ツルレイシ 食材としての利用

ツルレイシ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/15 15:39 UTC 版)

食材としての利用

主に未成熟な果皮を食用とするが、独特な強い苦味があるので、好き嫌いが分かれる[24]。食材とする果実は、夏場(6月から9月)が旬の時期とされ、全体が濃い緑色で、重量感があり、イボは尖っていて張りがあるものが良品とされる[24][23]。切ったときの断面は、種わたが白く、緑色の果肉部分に厚みがあるものが食材として良い[24]。完熟した果実では、種わたが黄色っぽく変色をしている[24]。ゴーヤーの苦味成分にはモモルディシンという成分が含まれている。またゴーヤーのビタミンCは加熱しても壊れにくいという特徴がある。

栄養成分

にがうり 果実 生[39]
100 gあたりの栄養価
エネルギー 71 kJ (17 kcal)
3.9 g
デンプン 正確性注意 0.3 g
食物繊維 2.6 g
0.1 g
飽和脂肪酸 (0.01) g
一価不飽和 (0.02) g
多価不飽和 (0.04) g
1.0 g
ビタミン
ビタミンA相当量
(2%)
17 µg
(1%)
160 µg
チアミン (B1)
(4%)
0.05 mg
リボフラビン (B2)
(6%)
0.07 mg
ナイアシン (B3)
(2%)
0.3 mg
パントテン酸 (B5)
(7%)
0.37 mg
ビタミンB6
(5%)
0.06 mg
葉酸 (B9)
(18%)
72 µg
ビタミンC
(92%)
76 mg
ビタミンE
(5%)
0.8 mg
ビタミンK
(39%)
41 µg
ミネラル
ナトリウム
(0%)
1 mg
カリウム
(6%)
260 mg
カルシウム
(1%)
14 mg
マグネシウム
(4%)
14 mg
リン
(4%)
31 mg
鉄分
(3%)
0.4 mg
亜鉛
(2%)
0.2 mg
(3%)
0.05 mg
他の成分
水分 94.4 g
水溶性食物繊維 0.5 g
不溶性食物繊維 2.1 g
ビオチン(B7 0.5 µg

ビタミンEはα─トコフェロールのみを示した[40]。別名:つるれいし、ゴーヤ。廃棄部位: 両端、わた及び種子。
%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標 (RDIの割合。

ニガウリ(ゴーヤー)は淡色野菜に分類されるが、ビタミン類やミネラルをバランス良く含み緑黄色野菜に匹敵する量のビタミンCを含有する[41]。特にビタミンCなどの水溶性ビタミンを多く含むことや、苦味成分(モモルデシンチャランチン英語版コロソリン酸英語版ククルビタシン)を含むことが知られている[42]

ゴーヤー1本あたりのビタミンC含有量は、キュウリトマト1個の約5倍、レモン1個の約2倍含まれており、また通常ビタミンCは加熱に弱いが、野菜の中でも加熱に強いという特徴を持つ[24][41][43]β-カロテンビタミンEカリウム食物繊維なども豊富で、糖質をエネルギーに変えるビタミンB1も含まれている[24]。ニガウリ種子と外皮に有害なレクチンが含まれる[44]

調理

主に苦みのある未成熟果を食する。中の種とわたをスプーンなどで取り除いて、果皮部を使う[23]。切り方として半月切り、輪切り、拍子木切り、さいの目切りにして料理に使われる[23]

苦味を抑えた調理

苦味成分は果皮表面の緑色の部分に集中している。ワタの部分が苦いという俗説があるが、誤りである[45]。インドには皮やイボを取り除き、ワタはそのまま使う料理もある[46][47]

苦味を抑えたい場合は、

  • 苦味の少ない品種を選ぶ。
  • 表面の緑色のイボや表層を削り落とす、皮を剥く[45]
  • 2ミリメートルから3ミリメートル幅くらいの薄切りにして熱湯でさっと下茹でする[23]
  • 薄切りを少量の塩を振って揉んでしばらく置き[23]、水分を出した後に軽く洗う。もしくは塩水に漬け一晩置く。
  • 米のとぎ汁で茹でこぼす。
  • 鰹節はゴーヤーの苦みを低減する作用があるので、鰹節をまぶす[48]。沖縄料理のゴーヤーチャンプルーには、ゴーヤーの苦味を抑える肉や鰹節などの合わせ食材がよく使われている[30]
  • 旨味成分であるイノシン酸を多く含む魚や肉と一緒に調理することによって、苦味を和らげてゴーヤー自身が持つ旨味を引き出すことができる[24][23]
  • 油を使って高温で調理する[24][23]

