舟歌とは? わかりやすく解説

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ふな‐うた【船歌/舟唄】

読み方:ふなうた

船方が船をこぎながらうたう歌。広義には、船に関係した作業儀式歌われる民謡棹歌(さおうた)。

バルカローラ


ショパン:舟歌 嬰ヘ長調

英語表記/番号出版情報
ショパン:舟歌 嬰ヘ長調Barcarolle Fis-Dur Op.60 CT6作曲年: 1845-46年  出版年1846年  初版出版地/出版社Leipzig, Paris and London  献呈先: Baronne de Stockhausen

作品解説

2008年7月 執筆者: 朝山 奈津子

 「舟歌(バルカロール)」はヴェネツィアゴンドラ漕ぎの歌に由来するといわれている。8分の6拍子軽快動きを伴うが、どこか感傷もの悲しさ含んでいるのが多くの「舟歌」の共通点である。しかし、これをジャンルとしてその伝統を辿ることはほとんど不可能である。おそらく流行の始まり19世紀オペラにこの種の歌が好んで用いられたことにある。ピアノのための作品としては、メンデルスゾーンが『無言歌集所収のものを含めて3曲を残したほか、ショパンのものが最大規模かつ最高の佳作である。また、フォーレ13曲を書いていることから、ジャンルとして「舟歌」に取り組んだものと考えられる。しかしそれ以降は再び散発的な作品に留まっている。「舟歌」はジャンルと言うよりは、19世紀中盤から20世紀にかけて長く流行した性格小品のひとつというべきだろう
 ショパン《舟歌》は、いっけんするとロンド風に冒頭主題繰り返し現われ合間さまざまなエピソード挿入されているように聞こえる。そのため、ヴェネツィアの街を小舟で巡る――たとえば繰り返し回帰する主題は、「大水路」の風景相当する、といった――風景描写的な解釈も可能であろう。しかし《舟歌》は実は、ショパン中でも整った形式持ち優れて精緻な主題労作施されている。
 各セクションは、次のように区分できる


小節番号 セクション 調
1-3 序奏 Fis: 主調
     
4-16 第1主題 Fis: 主調
17-23 間句  
24-34 第1主題確保  
     
35-39 間句 Fis-A 主調から同主短調iii長調
     
40-50 第2主題前半 A:/fis:
51-61 第2主題前半確保  
62-71 第2主題後半 A:
     
72-77 間句 Cis: 属調
78-83 挿入句  
     
84-92 第1主題再現 Fis: 主調
93-102 第2主題後半再現  
103-110 第2主題前半再現  
111-116 終結  

 つまり、複数主題の提示ブリランテなパッセージワークによる中間部主題再現という、ショパンがもっと多用する三部形式一種である。しかしこの作品では、中間部がひじょうに縮小されている上、美し旋律依存するような単純な反復ではなく巧み主題配置なされている。
 第1主題第2主題前半は、絶え間ない8分の6拍子のオスティナート・リズムに攪乱されるが、音楽内容きわめて対照的である。調は同主短調に移る。また、第1主題下行旋律であるのに対し第2主題前半は上行形である。第2主題後半は調以外には前半それほど明確な繋がりはない。この主題が持つ華やかさは、ここではまだ音量によって抑えこまれている。
 中間部では、わずか5小節ながら、8分の6拍子刻み一瞬やんで、拍節リズム収まらない自由な時間の流れになる。しかしこの部分は単に、異な時間の流れ意識させるに留まりショパン中間部特有の旋律美を聴かせるには至らない
 再現部は、第1主題変奏から始まり一瞬休符クライマックスとして完全終止し、主調のまま第2主題後半突入する。続く第2主題前半再現は、後楽節のみを用いときおり同主短調響き覗かせつつ、壮大な物語終わりへと導いていく。ここはすでにコーダ領域であり、第2主題後半壮麗な回音動機最高潮形成し前半後楽節の多層的で下行形の動機によってそれを収束させている。こうした動機使い方は実に見事という他はない。
 このようにみると、ショパンの《舟歌》はフォーレのそれとは異なり抒情的な音楽というよりはむしろ、《スケルツォ》や《バラード》と同種の疑似ソナタ形式による物語的な音楽である。しかしそれが硬直した図式に陥らないのは「つなぎ」の巧さにある。序奏の3小節や第35-39小節の間句、各セクション始まり告げ重音トリルなどは、全体動機労作とほとんど関係ないからこそ、わずか数小節聴き手の耳を捉え音楽雰囲気をがらりと変化させてしまう。全体自然に流れあたかも羅列的に、あるいは抒情的に聞こえのである。この作品こそ、物語性抒情性とを見事に融合させたショパン晩年期最高傑作のひとつと呼ぶにふさわしい曲である。
ジョン・リンク「《舟歌》――構成化と高潮化」John Rink, "The Barcarolle: Auskomponierung and apotheosis", in Chopin Studies, 1988, 195-220.


舟歌


舟歌

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/08 11:31 UTC 版)

舟歌ふなうた)は、ピアノのための性格的小品のひとつ。ヴェネツィアゴンドラの舟歌を模したもので[1]バルカロールフランス語: Barcarolle)、バルカローライタリア語: Barcarola)、あるいはバルカローレ(Barcarole)とも呼ばれる。




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