陸上生活への適応
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/25 03:54 UTC 版)
イクチオステガやアカントステガのような初期の四肢動物は、エウステノプテロンやパンデリクティスのような肉鰭綱の魚よりも陸上生活に適応していた。肉鰭綱の一部である総鰭類は肺を備えていたにもかかわらず主に鰓を使って酸素を取り込んでいたが、イクチオステガは肺に頼っていたと思われる。その皮膚は総鰭類には似ておらず、体液を保ち乾燥を防ぐ助けになった。総鰭類は鰭でバランスを取りながら体と尾を使って移動していたが、イクチオステガは四肢を使って移動し、尾でバランスを取っていた。 成長すると1.5メートルに達する体は陸上で移動するには大きな妨げとなるが、幼い頃はずっと簡単に動くことができた。がっしりとした胸郭は重なり合った肋骨から構成されており、頑丈な骨格と強固な背骨を持ち、体を水の上に引き上げることのできる前肢を持っていたと考えられる。これら解剖学上の変化は明らかに浮力に乏しい陸上での生活に適応するためのものである。後肢は前肢よりも小さく、大人の全体重を支えきれそうにない。ジェニファー・クラック(英語版)は、イクチオステガとその近縁種は現代のガラパゴス諸島に生息するウミイグアナやインドのガビアルのように日光浴によって体を暖めることに時間を費やし、体を冷やしたり食事や繁殖を行なう時は水中に戻っていたのではないかと唱えた。この説では少なくとも頭部を水の外に出すための強い前肢を持ち、頑丈な胸郭と背骨は現代のクロコダイルに見られるような腹部の日光浴をするための助けとなった。幼い頃の優れた運動性は水中の捕食者から陸上に逃れるための助けとなっただろう。 初期の四肢動物のゲル状の卵は水の外では生きられないため、依然として水は必要だった。幼生や体外受精にとって水は必須であり、水なくしては生殖そのものが起こり得ないため、陸生の脊椎動物は体内受精を発達させてきた。有羊膜類や両生類の一部は生殖器を介して体内で直接受精し、イモリやサンショウウオなどが属する有尾目では、オスが地面に置いた 精包 (精子嚢)をメスが拾い上げる方法で体内受精を行なうものもいる。 エルギネルペトン、アカントステガ、イクチオステガなどが属するイクチオステガ目は、陸上を歩くことに適した両生類である分椎目(エリオプスなど)や炭竜目へと受け継がれた。イクチオステガ目と分椎目・炭竜目の間にはローマーの空白と呼ばれる2000万年のギャップがあることが知られていたが、3億5000万年前の石炭紀前期に生息していたペデルペスによってこのギャップが埋められることが2002年に示された。ペデルペスはこれまで知られる限り陸上で移動する最古の四肢動物である。
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