体上の多元環 多元環の種類と例

体上の多元環

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/27 01:49 UTC 版)

多元環の種類と例

体上の多元環にはいくつか種類がある。以下に挙げる多元環の種類はある種の公理、例えば一般の多元環の定義には含まれていない乗法の可換性結合性など、を追加で要求することで特定される。これらの多元環についての理論は、それぞれの多元環の種類によって、大きく趣を異にするものとなる。

単位的多元環

多元環が単位的または単型 (unital, unitary) であるとは、それが単位元または単元を持つことを言う。すなわち、多元環の元 I が存在して、全ての元 x に対して Ix = x = xI を満たす。単位元を持たない多元環はある標準的な方法で構成される単位的な多元環に余次元1のイデアルとして含まれる[3]

零多元環

多元環が零多元環 (zero algebra) とは、任意の元 u, v に対して uv = 0 となることを言う[4]。ただ一つの元からなる多元環(自明な多元環)を零(多元)環と呼ぶこともある(それはいま言う意味での零環でもある)が、混同してはならない。零環は本質的に(自明環でなければ)単位的でなく、しかし結合的かつ可換である。

単型零環 (unital zero algebra) は、体(あるいはより一般の環)kk-線型空間(加群)V との直和をとり、V の二元の積が常に零ベクトルであるものと定めて得られる。即ち、λ, μk および u, vV ならば (λ + u)(μ + v) = λμ + (λv + μu) となる。e1, …, edV の基底であるとすれば、単型零環は多項式環 k[e1, …, en] の全ての対 (i, j) に対する eiej の全体が生成するイデアルによる剰余環である。

単型零環の一例として、二元数 RR とその上の一次元ベクトル空間から得られる単型 R-零環である。

これら単型零環は、多元環の任意の一般性質を線型空間加群の性質に読み替えることができる点でより一般に有効な概念である。例えば、ブルーノ・ブッフバーガー英語版が導入したグレブナ基底は、体上の多項式環 R = k[x1, …, xn] のイデアルに対する生成系の理論であるが、自由 R-加群上の単型零環の構成を考えることによって、自由加群の部分加群に対するグレブナ基底の理論を直接的な拡張として持ち込むことができる。この拡張は、部分加群のグレブナ基底の計算に関して、何らの修正を経ることなく、イデアルのグレブナ基底計算のアルゴリズムやソフトウェアをそのまま使うことを許す。

結合多元環

非結合多元環

K 上の非結合代数[5]あるいは分配多元環とは、K-線型空間 A とその上の K-双線型写像 A × AA の組を言う。ここで「非結合的」というのは、結合性を仮定しないという意味であって、結合的であることを排除しない。即ち、「非可換」が「必ずしも可換でない」の意味であるのと同様に、ここでの非結合的」は「必ずしも結合的でない」の意味である。

以下、個別の項目において詳述する:


  1. ^ Hazewinkel et al. 2004, pp. 2–3.
  2. ^ Schafer 1966, p. 1.
  3. ^ Schafer 1966, p. 11.
  4. ^ Schafer 1966, p. 2.
  5. ^ Schafer 1966.
  6. ^ Study, E. (1890), “Über Systeme complexer Zahlen und ihre Anwendungen in der Theorie der Transformationsgruppen”, Monatshefte für Mathematik und Physik 1 (1): 283–354, doi:10.1007/BF01692479, JFM 22.0387.02 





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