設計の経緯
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/01/31 16:02 UTC 版)
CF-105アロー計画のためにアブロ・カナダ社は元はロールス・ロイス RB.106(英語版)、ブリストル B.0L.4 オリンパス、またはオリンパスのライセンス生産版であるカーチス・ライト J67の異なる3形式のエンジンの中から一形式を使用する予定だった。RB.106とJ67は新設計用のバックアップとして選択されたが、アローの設計段階で中止され、計画にオリンパスを選択する事はとうてい条件に合わなかった。オレンダ社は即座にPS.13イロクォイの設計に着手した。 イロクォイの設計は単純で軽量である事を基本とした。この方針により、オレンダ社は(主に圧縮機の回転翼に)イロクォイの重量の20%にチタンを使用する事により先駆的な成果を挙げた。チタンは軽量で高張力で高温に耐え、耐食性があった。エンジンの重量はこれまでに使用されていた鋼を使用した場合よりも850ポンド (386 kg)軽量化されたと予想される。1950年代の初頭においてはこの素材は供給量が逼迫しており、物理的特性の知識が未熟で、加工技術の問題により開発は予算を超過した。同様に鋼やアルミニウムのような関連する一般的な素材と比較してとても高価だった。 チタンを使用したエンジン部品を設計できるか検討され、そのため支持構造体も同様にエンジンによる応力を減らすことにより軽量化が可能で全体の重量を抑えた。ギアボックスの筐体のような他の部品等はマグネシウム合金で製造された。インコネルは低圧タービンやエンジン後部の金属断熱ブランケットに使用された。この耐熱ニッケル‐クロム合金は高温でも強度を維持でき、耐酸化性や耐食性を備えた。これらの先進的な合金を使用した第一の理由は重量を抑えつつ性能を高める事であり、エンジンの推力重量比は5:1で海面高度におけるアフターバーナー未使用時の推力は 19,250 lb (アフターバーナー使用時には26,000 lb)をもたらした。 2軸式ターボジェットで10段軸流式で高速アニュラ型燃焼器は32個の上流気化バーナーを備え、単段高圧タービンと2段低圧タービンと60個のノズルを備えるアフターバーナーと完全モジュラー式con-diノズルを備えた。エンジン直径(補機類の直径を含まず)は42インチでアフターバーナーが47インチだった。流量は420lbs/秒で圧縮比は 8:1,燃料消費はアフターバーナーを使用しない時に約 0.85でアフターバーナー使用時に 1.9だった。 推力重量比5:1は1960年代末に推力重量比が約7:1(後期型はさらに上回る)の初期のF-15とF-16戦闘機のエンジンとして開発されたプラット・アンド・ホイットニー社のF100が登場するまでは上回るエンジンは無かった。注意しなければならないのはF100エンジンは圧縮比がイロクォイよりも大幅に高いという点である(他にイロクォイはターボジェットでF100はターボファンという理由もある)。 設計、開発、製造はこのような先進的なジェットエンジンであるにもかかわらずオレンダ社のチームによって信じられないほど短期間で行われた。詳細設計は1954年5月に完了し1954年12月には試験運転に到達した。初期のオレンダ9はより部品点数が多かったが出力は低かった。一例としてオレンダ9の重量は2,560 lb (1,160 kg)で静止推力は 6,355 lb (2,883 kg)で一方のイロクォイは重量は5,900 lb. (2,675 kg) だが報告によると離陸時のアフターバーナー使用時の静止推力は30,000 lb (13,608 kg) である(オレンダはアフターバーナーを備えていなかった)。 イロクォイは登場時、世界で最も強力なジェットエンジンで推力はアフターバーナーを未使用時にの推力は19,250 lbf (85.6 kN)でアフターバーナー使用時には25,000 lbf (111 kN)だった。空気力学的に最良の性能を発揮するのは高度50,000 feet (15,200 m)でマッハ 2 の速度の時である。
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