鍼灸 鍼灸の概要

鍼灸

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/19 15:41 UTC 版)

0.16mm径の鍼

身体へ加えたさまざまな物理刺激による治療的経験則の数世紀に亘る集積であり、これを技術論として構築した技法を「鍼灸」と呼ぶ。近世まで、生薬方と共に東アジア各国の主要な医療技術として発展した。特に17-19世紀の日本において鍼灸は独自の発展を遂げ、現在世界的に活用される鍼灸技法の基盤を形成した。日本では「医師」の他「はり師」「きゅう師」がこれを行える。20世紀後半よりは欧米においても有用な医療技術として認識されて活用されるようになり(英語ではAcupuncture and Moxibustionと訳される)、これを受ける形で、世界保健機関(WHO)は、1996年10月28日-11月1日にセルビアで“鍼に関する会議”を開催し、1999年には、鍼治療の基礎教育と安全性に関するガイドラインを提示した[2][* 1]

UNESCOは「伝統中国医学としての鍼灸」(Acupuncture and moxibustion of traditional Chinese medicine)を、2010年11月16日に無形文化遺産に指定した[3]


注釈

  1. ^ WHO(世界保健機関)において鍼灸療法の適応とされた疾患[要出典]
    • 神経系疾患
      • ◎神経痛・神経麻痺・痙攣・脳卒中後遺症・自律神経失調症・頭痛・めまい・不眠・神経症・ノイローゼ・ヒステリー
    • 運動器系疾患
      • 関節炎・◎リウマチ・◎頚肩腕症候群・◎頚椎捻挫後遺症・◎五十肩・腱鞘炎・◎腰痛・外傷の後遺症(骨折、打撲、むちうち、捻挫)
    • 循環器系疾患
      • 心臓神経症・動脈硬化症・高血圧低血圧症・動悸・息切れ
    • 呼吸器系疾患
      • 気管支炎・喘息・風邪および予防
    • 消化器系疾患
      • 胃腸病(胃炎、消化不良、胃下垂、胃酸過多、下痢、便秘)・胆嚢炎・肝機能障害・肝炎・胃十二指腸潰瘍・痔疾
    • 代謝内分泌系疾患
      • バセドウ氏病・糖尿病・痛風・脚気・貧血
    • 生殖、泌尿器系疾患
      • 膀胱炎・尿道炎・性機能障害・尿閉・腎炎・前立腺肥大・陰萎
    • 婦人科系疾患
      • 更年期障害・乳腺炎・白帯下・生理痛・月経不順・冷え性・血の道・不妊
    • 耳鼻咽喉科系疾患
      • 中耳炎・耳鳴・難聴・メニエル氏病・鼻出血・鼻炎・ちくのう・咽喉頭炎・へんとう炎
    • 眼科系疾患
      • 眼精疲労・仮性近視・結膜炎・疲れ目・かすみ目・ものもらい
    • 小児科疾患
      • 小児神経症(夜泣き、かんむし、夜驚、消化不良、偏食、食欲不振、不眠)・小児喘息・アレルギー性湿疹・耳下腺炎・夜尿症・虚弱体質の改善
  2. ^ 医師は業務として鍼灸を行うことが可能であるが、現在、医学部教育において鍼灸の科目を置く大学はほとんど無く、鍼灸臨床を行うために必要なトレーニングの内容や時間数など法制度の整備もなされていないため、実際には鍼灸を行う医師数は非常に限られる。また、技術の習得についても、個々の医師の裁量に任されている状態である。

出典

  1. ^ a b 梶田昭 『医学の歴史』 講談社、2003年
  2. ^ a b 世界保健機関 2000.
  3. ^ Acupuncture and moxibustion of traditional Chinese medicine”. UNESCO. 2013年5月25日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g h 真柳誠「現代中医鍼灸学の形成に与えた日本の貢献」『全日本鍼灸学会雑誌』第56巻第4号、全日本鍼灸学会、2006年、605-615頁、CRID 1390282679524461952doi:10.3777/jjsam.56.605ISSN 02859955 
  5. ^ a b 真柳誠「韓国伝統医学文献と日中韓の相互伝播 『温知会会報』34号、1994年
  6. ^ [鍼灸の標準化・JIS・ISO:ローカルな伝統医学のグローバル化による利害得失を考えよう] 森ノ宮医療大学 鍼灸情報センター
  7. ^ 東洋伝統医学の正式名称「伝統中医学」に、中国が主導権 健康百科
  8. ^ 工藤訓正「刺絡名家」『漢方の臨床』9巻11号、1962年、p989
  9. ^ 日本が受容した韓医学と古医籍の交流史 真柳誠 茨城大学大学院人文科学研究科教授
  10. ^ a b 二基湖, 徐廷徹, 李源哲, 金甲成「韓国韓医学会の現状と鍼灸分野における近代韓日交流史 : 鍼灸学を中心に」『全日本鍼灸学会雑誌』第52巻第5号、全日本鍼灸学会、2002年、601-609頁、CRID 1390282679521092736doi:10.3777/jjsam.52.601ISSN 02859955 
  11. ^ 吉冨誠, 「1.韓国伝統医学の今昔 : 日本との交流も含めて(韓国伝統医学への理解)(第54回日本東洋医学会学術総会)」『日本東洋醫學雜誌』54(6)、2003年、1046-1048頁, NAID 10016195720
  12. ^ a b ハイデローレ・クルーゲ 著 『ヒルデガルトのハーブ療法』畑澤裕子 訳・豊泉真知子 監修、フレグランスジャーナル社、2010年、ISBN 9784894791732
  13. ^ a b c d e f ミヒェル ヴォルフガング「16-18世紀のヨーロッパへ伝わった日本の鍼灸」『全日本鍼灸学会雑誌』第61巻第2号、全日本鍼灸学会、2011年、150-163頁、doi:10.3777/jjsam.61.150 
  14. ^ はり・きゅうの施術を受けられる方へ 厚生労働省
  15. ^ はり師、きゅう師及びあん摩マッサージ指圧師の施術 に係る療養費に関する受領委任の取扱いについて(平成 30 年6月 12 日保発 0612 第2号)厚生労働省
  16. ^ はり治療後に死亡、元副院長に有罪判決 大阪地裁 日本経済新聞2010年12月
  17. ^ 消費者契約法に関連する消費生活相談および裁判の概況 独立行政法人 国民生活センター 2007年11月9日 ※PDF


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