構造定数_(数学)とは? わかりやすく解説

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構造定数 (数学)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/19 14:43 UTC 版)

分配多元環構造定数(こうぞうていすう、: structure constant, structure coeficient)とは、与えられた自由加群に対して、それを分配多元環とするための積構造を決定する定数のことである。

定義

単位的な可換環 R 上の自由加群 A に対し、その基底を {ei}iI とするとき、基底の間に積を

(γijki, j, k は単なる添字)と定めると、A の一般の元での積を

(ri, rjR) と一意的に決定して A を分配多元環にすることができる(このような積の入れ方を、「基底の積を "線型に拡張" する」 という)。この定数 {γijk}i,j,kI のことを多元環 A の基底 {ei}iI に関する構造定数とよぶ。定義から、もし添字集合 I有限集合n 個の元からなるならば、構造定数は(添字の i, j, k がそれぞれ n 通りであるから)全部で n3 個定まる。

複素数体 C の基底 {1, i} について、1 = e0, i = e1 と置くことにすると、

e0e0 = 1 × e0 + 0 × e1,
e0e1 = 0 × e0 + 1 × e1,
e1e0 = 0 × e0 + 1 × e1,
e1e1 = -1 × e0 + 0 × e1

となるから、C の積を定めるこの基底に関する構造定数(8 個ある)は

γ000 = 1, γ001 = 0,
γ010 = 0, γ011 = 1,
γ100 = 0, γ101 = 1,
γ110 = −1, γ111 = 0

となる。

同様にして四元数体 H は基底 {1, i, j, k} に対して

  1 i j k
1 1 i j k
i i −1 k j
j j k −1 i
k k j i −1

で積が定義されている。したがっていま、1 = e0, i = e1, j = e2, k = e3 とおくと、この基底に関する H の構造定数(全部で 64 個)は

  e0 e1 e2 e3
e0 γ000 = 1, γ001 = 0, γ002 = 0, γ003 = 0 γ010 = 0, γ011 = 1, γ012 = 0, γ013 = 0 γ020 = 0, γ021 = 0, γ022 = 1, γ023 = 0 γ030 = 0, γ031 = 0, γ032 = 0, γ033 = 1
e1 γ100 = 0, γ101 = 1, γ102 = 0, γ103 = 0 γ110 = −1, γ111 = 0, γ112 = 0, γ113 = 0 γ120 = 0, γ121 = 0, γ122 = 0, γ123 = 1 γ130 = 0, γ131 = 0, γ132 = −1, γ133 = 0
e2 γ200 = 0, γ201 = 0, γ202 = 1, γ203 = 0 γ210 = 0, γ211 = 0, γ212 = 0, γ213 = −1 γ220 = −1, γ221 = 0, γ222 = 0, γ223 = 0 γ230 = 0, γ231 = 1, γ232 = 0, γ233 = 0
e3 γ300 = 0, γ301 = 0, γ302 = 0, γ303 = 1 γ310 = 0, γ311 = 0, γ312 = 1, γ313 = 0 γ320 = 0, γ321 = −1, γ322 = 0, γ323 = 0 γ330 = −1, γ331 = 0, γ332 = 0, γ333 = 0

となる。

あるいは、適当な群 G で添字付けられる基底 {eσ}σ∈G をもつ自由加群 A

(δ はクロネッカーのデルタ、すなわち σ と λ の積が μ に一致するとき 1 でそれ以外のときは 0)を構造定数として積を入れたものは G 上の群環になる。同様に 2-コサイクル f を与えて

と与えれば、G 上のねじれ群環あるいは接合積と呼ばれる結合多元環が得られる。

性質

構造定数 {γijk}i,j,kI

が任意の i, j, k, lI について満たすことと、これが決定する分配多元環の積は結合法則を満たすこととは同値である。また、上に挙げた例では全てこれが満たされている。とくにねじれ群環の場合に、この等式はコサイクル条件そのものになる。

関連項目

外部リンク


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