長野 - 金沢間延伸開業時の呼称の見直し
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「長野新幹線」の記事における「長野 - 金沢間延伸開業時の呼称の見直し」の解説
2004年12月の政府・与党申合せで、未開業の長野以北の区間のうち、長野 - 金沢間を2014年度末にフル規格で一体的に開業する方針が固まり、開業に向けた同区間の工事が進むと、2008年ごろから長野県内では経済界を中心に、長野以北の延伸開業時に「長野新幹線の呼称が廃止されかねない」と危惧する声が上がるようになり、長野県や県内沿線自治体によって呼称の影響に関する調査が行われた。 2009年2月には長野商工会議所が、金沢延伸開業後の通称を「長野北陸新幹線」とするよう関係機関に働きかける活動を始め、同年3月には長野県商工会議所連合会など8団体が、JR東日本長野支社に対して、金沢延伸開業後の呼称を「長野北陸新幹線」とするように要望した。これらの長野県内の経済団体の動きについて村井仁長野県知事は一定の理解を示し、「長野県の気持ちというのをご理解いただけるよう一所懸命努力したい」と述べ、「長野」の呼称存続に意欲を示した。 2010年になると鷲沢正一長野市長も「金沢延伸開業後も『長野』という名称を残したい」との意向を示す一方、村井仁の後任で同年9月に長野県知事に就任した阿部守一は、「長野新幹線という名称については北陸関係県等での受けとめは厳しいものがある」との認識を示し、「長野」呼称存続について、いったん慎重な姿勢を見せた。 2011年5月には長野県内の北陸新幹線沿線自治体(31市町村)で構成する連絡協議会が、同年度の総会において「長野」呼称の存続を求める決議を行い、従来より呼称存続の活動を行ってきた長野県内の経済団体に加え、県内の自治体からも存続を求める動きが本格化した。さらに同年9月には、長野市内の市民有志の間で「長野」呼称存続に向けた署名活動が始まるなど、市民レベルの動きも活発化した。 これらの動きに対し、2011年10月、JR東日本の清野智社長は「地元意見を参考にして、JR東日本が主導して最終的な呼称は決定する」との意向を示した。他方、同月に富山県内で開催された北信越市長会の総会において、長野県市長会は「長野」の呼称存続を国などに求める提案を行ったが、北陸各県の自治体の理解を得られず提案は不採択となり、長野県内の自治体と北陸各県の自治体との温度差・認識の違いが浮き彫りとなった。 2012年には長野県内の自治体関係者から、「長野」の呼称存続に慎重姿勢の阿部長野県知事に対して、呼称存続をJRなどに働きかけることを求める声が相次いだ。また同年6月には、長野市議会関係者が新潟県の上越市議会議長らに対し、金沢延伸開業後の呼称が「北陸長野新幹線」となるよう協力を求めるといった動きも見られた。 その後、金沢延伸開業時期が2015年3月と具体化し、開業まで2年余りとなった2013年2月、阿部長野県知事は「1997年の長野開業から15年が経過し、長野新幹線の呼称が全国的に定着しており、また、長野を経由することが利用者にとってわかりやすいものであることが重要で、これにより路線全体の利用拡大にも貢献し、沿線全体のメリットにもなる」として、ついに「長野」の呼称存続を求めることを表明した。しかし、富山県の石井隆一知事は「法令では『北陸新幹線』と明確に書いてある。そう簡単に変える性格のものではない。北陸三県の関係者や多くの方が四十数年間、沿線みんなで努力してきたので、それが基本だと思っている」と述べ、石川県の谷本正憲知事も「金沢が当面は終着駅になるわけだから、堂々と『北陸新幹線』と名乗らないとかえって乗客に誤解を与える」として、北陸地方の県知事からは否定的な反応が示された。また北陸地方の経済界からも「(長野は)今まで既得権を何年か使ってきた。私たちとしては問答無用の気持ち。北陸新幹線で当然」(深山彬金沢商工会議所会頭)と、長野県側の要望を受け入れるつもりはないという発言が相次いだ。 この長野県側と北陸各県側の意見の相違に対し、JR東日本の冨田哲郎社長は2013年3月の定例記者会見で、「正式名称は北陸新幹線」との認識を示しつつ、「愛称的に『長野新幹線』が使用されてきたことに基づく長野県の要望と、富山県、石川県による『北陸を前面に打ち出してほしい』という意見に対して、利用者の分かりやすさという視点を重視しつつ、折り合いを探る」と述べ、同年6月の記者会見でも「利用者に分かりやすいことと、地元の方々に納得していただくことが条件である」との意向を示した。 その後、同年7月中旬、阿部長野県知事は「(金沢延伸開業後も東京駅や時刻表などに)長野を経由する路線であることを示して、利用者に分かりやすくしてもらうようJR東日本に要請する」と改めて表明すると、同月末、長野県内の沿線自治体関係者や経済団体の代表らと東京都内のJR東日本本社を訪問し、冨田哲郎社長に対して「長野」の呼称を残すことを要請した。これに対しJR東日本側からは、「『北陸長野新幹線』は難しいが、何らかの形で『長野』の呼称が残る」旨の発言がなされた。 そして同年10月2日、JR東日本は金沢延伸開業後の路線案内を以下のとおり行うと発表した。 現行の「長野新幹線」は使用せず、原則「北陸新幹線」で統一する。 利用者の混乱防止の観点から、首都圏駅(東京駅、上野駅、大宮駅)の案内板や時刻表を中心に「北陸新幹線(長野経由)」と表記する。 金沢行きの列車の場合、放送において「長野経由」と案内する。 また同日、延伸開業区間のうち上越妙高駅から西側を管轄するJR西日本も北陸新幹線の運行体系などを発表したが、路線表記については「現時点でJR西日本管内で『長野経由』を表記する必要性はない」として、JR東日本と同様の対応は行わない旨を表明した。 数年にわたり「長野」表記の存続を求めてきた長野県内の関係者は、このJR東日本の発表を概ね好意的に受け止め、阿部長野県知事は「思いを真摯に受け止め対応していただいた。JR東日本の判断に感謝申し上げたい。外国人観光客などにも長野を経由することが分かりやすくなる」と評価した。 2015年3月の金沢延伸開業後、5年以上が経過しているが、「長野」の呼称存続に向けて積極的だった長野商工会議所や、長野県の地元紙である信濃毎日新聞の記事では「北陸新幹線(長野経由)」の表記が見られ、JR東日本以外でも長野県内関係者においては一定程度使用が浸透していることが伺える。
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