家弓家正 エピソード

家弓家正

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/22 06:56 UTC 版)

エピソード

芸名は使わなかった。過去には姓名判断で「大変良くない名前だし、将来も良くないから絶対に変えなさい」と言われたが「僕らの仕事は保証もなく既に良くない」と本名で活動していた[15]

呑み仲間でもある若本規夫からは、収録の際に台詞を決して間違えないことから「精密機械」の異名を与えられた。これに対し本人は「ちょっと、何ていうか⋯非人間的(な表現)だねぇ(笑)」と返しており、「デビュー当時は生放送が基本で何度もトチると次は使ってもらえない時代だったし、トチらない奴に仕事が回った結果で、僕はそんな大したことしてない」と述べている[29]

山路和弘によると、吹き替えに関して家弓は「この仕事は錯覚だからね」とよく言っていたという[30]

藤村歩は尊敬する声優として家弓の名を挙げており、家弓は彼女に芝居の大切さを教えている[31]

悪役

風の谷のナウシカ』のクロトワ役や『ドラゴンボールZ 燃えつきろ!!熱戦・烈戦・超激戦』のパラガス役など、様々な作品で黒幕や敵役、悪役を演じた[4]

敵役について家弓自身は、普段できないことを思う存分でき、ストレス発散になるので面白いと語っている[16]。また、声優業自体が画面のタイミングに自分の演技を合わせなければならないという制約によるつまらなさを感じることもあることから、「いい人、やさしい人よりも屈折した人物の声をやってる方が飽きないんです(笑)」と語ったこともある[17]

「悪役に家弓」というイメージは古くからあったらしく、1963年のドラマ『逃亡者』シリーズで黒幕が明らかになるかというクライマックスの回に家弓がゲスト出演した際、レギュラー出演者から「やっぱりお前が一番悪い奴だったのか!!」と声をそろえ冗談交じりにののしられたというエピソードがある。しかし、実際の黒幕は家弓が吹き替えを担当した人物ではなかった。

OVAジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日』の収録で同年代の矢島正明と久々に共演し再会した際、矢島は「なぜ家弓が悪役ではないのか、いつ裏切るのかと待っていた」と悪役の多い経歴を踏まえた冗談を飛ばした。

フランク・シナトラ

1967年にテレビ朝日日曜洋画劇場』の前身である『土曜洋画劇場』で放送された『見知らぬ人でなく』以降、フランク・シナトラの吹き替えをほぼ専属で担当した。

初めてオファーが来た際はシナトラの全盛期であり、家弓は当初「シナトラは誰もが声を知っている程の世界的な歌手で、(当時存在した)ファンクラブからもクレームがくるのが目に見えている」と断るなど乗り気でなかったが、「本数も少ないし頼むからやってくれ」といわれ渋々担当することになったという[16]。その後、クレームがきたという話はなかったが、家弓は「降板させないため本人に見せないでくれていたのではないか」と述べている[16]

それからは、どきどきしながらシナトラに吹き替えていたという[16]。なお、気持ちの上での抵抗に関しては途中で「仕方がない」と諦めの心境に変わったといい、「つまり全く意識しないでやる事なんです。1ステージ何十万ドルもとる人と勝負できないもんですから」と語っている[15]

シナトラの芝居について、家弓は「歌手としては非常に好きだが、役者としてはあまり魅力を感じない」と評し、「何回も同じ人を吹き替えていると情が移るとか言われますが、私は性格的にあまり情が移らない方でして…」と述べている。また演技は「台本どおりきっちりしている」ため「崩しているようで崩してない」と吹き替える上で注意しているといい[16]、「僕は彼のことを二枚目の役とは思ってません。一種の仇役だと思ってやってるから皆さんすんなり受け入れてくれるんじゃないですか?」と語ったこともある[17]

これまで演じて楽しかったシナトラ作品に『波も涙も暖かい』を挙げている[16]。なお、家弓自身が面白いと感じて、吹き替えをやりたかったシナトラ作品は『三人の狙撃者』だったが、結局やる機会がなかったという[16]

ドナルド・サザーランド

ドナルド・サザーランドの吹き替えは、若い頃でなく「彼がある程度年をとってから」多く担当するようになった。ただし、初担当は1975年放映の『ジョニーは戦場へ行った』である[16]

サザーランドについて、家弓は「あの目が『絶対にこいつが悪い奴だ』と思わせる」と語った。また「しゃべり方が不思議で、息継ぎをせずにだらだらしゃべるため担当する時は辛いとも語り、『JFK』では15分もほとんど1人でしゃべり通すシーンだったため泣かされたという[16]

宮崎駿作品

宮崎駿の監督作品では、二度悪役として出演している。

未来少年コナン』では、独裁者のレプカを担当。家弓はレプカに対して、人物像を探れるような描写が少なく役が掴みにくかったといい、場面によって性格が大きく異なったことで「もう少し陰のあるキャラクターであって欲しかったな」と評している。また「もっと人間としての存在感というかリアリティがある役でいてほしかった」という趣の発言をしているほか、収録時に絵が完成しておらず苦労したこともあり「いろんな意味において不満の多かった作品ですね。僕にとっては」と発言している[32]

『未来少年コナン』の後に公開された『風の谷のナウシカ』ではクロトワを演じており、クロトワに関して家弓は「同じ“敵役”でも今回のクロトワという男は、レプカに比べて肩に力が入ってない⋯⋯とでもいうのでしょうか。要するに飄々と生きている感じです」と評し、「この宮崎さんが創った魅力あるキャラクターは、演じていてとても楽しかったですね」とコメントしている[33]

なお、上記二作の間に製作された『ルパン三世 カリオストロの城』では、宮崎本人からカリオストロ伯爵役を熱望されたが、諸事情により辞退している(演じたのは石田太郎)。

