動機付けとなる例
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/13 01:23 UTC 版)
最もよく知られたヒルベルト空間の例の一つは、三次元の空間ベクトル全体の成すユークリッド空間 R 3 {\displaystyle \mathbb {R} ^{3}} にドット積を考えたものであろう。二つのベクトル x , y {\displaystyle {\boldsymbol {x}},{\boldsymbol {y}}} のドット積 x ⋅ y {\displaystyle {\boldsymbol {x}}\cdot {\boldsymbol {y}}} は実数を与える。 x , y {\displaystyle {\boldsymbol {x}},{\boldsymbol {y}}} がデカルト座標系であらわされているときには、ドット積は ( x 1 , x 2 , x 3 ) ⋅ ( y 1 , y 2 , y 3 ) := x 1 y 1 + x 2 y 2 + x 3 y 3 {\displaystyle (x_{1},x_{2},x_{3})\cdot (y_{1},y_{2},y_{3}):=x_{1}y_{1}+x_{2}y_{2}+x_{3}y_{3}} として定まる。このドット積は、条件 対称性: x ⋅ y = y ⋅ x . {\displaystyle {\boldsymbol {x}}\cdot {\boldsymbol {y}}={\boldsymbol {y}}\cdot {\boldsymbol {x}}.} 第一引数に関する線型性: ( a x 1 + b x 2 ) ⋅ y = a x 1 ⋅ y + b x 2 ⋅ y ∀ a , b ∈ R , ∀ x 1 , x 2 ∈ R 3 . {\displaystyle (a{\boldsymbol {x}}_{1}+b{\boldsymbol {x}}_{2})\cdot {\boldsymbol {y}}=a{\boldsymbol {x}}_{1}\cdot {\boldsymbol {y}}+b{\boldsymbol {x}}_{2}\cdot {\boldsymbol {y}}\quad \forall \ a,b\in \mathbb {R} ,\ \forall \ {\boldsymbol {x}}_{1},{\boldsymbol {x}}_{2}\in \mathbb {R} ^{3}.} 正定値性: x ⋅ x ≥ 0 ∀ x ∈ R 3 ; x ⋅ x = 0 ⟺ x = 0 . {\displaystyle {\boldsymbol {x}}\cdot {\boldsymbol {x}}\geq 0\quad \forall \ {\boldsymbol {x}}\in \mathbb {R} ^{3};\quad {\boldsymbol {x}}\cdot {\boldsymbol {x}}=0\iff {\boldsymbol {x}}={\boldsymbol {0}}.} を満足する。 このドット積のように、上記三つの性質を満足するベクトルの二項演算を(実)内積と呼び、そのような内積を備えたベクトル空間は(実)内積空間と呼ばれる。任意の有限次元内積空間は、ヒルベルト空間でもある。ユークリッド幾何学に関わるドット積の基本的な特徴というのは、ベクトルの長さ(ノルム) ‖ x ‖ {\displaystyle \|{\boldsymbol {x}}\|} と二つのベクトル x , y {\displaystyle {\boldsymbol {x}},{\boldsymbol {y}}} の間の角度 θ {\displaystyle \theta } の両方が x ⋅ y = ‖ x ‖ ‖ y ‖ cos θ {\displaystyle {\boldsymbol {x}}\cdot {\boldsymbol {y}}=\|{\boldsymbol {x}}\|\,\|{\boldsymbol {y}}\|\,\cos \theta } なる式が成立するという意味でドット積と関連付けられることである。ユークリッド空間における多変数微分積分学は極限が計算できること、および極限の存在を結論付ける有用な判定法を持つことに支えられている。 R 3 {\displaystyle \mathbb {R} ^{3}} のベクトルを項とする級数 ∑ n = 0 ∞ x n {\displaystyle \textstyle \sum _{n=0}^{\infty }{\boldsymbol {x}}_{n}} は、そのノルムの和(これは実数を項とする通常の級数)が ∑ n = 0 ∞ ‖ x n ‖ < ∞ {\displaystyle \textstyle \sum _{n=0}^{\infty }\|{\boldsymbol {x}}_{n}\|<\infty } なる条件を満たすとき、絶対収束するという。