陸上特攻とは? わかりやすく解説

陸上特攻

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/14 08:16 UTC 版)

特別攻撃隊」の記事における「陸上特攻」の解説

末期日本陸軍では戦車対戦車地雷取り付けて戦車体当たりする戦法や、歩兵爆弾抱えて戦車体当たりする戦法が行われることが多数あった。 戦車による対戦車特攻 日本軍戦車による対戦車特攻実例としては、ルソン島の戦い末期1945年4月第14方面軍軍司令部置かれていたバギオ連合軍迫ってきた際に、司令官山下奉文大将が、司令部直轄戦車隊であった戦車第10連隊第5中隊残存戦車3輌にアメリカ陸軍戦車部隊侵攻阻止命じたことから、中隊長桜井隆夫中尉が、アメリカ軍主力戦車であるM4中戦車日本軍戦車戦力差を考慮し体当りM4中戦車撃退するため戦車特攻隊編成したことがあげられる桜井は、丹羽治一准尉以下11名に、九五式軽戦車九七式中戦車各1両での戦車特攻隊編成命じたが、その2輌の戦車には前方先端に20kgの爆薬装着した長さ1mの突出し棒を取付けてあるという異様な姿であったまた、2輌の戦車内に搭乗しきらなかった4名の戦車兵は、1輌に2名ずつタンクデサントすることとなったが、その車外戦車兵各々爆雷入れた雑嚢抱え手榴弾数発を腰から下げて肉弾体当たり攻撃するつもりであった丹羽ら2輌に分乗し戦車特攻隊は、軍司令官山下見送り受けた後、バギオ近郊のイリサンまで進出すると、戦車擬装し、アメリカ軍戦車隊待ち受けた17日午前9時、イリサン橋西200m曲がり角差し掛かったアメリカ陸軍M4中戦車に対して擬装していた丹羽戦車隊奇襲。不意の出現慌てたアメリカ陸軍先頭戦車操縦誤り50mの崖下転落。さらに丹羽戦車隊の2両が後続車体当り攻撃仕掛けるため突進M4中戦車砲撃丹羽搭乗する九五式軽戦車砲塔命中し砲塔吹き飛ばされたが、それに構わず2輌の日本軍戦車そのままM4戦車体当たりしたタンクデサントをしていた戦車兵らも、戦車体当たり直前戦車から飛び降り戦車突入する同時にM4中戦車体当たり攻撃をした。生き残った日本軍戦車兵は、M4中戦車から脱出しようとするアメリカ軍戦車兵手榴弾投擲したり、軍刀抜刀して斬り込みした。 双方戦車4両が爆発炎上して、その残骸アメリカ軍戦車隊侵攻路を妨害することとなったが、イリサン近辺道路狭隘であったために、戦車残骸除去難航アメリカ陸軍は約1週間足止めを受け、その間バギオ司令部は、大量傷病兵軍需物資と共に整然と撤退することができた。日本公刊戦史ではこれを「戦車頭突き」と称している。 歩兵による対戦車特攻 日本軍歩兵連合軍大量に投入してきた戦車に対して相応の距離で阻止できる速射砲野砲といった火砲歩兵携帯対戦車装備他国ではアメリカバズーカドイツパンツァーファウストイギリスPIATとして大戦中に使用)を十分に保有していなかったため、戦車との近接戦闘工夫せざるを得なくなったさまざまな形式対戦車挺身肉弾攻撃が行われているが、制式装備による近接攻撃としては、九九式破甲爆雷戦車装甲板吸着し爆発させる攻撃があった。日本軍歩兵九九式破甲爆雷持って戦車肉薄し車体磁力吸着させると、安全ピン引き抜いて約5秒後に爆発する仕組みとなっていた。手榴弾のように投擲して使用することもあった。装甲板吸着できた場合、1個の爆雷で約20mm、2個の爆雷吸着しても30mmの貫通力と、決し破壊力があるとは言えなかったが、軽戦車には十分な威力であり、ビルマ戦場では判明しているだけで1か月間で6輌のM3A3戦車撃破され、アメリカ陸軍情報部報告書では「最近ビルマ戦闘経験照らして、この報告九九式破甲爆雷による損害)は、明らかに連合軍戦車対す日本軍主要な脅威1つになるだろう。」と分析していた。また破甲爆雷は、沖縄飛行場突入した義烈空挺隊使用しており、航空機撃破威力発揮している。 1944年末、沖縄を含む南西諸島連合軍侵攻懸念が高まると、陸軍参謀本部後宮次長が、第32軍八原高級参謀らの各軍参謀に「わが対戦車砲は数が少なく、しかも熾烈な敵の砲撃により直ち破壊されてしまう。貧乏人金持ちと同じ戦法戦えば、負けるに決まっている。そこで日本軍には「新案特許」の対戦車戦法発案された。それは10kgの火薬入れた急造爆薬抱えて、敵戦車体当たりし爆破するのだ。実験の結果によると、この10kg爆薬をもってすれば、いかなる型の敵戦車でも撃破可能である。」との特攻戦術披歴した。第32軍は後宮戦術参考に、段ボール大の木箱爆薬詰め込んだ急造爆雷多数準備した。やがて沖縄連合軍上陸してくると、日本兵はこの急造爆雷アメリカ軍戦車キャタピラ向けて投げつけるか、もしくは爆雷もったま体当たり攻撃をかけた。この特攻戦術効果があり、激戦となった嘉数の戦いでは、この歩兵による体当たり攻撃1日に6輌のM4中戦車撃破され、アメリカ陸軍公式報告書でも「特に爆薬箱を持った日本軍兵士は、(アメリカ軍戦車にとって大脅威だった。」と警戒していた。 アメリカ軍戦車兵は、急造爆雷九九式破甲爆雷対戦車特攻行ってくる日本兵警戒し戦車攻撃しようとする日本兵を見つけると、優先して車載機銃射撃したが、日本兵抱えている爆雷銃弾命中する爆発し周囲日本兵ごと吹き飛ばしてしまうこともあった。また、戦車内に多数の手榴弾持ちこみ、対戦車特攻日本兵潜んでいそうな塹壕を見つけると、戦車ハッチ開けて塹壕手榴弾投げ込み特攻するため潜んでいた日本兵掃討している。 しかし、アメリカ軍戦車にとっての一番の脅威対戦車特攻ではなく一式機動四十七粍砲や九〇式野砲といった対戦車砲九三式戦車地雷であったという。対戦車特攻で主に使用され急造爆雷は、爆風が外に広がり戦車大きな損傷与えないケース多かった。他にも、刺突爆雷といって円錐状の成形炸薬弾頭を棒の先に取り付け、敵の戦車文字通り刺突爆発させるという兵器開発して実際に運用していたが効果不明である。 対戦車特攻含めた連携により、沖縄戦で第32軍はM4中戦車だけで、272輌(陸軍221海兵隊51輌)を撃破している。

※この「陸上特攻」の解説は、「特別攻撃隊」の解説の一部です。
「陸上特攻」を含む「特別攻撃隊」の記事については、「特別攻撃隊」の概要を参照ください。

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