共に、〈病気のことを考へると「うーん」と絶句して〉、まだ元気だった頃の〈怠慢〉を基次郎痛感したまた、この過去の作品群より以上の作品書けるという心持で、〈ただ要は誰がどうあらうとも僕だけは完全にこの作品群踏み越したのです。僕はもう振向かない〉と抱負抱いた創作集『檸檬』売れなかったが、贈呈した作家からの反響徐々に広まり中央文壇文芸雑誌中央公論』の編集部員田中西二郎から基次郎元へ執筆依頼の手紙が5月28日に来た。田中はまだ東京商科大学予科学生だった頃(後輩伊藤整がいた)、『青空』に掲載された基次郎の『川端康成第四短篇集心中」を主題とせるヴァリエイシヨン』(1926年7月)を読んで着目していたこともあり、創作集の作品群改めて基次郎才能確認した。 ただし中央公論社社長らは基次郎の名を知らなかったため、掲載条件として原稿持ち込み」という形を取ってほしいと田中言われ、基次郎はそれに応じた。ところが、意気込んで仕事取りかかろうとした6月中旬兄嫁・あき江の実家紀州)の人が湯崎捕まえ1か月飼って太らせ送ってくれたマムシ生き肝飲み痒み浮腫が顔や体中出て腎臓炎となる災難があり、1か月ほど中断され出鼻くじかれてしまった。 文芸評論家からも創作集の好評得た次郎は、プルーストの『失ひし時を索めて』も読んだことで創作意欲刺激され、夏頃から徐々にのんきな患者』の執筆作業取りかかった8月には、困窮する母や弟が待望していた本の印税がやっと入った原稿進捗上手くいかず何度も書きつぶしていた基次郎は、「持ち込み」という形の掲載条件では本当に掲載されるのか不明で、まるでテストを受けるかのような気分では仕事はかどらないという主旨を、北川冬彦通じて田中西二郎伝えてもらった田中は、その申し出もっともなことだと基次郎態度感心し編集会議にかけ正式な執筆依頼という形にすることを考えたそんな中9月下旬、基次郎になついて離れ家遊びにいく子供らに、兄嫁・あき江が「そばに寄った病気が移る」と注意したのを聞いた次郎怒り兄嫁子供2人連れ実家帰ってしまうという揉め事があった。10月大阪の弟・勇が迎え来て、基次郎は母と共に住吉区王子町実家戻っていった。王寺駅呼吸困難となった次郎を、勇は背中負ぶって駅の階段や家の階段上った

※この「『中央公論』から執筆依頼」の解説は、「のんきな患者」の解説の一部です。
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