鬼畜・悪趣味ブーム
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「青山正明」および「村崎百郎」も参照 1990年代中頃になると鬼畜系サブカルチャーが鬼畜ブーム・悪趣味ブームとして爛熟を迎え、不道徳な文脈で裏社会やタブーを娯楽感覚で覗き見ようとする露悪的なサブカル・アングラ文化が「鬼畜系」または「悪趣味系」と称されるようになった。 青土社発行の芸術総合誌『ユリイカ』1995年4月臨時増刊号「総特集=悪趣味大全」では文学や映画、アートにファッションなどあらゆるカルチャーにキッチュで俗悪な「悪趣味」という文化潮流が存在することが提示され、これを境に露悪趣味(バッド・テイスト)を全面に押し出した雑誌やムックが相次いで創刊され一大ブームとなる。また同年6月には海外タブロイド誌『Wilkly World News』をモチーフとした世紀末B級ニュースマガジン『GON!』(1994年4月創刊)がコンビニ向けに月刊化された。 このブームを代表する1995年7月創刊の鬼畜系ムック『危ない1号』(東京公司/データハウス)では史上初のカルトグル、ハッサン・イ・サバーの「真実などない。すべては許されている」という言葉を引用して「妄想にタブーなし」を謳い文句に「鬼畜系」を標榜し、ドラッグ・強姦・死体・ロリコン・スカトロ・電波系・障害者・痴呆・変態・畸形・獣姦・殺人・風俗・読書・盗聴・テクノ・カニバリズム・フリークス・身体改造・動物虐待・ゲテモノ・アングラサイト・カルト映画・カルト漫画・ゴミ漁り・アナルセックス・新左翼の内ゲバ・V&Rプランニング・青山正明全仕事まで、ありとあらゆる悪趣味を徹頭徹尾にわたり特集した。鬼畜・変態・悪趣味が詰め込まれた同誌はシリーズ累計で25万部を超える大ヒットとなり、初代編集長の青山正明は鬼畜ブームの立役者とみなされた。 ロマン優光は『危ない1号』とそれ以前の悪趣味の違いについて次のように述べている。 『危ない1号』第2巻が刊行される一年前である95年にユリイカ臨時増刊『総特集・悪趣味大全』(青土社)が刊行されており、現在よりはるかに硬めでハイカルチャー寄りの性質だった『ユリイカ』が特集を組んでしまうくらい、悪趣味系自体が当時のサブカルチャーの中の一つの大きなムーブメントであったわけですが、そこの中での差別化を図るために使われたフレーズが鬼畜だったということだと思います。『危ない1号』第2巻のテイストは非常に露悪的なものであり、その意図された露悪的でゲスい視点にオリジナリティがあったことで、それ以前の悪趣味文化との差別化に成功していました。 — ロマン優光『90年代サブカルの呪い』コアマガジン、2019年、11-13頁。 結果として『危ない1号』は鬼畜本ブームの先駆けとなり、次に掲げるような後発誌も続々と現れた。 『BURST』 - 1995年9月創刊。死体写真・タトゥー・スカトロ・違法薬物・身体改造などの先鋭的なカルチャーやバッドテイストを扱った、平成時代を代表するカウンターカルチャー誌である。派生誌に『TATTOO BURST』『BURST HIGH』『BURST Generation』がある。コアマガジン発行。 『週刊マーダー・ケースブック』 - 全世界の特異な殺人事件を扱う海外の週刊誌。日本語版は1995年10月創刊。監修は精神科医の作田明。1997年8月の終刊まで全96号を刊行した。省心書房→デアゴスティーニ・ジャパン発行。 『世紀末倶楽部』 - 1996年6月創刊。土屋静光編集。テーマは死体、フリークス、殺人鬼、見世物、解剖、レイプ、暴力、病気、事故、戦争、宗教儀式、法医学、胎児などで当時の悪趣味ブームの集大成的内容となっている。創刊号は1冊すべて「チャールズ・マンソンとシャロン・テート殺人事件」特集。コアマガジン発行。 『BUBKA』 - 1997年1月創刊。コアマガジン→白夜書房発行。創刊当初は先行誌『GON!』(ミリオン出版)の典型的な亜流誌だったが、のちに鬼畜系からアイドル雑誌に転向した(鬼畜系路線は兄弟誌『裏BUBKA』『実話BUBKAタブー』を経て『実話BUNKAタブー』に継承された)。 『BAD TASTE』 - マイノリティを主眼に置いた悪趣味雑誌。フロム出版/東京三世社発行。 別冊宝島シリーズ別冊宝島228『死体の本―善悪の彼岸を超える世紀末死人学!』 別冊宝島250『トンデモ悪趣味の本―モラルそっちのけの,BADテイスト大研究!』 別冊宝島281『隣のサイコさん―電波系からアングラ精神病院まで!』 別冊宝島356『実録!サイコさんからの手紙―ストーカーから電波ビラ、謀略史観まで!』 このように鬼畜/悪趣味を前面に押し出した雑誌・週刊誌・月刊誌・隔月刊誌・ムック・単行本が相次いで出版されるようになり、ますますブームの過熱を煽っていった。 詳細は「#関連雑誌」を参照
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