テンソル代数とは? わかりやすく解説

テンソル代数

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/26 18:02 UTC 版)

数学におけるベクトル空間 V 上のテンソル代数(テンソルだいすう、: tensor algebraT(V) または T • (V)V 上の任意階のテンソル全体がテンソル積を乗法として成す体上の多元環である。これは多元環をベクトル空間とみなす忘却函手英語版左随伴となるという意味において V 上の自由多元環、すなわち普遍性を満たすという意味で V を含む多元環として「最も一般」のものである。

テンソル代数はまた二種類の余代数構造を持つ。一つは簡素で双代数を定めないが、もう一つはより複雑なもので双代数を導き、さらに対蹠射を以ってホップ代数へ拡張することができる。

注意
本項において多元環(代数)は単位的かつ結合的なものと仮定する。

構成

V K 上のベクトル空間とする。任意の非負整数 k に対して Vk-次テンソル冪とは Vk-重テンソル積

テンソル代数の普遍性

可換となる。実は、この性質を満たす一意的な多元環としてテンソル代数 T(V) を定義することができる(厳密に言えば一意的な同型を除いて一意)が、それでもこの性質を満たす対象が存在することは示さなければならない。

上記の普遍性は、テンソル代数の構成が自然に「函手的」となることを示している。すなわち、TK 上のベクトル空間の圏 K-Vect から K-多元環の圏 K-Alg への函手である。T の函手性は任意の線型写像 VW は多元環の準同型 T(V) → T(W) へ一意的に延長されることを意味する。

非可換多項式

ベクトル空間 V が有限な次元 n を持つとき、テンソル代数の別の見方として「K 上の非可換な n-変数多項式の環」とみることができる。V基底ベクトルをとって、それを T(V) における非可換変数(あるいは非可換不定元)、すなわち結合性分配性および K-線型性の他は何の制約も持たない元と見る。

注意すべき点として、V 上の非可換多項式環として適切なのは T(V) よりはむしろ T(V*) の方であることが挙げられる。これは V 上の一次斉次函数は V* の元であること、またベクトル空間上の座標函数 x1, …, xn は(ベクトルをその座標成分となるスカラーへ写す函数とみれば)共変ベクトルであることによる。

商代数系

テンソル代数が最も一般の多元環であることを利用して、ほかの多くの多元環について、まずテンソル代数を構成してからそこに生成元に関する特定の関係式を導入して構成すること、つまり T(V) のある種の商多元環英語版構成に興味が持たれる。例えば、外積代数対称代数クリフォード代数普遍包絡代数など。

余代数構造

テンソル代数は二種類の余代数構造を持つ。一つは簡素で双代数を定めないが、もう一つはより複雑なもので双代数を導き、さらに対蹠射を以ってホップ代数へ拡張することができる。

単純な余代数構造

テンソル代数上の単純な余代数構造は以下のようなものである。余乗法 Δ

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テンソル代数

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/07 10:15 UTC 版)

多重線型代数」の記事における「テンソル代数」の解説

K –加群 E のテンソル代数 TE とは、可換とは限らない K –代数であって E からの線型写像 E → TE持ち次の条件を満たすもののことである:(可換とは限らない)K –代数 A への K –線型写像 E → A が与えられたとき、図式 E → A ↓ ↓ T E → A {\displaystyle {\begin{array}{ccc}E&\to &A\\\downarrow &&\downarrow \\\mathrm {T} E&\to &A\end{array}}} が可換になるような K –代数準同型 TE → A が存在して一意定まる。この条件によって対 (TE , E → TE ) は同型を除き一意定まる

※この「テンソル代数」の解説は、「多重線型代数」の解説の一部です。
「テンソル代数」を含む「多重線型代数」の記事については、「多重線型代数」の概要を参照ください。

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