2人に死刑・1人に無期懲役宣告
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/03 00:14 UTC 版)
「闇サイト殺人事件」の記事における「2人に死刑・1人に無期懲役宣告」の解説
2009年3月18日に第一審の判決公判が開かれ、名古屋地裁刑事第6部(近藤宏子裁判長)は被告人3人のうち、KTおよび堀の2人を死刑に、残る「山下」を無期懲役に処す判決を言い渡した。日本弁護士連合会(日弁連)が把握していた確定判決の統計によれば、1983年に最高裁で「永山基準」が示されて以降、殺害された被害者が1人の殺人事件で死刑が確定した事例は、当時計25件あったが、うち複数の被告人に死刑判決が言い渡され確定した事例は、北九州市病院長殺害事件(1988年に最高裁で被告人2人の死刑が確定)のみだった。 名古屋地裁 (2009) は、犯罪事実について「3人は互いに強盗などの様々な犯罪を計画した末、事前に預貯金の貯えがありそうな女性通行人を拉致・監禁した上でキャッシュカードを奪い、暗証番号を聞き出した上で最終的に殺害することを計画した上で犯行におよんだ」と認定。その上で、各事実について以下のように認定した。 名古屋地裁 (2009) の判示争点判示事項殺害の共謀が成立した時期3人が謀議を終え、ファミリーレストランを退店した8月24日の19時ごろをもって、殺害および死体遺棄の共謀が成立したと認められる。 計画性被害者を拉致した後の殺害方法などは、具体的・詳細には計画されてはいなかったが、方法は成り行きに任せざるを得ない部分があった。実際に、事前に詳細な定めがなくても十分遂行可能な客観的状況もあった上、「通行中の女性を物色して襲い、最終的には殺害する」という点は当初の計画通りに実行されており、計画的な犯行というには十分である。より綿密な計画が立てられていた事案より有利に斟酌すべき事情は認められない。殺害行為が残虐性を増したのは、意図的に残虐な方法が取られたというより、むしろ殺害に手間取った結果である。当初から敢えて意図的に残虐な方法を取った場合と比較すると、悪質性の程度に多少の差はあるが、3人はそれぞれ残虐な方法であることを十分に承知しながら実行行為におよんだため、この点については特に酌むべき事情はない。 犯罪の性質・態様一連の犯行は、手っ取り早く楽をして金を手に入れたいという強い利欲目的のみに基づき、全く関係のない、通りがかりの一般市民を殺害するという犯罪を、インターネット上の掲示板を通じて形成された犯罪集団が、短期間で計画・遂行したという点に特色がある。この種の犯罪は凶悪化・巧妙化しやすく危険であり、匿名性の高い集団によって行われるため、発覚・逮捕も困難で、模倣される恐れも高いという極めて悪質性の高い種類の犯行である。このような犯罪は社会の安全にとって重大な脅威というほかなく、厳罰をもって臨む必要性が誠に高い。3人とも、被害者Aの必死の命乞いにも耳を貸さず、無慈悲・凄惨かつ残虐な方法で殺害を遂げており、戦慄を禁じ得ない。Aの遺族が極刑を望んでいることも当然だ。 3被告人の主従関係KTが最も積極的だったが、堀や「山下」もKTが有する知識・経験を頼りにし、互いに互いを利用し合って集団で犯罪を行うことで、自らの利欲目的を満たそうとする側面が強かったと認められる。そのような犯行の経緯・状況を考えれば、3被告人の間に量刑上、特に刑種の選択を分かつほどの差異を設けるべき事情は認められない。 3被告人の役割情状量刑およびその理由KT殺害行為にて果たした役割は、計画段階において他の2人(堀・「山下」)より大きく、実行行為の際にも最も積極的におよんでいる。 事件後、自身なりに犯行を顧みる姿勢も見せているが、自首した「山下」に対し、脅迫めいた内容の手紙 を送ったり、知り合いを介して被害者Aを中傷したとも受け取れる表現を用いた文章を掲載・公開するなど、真摯な反省な態度を見せているとは到底言い難い。 2人とも死刑を選択。結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯行後の情状などを考慮すれば、殺害された被害者が1人であることや、2人とも粗暴犯による前科がないこと、2人にとって有利に斟酌すべき諸事情などを考慮しても、2人に対し極刑をもって臨むことはやむを得ない。 堀当初から様々な犯行計画を積極的に提案し、特に「人を拉致して強盗をする」という計画を当初から提案していた。被害者Aを最も執拗に脅迫し、殺害の実行行為でもKTに次いで積極的に行っている。 事件後、自身なりに反省・謝罪の意思を持ち、言葉や反省文・謝罪文などに表しているが、Aを殺害した点については、恐怖心からKTや「山下」を止められなかったという気持ちの方が強く、真摯な反省の態度を示しているとまで見ることはできない。 「山下」殺害行為自体についての関与の程度は、結果的に他の2人より低かったが、これはおそらく、運転席に座っていたという座席の位置関係の影響とも考えられ、殺害行為に消極的だったということは到底できない。3人が集まる原因となった投稿をしたほか、(未遂ながら)被害者Aへの性的暴行にもおよんでおり、Aに与えた精神的・肉体的苦痛は極めて大きい。 公判でAに対する気持ちや謝罪の気持ちを聞かれても、無責任で心無い言葉を述べたり、審理中にKTと視線を飛ばし合ったり、自身の被告人質問中に怒鳴り立てるなど、粗暴で無思慮な行動を取っている。このような行動からすると、最終陳述で自身なりに真剣な姿勢で反省の言葉を述べるに至ったことを考慮しても、なお、各犯行について十分な反省をしているとは言い難い。 無期懲役を選択。犯行後、短時間で自首したことにより、捜査機関は初めて犯行を把握し、他2人の逮捕・事件解決に至ったことは明らかである。(インターネットを通じて集まった集団による)本事件の特殊性を鑑みれば、「山下」が犯行後に短期間で自首して事件解決に貢献し、その後に起こり得た犯罪を阻止した点は量刑上、特に有利な事情として評価することができる。「山下」の刑事責任は極めて重大だが、この点を鑑みれば、極刑をもって臨むことは躊躇せざるを得ず、無期懲役に処すことが相当である。 KTの弁護人は即日控訴した ほか、堀・「山下」それぞれの弁護人、KT本人も同年3月24日付で名古屋高等裁判所へ控訴した。一方、名古屋地検も「山下」を無期懲役とした第一審判決を不服として、同月27日付で控訴した。本判決は全国紙が一面トップで取り上げるなど、高い注目を集めたが、司法の専門家や刑法学者からは「異例の厳しい判断」との見方が少なくなかった一方、新聞各紙の社説は判決を概ね支持する内容だった。
※この「2人に死刑・1人に無期懲役宣告」の解説は、「闇サイト殺人事件」の解説の一部です。
「2人に死刑・1人に無期懲役宣告」を含む「闇サイト殺人事件」の記事については、「闇サイト殺人事件」の概要を参照ください。
- 2人に死刑1人に無期懲役宣告のページへのリンク