零多元環
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/20 19:46 UTC 版)
詳細は「零環」を参照 多元環が零多元環 (zero algebra) とは、任意の元 u, v に対して uv = 0 となることを言う。ただ一つの元からなる多元環(自明な多元環)を零(多元)環と呼ぶこともある(それはいま言う意味での零環でもある)が、混同してはならない。零環は本質的に(自明環でなければ)単位的でなく、しかし結合的かつ可換である。 単型零環 (unital zero algebra) は、体(あるいはより一般の環)k と k-線型空間(加群)V との直和をとり、V の二元の積が常に零ベクトルであるものと定めて得られる。即ち、λ, μ ∈ k および u, v ∈ V ならば (λ + u)(μ + v) = λμ + (λv + μu) となる。e1, …, ed が V の基底であるとすれば、単型零環は多項式環 k[e1, …, en] の全ての対 (i, j) に対する eiej の全体が生成するイデアルによる剰余環である。 単型零環の一例として、二元数 ∧R は R とその上の一次元ベクトル空間から得られる単型 R-零環である。 これら単型零環は、多元環の任意の一般性質を線型空間や加群の性質に読み替えることができる点でより一般に有効な概念である。例えば、ブルーノ・ブッフバーガー(英語版)が導入したグレブナ基底は、体上の多項式環 R = k[x1, …, xn] のイデアルに対する生成系の理論であるが、自由 R-加群上の単型零環の構成を考えることによって、自由加群の部分加群に対するグレブナ基底の理論を直接的な拡張として持ち込むことができる。この拡張は、部分加群のグレブナ基底の計算に関して、何らの修正を経ることなく、イデアルのグレブナ基底計算のアルゴリズムやソフトウェアをそのまま使うことを許す。
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