スカラー項級数の場合と全く同じく、絶対収束するベクトル項級数は ‖ L − ∑ n = 0 N x n ‖ → 0 as N → ∞ {\displaystyle \|{\boldsymbol {L}}-\textstyle \sum _{n=0}^{N}{\boldsymbol {x}}_{n}\|\to 0\quad {\text{as }}N\to \infty } なる意味で、このユークリッド空間の適当な極限ベクトル L {\displaystyle {\boldsymbol {L}}} に収束する。このような性質(絶対収束級数は通常の意味でも収束する)は、ユークリッド空間の完備性 (completeness) として表される。
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動機付けとなる例
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/20 19:46 UTC 版)
詳細は「四元数」を参照 実数全体 R を一次元ベクトル空間と見ると、乗法と両立するから、自分自身の上の一次元多元環になる。先ほどは複素数の全体が実数体 R 上の二次元ベクトル空間で、さらに R 上の二次元多元環となることを見た。これらはともに、任意の非零ベクトルが逆元を持つ。同様にして三次元の実ベクトル空間で、任意の非零元が逆元を持つようなもの(多元体)はあるかと問うのは自然なことであるが、答えは否定的である(ノルム多元体を参照)。 実三次元の(多元体)は存在しないが、1843年にハミルトンにより定義された四元数の全体には乗法だけでなく除法も定義できる。これは今日では実四次元の多元体の例として有名である。任意の四元数を (a, b, c, d) = a + bi + cj + dk のように書くことができる。複素数の場合と異なり、四元数の全体は非可換多元環の例を与える(例えば ij = k だが ji = −k である)。(注:近年は体の定義として加法と乗法について可換であることを課すのが普通となり、四元数のような非可換の乗法を持つ環の場合には除法が定義できても「体(field)」であるとは云わずに「斜体(skew field)」と称して体には含めなくなってきている。) 四元数のほかにも、体上の多元環の簡単な例として超複素数系がいくつか得られる。
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動機付けとなる例
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2016/10/17 03:32 UTC 版)
「可換環上の微分法」の記事における「動機付けとなる例」の解説
その具体例として、 (実数体 R 上の)滑らかな多様体 M の位相的情報の全ては、(バナッハ–ストーンの定理(英語版)の通りに)M 上の滑らかな函数全体の成す R-多元環 A = C∞(M) の代数的性質に書きこまれている。 M 上のベクトル束には(ベクトル束をそれに付随する切断全体の成す加群へ写す函手 Γ を通じて)A 上の有限生成射影加群が対応する。 M 上のベクトル場は上記の多元環 A の微分(英語版)と自然に同一視される。 より一般に、ベクトル束 E → M から別のベクトル束 F → M への k-階線型微分作用素(英語版)は、付随する加群の間の R-線型写像 Δ: Γ(E) → Γ(F) で任意の k + 1 個の元 f0, …, fk に対して [ f k [ f k − 1 [ ⋯ [ f 0 , Δ ] ⋯ ] ] = 0 {\displaystyle [f_{k}[f_{k-1}[\cdots [f_{0},\Delta ]\cdots ]]=0} [ f , Δ ] ( s ) = Δ ( f ⋅ s ) − f ⋅ Δ ( s ) {\displaystyle [f,\Delta ](s)=\Delta (f\cdot s)-f\cdot \Delta (s)} として定義されるものである。 さて A-加群 P から別の A-加群 Q への k-階線型微分作用素全体の成す空間を Diffk(P,Q) と書けば、A-加群の圏(英語版) に値をとる二変数函手(英語版) Diffk が得られる。通常の微分積分学における他の自然な概念(例えば ジェット空間(英語版)、微分形式など)も函手 Diffk やそれに関連する函手を表現する対象(英語版)として得られる。 このような観点において見れば、微分積分学が実はこれらの函手およびその表現対称に関する理論であるものと理解することができる。
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