などの方法がある。

日本

代表的なゴーヤーチャンプルーの例

ゴーヤーチャンプルーをはじめとする沖縄料理の食材として広く知られ、現在では日本の日常食材として定着し[41]、炒め物、揚げ物、和え物などの料理への応用も進んでいる。

薩摩料理奄美料理をはじめとする南九州の郷土料理でも好まれる食材であり、九州ではおひたし和え物でよく食べられる。鶏肉キャベツと炒めたり、揚げ天ぷらやチップスにもする。奄美群島では蘇鉄味噌(なりみす)や粒味噌を使った炒め物や和え物もよく食べられる。大分県熊本県には、ナスとニガウリを炒め、水溶き小麦粉でとろみをつけたこねりという料理が伝わっている。この料理は大分県国東地方では「オランダ」とも呼ばれる[49]。また、鹿児島県等では味噌炒めにもされる[20]ピーマンやナス等の野菜と組み合わされることが多い。

種や綿ごと実を薄切りにし、乾燥させてから焙じた後に細かく砕いたものは、ゴーヤー茶として沖縄県で販売されている。味はほうじ茶に似て苦味は無い。

よく洗って種と綿を除いてミキサーにかけ、風味を整えるために蜂蜜などを加えて青汁のように飲む場合もある。干した物を切干大根のように戻して煮物に使うこともできる。

日本以外

台湾高雄市で白い苦瓜の揚げ物を作っている様子
ホーチミン市の苦瓜スープの例

中国においては凉瓜とも呼ばれ、料理によく用いられる。広東料理では炒め物以外に、豆豉などの風味をつけた蒸し物、スープの具などにもされる。台湾料理でも「鳳梨苦瓜鶏(: 鳳梨苦瓜雞: 凤梨苦瓜鸡台湾語:オンライコークェケー)」のようにパイナップル、鶏肉と煮込んだスープがある。広東省香港台湾などには苦味の少ない白い苦瓜もあり、スープや煮物にはこちらが選ばれることが多い。台湾では梅干の漬け汁を利用して漬物にすることもある。白い苦瓜のジュースは台湾や香港の屋台でも提供されている。

ベトナム料理でも「Mướp đắng(ムオッダン)」などと称して炒め物、スープなどにされるが、特に南部では正月料理の一品として使われることが多い。タイ料理でもスープにされる場合がある。

インド料理スリランカ料理マレー料理ではスパイスで風味をつけて水分が飛ぶまで揚げたものや、鶏卵と一緒に炒めたものがカレーの副菜として現地で売られている。

カリブ海一帯ではツルレイシのつるや葉がハーブの一種として民間治療に使われる[50]

保存

採れたての果実を早めに使い切るのが基本であるが、丸1本保存するときはポリ袋に入れて乾燥を防ぎ、冷蔵庫で保存する[30][23]。また調理で切って残したものは、わたを切り抜いて水気を除いた果皮をラップに包み、ポリ袋に入れて冷蔵庫に保存する[30][23]。また茹でて保存するときは、種わたを取って細切りしたものを塩でまぶし、煮たった湯で軽く湯通ししてからざるに上げて冷水に取り、水気を切ってから保存袋に入れて冷蔵保存すれば、2日から3日ほど持つ[30]


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  5. ^ 種苗法における「農林水産植物の種類」や参考文献に挙げた園芸図鑑など。
  6. ^ BGPlants YList や参考文献に挙げた植物図鑑・目録など[リンク切れ]
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  10. ^ 宮古方言音声データベース 琉球大学附属図書館沖縄言語研究センター
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  30. ^ a b c d e f g h i j 主婦の友社編 2011, p. 33.
  31. ^ a b c d e f g h 主婦の友社編 2011, p. 36.
  32. ^ a b c d e f g h i j k 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 242.
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