その他出演作

超音速攻撃ヘリ エアーウルフ』でアークエンジェル(アレックス・コード)を担当した際は、「CIAは日本では陰謀に関わる悪玉として知られているが、自分は主人公側なので主役をサポートする人格者を演じなきゃならない、少々やりにくい」と述べた[17]


注釈

  1. ^ 生年月日を1932年10月31日と書かれた資料もある[2][9][10]
  2. ^ 後に、在京の鹿児島県甲南高校演劇部OBで作った甲南テアトロ会にも参加した[13]
  3. ^ 死後2年ほどは出番がなかったため、第783話は過去の収録音声を流用したライブラリ出演となり[65]、劇場版では『純黒の悪夢』から、テレビシリーズでは第1078話から土師が演じることになった。
  4. ^ 家弓の生前に放送された第512話では家弓ではなく上田敏也が担当した。
  5. ^ ただし、厳密には津田が演じたナナカマド博士は並行世界の人物で、家弓が演じたナナカマド博士とは別人である。

出典

  1. ^ 『日本タレント名鑑 2007』(VIPタイムズ社、2007年) 111頁
  2. ^ a b c d e f g DJ名鑑 1987三才ブックス、1987年2月15日、58頁。
  3. ^ a b c d e f g 「訃報 家弓家正」『南日本新聞』、2014年10月9日、朝刊、23面。
  4. ^ a b c d e “「ナウシカ」クロトワ役 声優の家弓家正が死去”. スポーツニッポン. https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2014/10/09/kiji/K20141009009070020.html 2015年3月13日閲覧。 
  5. ^ a b c 『声優名鑑 アニメーションから洋画まで…』近代映画社、1985年、47頁。 
  6. ^ 家弓 家正」『Excite News』(エキサイト株式会社)。2023年11月5日閲覧。
  7. ^ a b c 家弓 家正 - (メモリアル):株式会社81プロデュース‐声優プロダクション”. 2022年10月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年12月31日閲覧。
  8. ^ a b 『日本タレント名鑑(2014年版)』VIPタイムズ社、2014年1月30日、110頁。ISBN 978-4-904674-05-5 
  9. ^ 『日本タレント名鑑(1988年版)』VIPタイムズ社、1988年、69頁。 
  10. ^ a b c 『タレント名鑑NO1』芸能春秋社、1962年、146頁。 
  11. ^ 家弓家正 プロフィール”. allcinema. スティングレイ. 2014年10月12日閲覧。
  12. ^ a b c d “俳優・声優の家弓家正さんが死去 「ナウシカ」のクロトワや「ドラゴンボールZ」パラガス役など演じる”. ITmedia. https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1410/08/news123.html 2014年10月8日閲覧。 
  13. ^ 『樟風遙か 甲南高校創立百周年 同窓会記念誌』甲南高校創立百周年記念事業同窓会実行委員会、2006年11月3日、144頁。 
  14. ^ a b 勝田久『昭和声優列伝 テレビ草創期を声でささえた名優たち』駒草出版、2017年2月22日、229頁。ISBN 978-4-905447-77-1 
  15. ^ a b c d 阿部邦雄「第2部 人気声優インタビュー60人集」『TV洋画の人気者 声のスターのすべて』近代映画社、1979年、255-258頁。ASIN B000J8GGHO 
  16. ^ a b c d e f g h i j k とり・みき『とり・みきの映画吹替王』洋泉社、2004年、50-59頁。ISBN 4896918371 
  17. ^ a b c d 『ロマンアルバムスペシャル 超音速攻撃ヘリエアーウルフ』徳間書店、1987年、68-70頁。 
  18. ^ 『出演者名簿(1963年版)』著作権資料協会、1963年、133頁。 
  19. ^ 『出演者名簿(1966年版)』著作権資料協会、1965年、103頁。 
  20. ^ 『出演者名簿(1969年版)』著作権資料協会、1968年、121頁。 
  21. ^ 『出演者名簿(1972年版)』著作権資料協会、1971年、124頁。 
  22. ^ 『声優の世界-アニメーションから外国映画まで』朝日ソノラマファンタスティックコレクション別冊〉、1979年10月30日、78頁。 
  23. ^ 掛尾良夫 編「男性篇」『声優事典 第二版』キネマ旬報社、1996年3月30日、88頁。ISBN 4-87376-160-3 
  24. ^ <訃報>”. 81プロデュース (2014年10月). 2014年10月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年2月25日閲覧。
  25. ^ 『日本音声製作者名鑑2007』小学館、2007年3月25日、37頁。ISBN 978-4-09-526302-1 
  26. ^ a b 小川びい『こだわり声優事典'97』徳間書店〈ロマンアルバム〉、1997年3月10日、41頁。ISBN 4-19-720012-9 
  27. ^ 諏訪道彦 (2014年4月3日). “『アニ民223人目』声優の家弓家正(かゆみいえまさ)さん”. スワッチのアニメ日記. 讀賣テレビ放送. 2023年2月26日閲覧。
  28. ^ a b 入倉功一 (2014年10月8日). “声優・家弓家正さん死去『ナウシカ』クロトワ役など 享年80歳”. シネマトゥデイ. 2023年2月25日閲覧。
  29. ^ GUILTY GEAR XX Λ CORE PLUS』内 クリア後のインタビュー
  30. ^ 【声のお仕事】山路和弘さん#1「ジェイソン・ステイサムみたいな男って、どうしてモテるんだろうね」”. フムフムニュース (2022年9月28日). 2023年2月26日閲覧。
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  69. ^ "CAST(キャスト)". スマホ向けゲーム『金色のガッシュベル!!永遠の絆の仲間たち』(トキワズ)公式サイト. NEOWIZ. 2024年1月13日閲覧


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