設計への取組み
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/17 03:46 UTC 版)
757は在来機の727よりも高い収容能力と優れた経済性を持つ機体を目指して設計された。1973年の第四次中東戦争をきっかけに燃料価格が高騰し、運用コストの上昇を懸念していた航空会社は燃費性能の向上を求めた。設計目標の中には燃料消費量の削減が掲げられ、削減方法と目標値(従来機比)は新エンジンの採用により20パーセント、航空力学面での改善により10パーセントとされた。より軽い材料と新しい主翼の採用も燃費性能を向上させると期待された。最大離陸重量 (MTOW) は727よりも4,540キログラム大きい99,800キログラムに設定された。高い気温と高度のために離陸性能が低下する高温・高地環境のために、ペイロード容量を向上させた重量型がオプション設定された。 エンジン数は3発または4発の場合と比べて燃費性能面で有利だという理由から双発とされた。ローンチカスタマーのイースタン航空とブリティッシュ・エアウェイズは推力166キロニュートンのロールス・ロイス (R-R) 製RB211-535C ターボファンエンジンを選択した。ボーイングの旅客機ではこれまで米国製以外のエンジンを採用したローンチが無く、今回のロールス・ロイス製エンジン搭載仕様の受注によるローンチが初めてのケースとなった。後に、米国のエンジン製造企業であるプラット・アンド・ホイットニー(以下P&W)は170キロニュートンの推力を持つPW2000型を実用化し、デルタ航空が1980年11月に発注した60機に搭載された。開発プログラムの初期にはゼネラル・エレクトリック社のCF6-32の搭載も検討されたが需要が無く実現しなかった。 757は727の後継機と考えられており、当初は727との共通性が重視されたが、いずれ退役することが見込まれる727よりも、同時進行で開発中の767との共通性を高めた方が良いと考えられるようになった。ボーイングはリスクを低減するため、そして開発費を節約するために両機の設計作業を統合し、結果として両機種は搭載機器や取扱上の特性などが共通化された。767で採用されたコンピュータを用いた設計手法 (CAD) が757の設計でも取り入れられ、全体の3分の1を超える設計図がCADで作成された。1979年の前半には757と767のコックピットが共通化され、両機で同じ計器類やアビオニクス、飛行管理システムが採用された。従来の機械式計器類の代わりに合計6個のカラーCRTを配置して操縦士が把握しやすい情報提示を行うとともに、コンピュータによる自動化を進めることで、操縦士の作業負荷の低減やヒューマンエラーの防止が図られた。まだグラスコックピットという言葉もない時代であったが、この新しいコックピットシステムは、それまで操縦士2人と航空機関士の計3人で乗務する必要があったものを、操縦士2人のみで運航できるように設計された。757と767のコックピットの共通化はパイロットの操縦資格まで共通化することを視野に入れていた。通常、旅客機の操縦資格は機種ごとに取得することになるが、1つの操縦資格で2機種に乗務できることになれば、ボーイングの顧客となる航空会社側でも操縦士の勤務割り当ての自由度が増すことになり、メリットは大きくなる。この共通資格認定は1983年7月22日に認められ、地上での数時間の教習によって757と767の相違について学習することにより、双方の機種への乗務が認められることになった。 757の主翼はスーパークリティカル翼を元に開発され、翼の上面のほぼ全域で揚力を発生できる新しい翼型が採用された。この主翼には767の主翼と共通の設計技術が用いられ、従来機より抗力が低減されたほか、燃料タンク容量を増やすことができた。また、727よりも大きくなった翼幅によって誘導抗力の発生が少なくなり、主翼の付け根部分が大きくなって主脚の格納スペースが拡大したことで後に胴体延長型を開発する際に役立った。 1979年の中頃になると727の面影を残す特徴であったT字尾翼を取り止めて胴体尾部に水平尾翼を装備するデザインに変更された。この変更は、ディープストールと呼ばれる空力学的状態に陥るリスクを避けるとともに、胴体後部の絞り込みを小さくして客室容量を増やす目的で行われた。757-200の全長は47.32メートルで727-200から64センチメートル長くなったが、尾部のエンジンがなくなったことで客室に割り当てられるスペースはずっと大きくなり座席数は727から50席増えて239席となった。これで、727から757に引き継がれた主要な特徴は胴体断面だけとなった。一時は開発をワイドボディの7X7計画に一本化することも考えられたが、結局ワイドボディ機とナローボディ機の両方を開発することになった。757をナローボディとしたのは主には抗力を減らすためで、イースタン航空とブリティッシュ・エアウェイズがナローボディ機の方が経済的だと主張したほか、イースタン航空がシャトル便を多数運航していたニューヨークのラガーディア空港は単通路機の乗り入れしか認められていなかったこともあり、ボーイングが予測した民間航空機市場においてナローボディ機の需要があると判断したことによる。
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