薬剤による治療とは? わかりやすく解説

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薬剤による治療

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/09 14:45 UTC 版)

緑内障」の記事における「薬剤による治療」の解説

緑内障点眼治療薬として現在よく使われているのはプロスタグランジン関連薬交感神経遮断薬炭酸脱水酵素阻害薬α2受容体作動薬4種類であり、眼圧下降良好なプロスタグランジン関連薬第一選択薬となる場合が多い。第二選択薬交感神経遮断薬炭酸脱水酵素阻害薬いずれか選ばれる場合が多い。実際に個人個人によって眼圧下降の必要度の多寡性別年齢既存全身疾患有無などを総合的に考慮して第一選択薬第二選択薬選ばれる病型によっては副交感神経刺激薬選択される場合もある。また2種類薬剤配合した合剤使用されている。 プロスタグランジン関連薬 日本ではプロスト系のラタノプロストトラボプロストタフルプロスト、プロスタマイド系のビマトプロスト、プロストン系のイソプロピルウノプロストン上市されている。眼圧下降効果に関してプロスト系がほぼ同等ビマトプロストプロスト系と同等あるいはやや眼圧下降効果優れウノプロストン一段落ちるとする報告が多い。眼圧下降機序ぶどう膜強膜流出路からの房水流出の上昇とされている。プロスタグランジン関連薬は、全身副作用少な反面、眼局所副作用有して眼瞼(まぶた)、虹彩の色沈着やまつげが濃くなるのはほぼ必発であり、炎症黄斑浮腫引き起こす可能性指摘されている。また眼圧下降効果小さいノンレスポンダーの存在知られている。プロスタグランジン関連薬に関しては、ノンレスポンダーを除外するために片眼トライアルと言われる片目だけに治療して治療眼との治療効果比較する方法知られているが、片眼トライアル長期的な眼圧下降反映しないという前向き研究近年報告されている。 交感神経遮断薬 β遮断薬としてマレイン酸チモロールゲル化チモロール、塩酸カルテオロールゲル化カルテオロール、β1選択的遮断薬として塩酸ベタキソロール、αβ遮断薬として塩酸レボブノロールニプラジロール、α1遮断薬として塩酸ブナゾシン上市されている。眼圧下降機序毛様体における房水産生抑制である。β遮断薬かつては治療の第一選択薬であったが、就眠眼圧下げ効果が弱いこと、長期使用効果減弱すること、全身的な副作用多く重篤であることからその座をプロスタグランジン関連薬に譲ることとなった眼圧下降効果に関してマレイン酸チモロールゲル化チモロール、塩酸カルテオロール塩酸レボブノロールニプラジロール間では眼圧下降効果大きな差はないとされている。塩酸ベタキソロールに関しては、チモロールと比較しやや眼圧下降効果が低いとされているが、ベタキソロールにおいても点眼開始12ヵ月後にはチモロールやカルテオロールと遜色のない眼圧下降効果を示すという報告もある。β遮断薬・αβ遮断薬・β1遮断薬では多く全身副作用報告されており洞徐脈2度上の房室ブロックコントロール不十分な心不全などがある患者では禁忌である。呼吸器系への影響としては、β2遮断作用により気管支平滑筋収縮するので、喘息患者慢性閉塞性肺疾患COPD)などでは気道閉塞誘発される危険性がありβ遮断薬・αβ遮断薬禁忌である。カルテオロールには内因性交感神経刺激作用があり血圧低下少ないとされている。ブナゾシンはα1遮断薬であり局所全身副作用少な反面眼圧下降効果もやや劣るとされている。 炭酸脱水酵素阻害薬 炭酸脱水酵素阻害薬としてはドルゾラミド塩酸塩ブリンゾラミド上市されている。眼圧下降機序房水産生抑制である。炭酸脱水酵素阻害薬はしみる、かすむ等の眼局所副作用有するものの全身副作用少ない。単剤での眼圧下降効果交感神経遮断薬に劣るもののラタノプロストとの併用では交感神経遮断薬同等眼圧下降効果を示すという報告もある。両者とも単剤投与では2回点眼よりも3回点眼眼圧下降の点で優れるという報告が多いが、プロスタグランジン関連薬との併用では2回点眼3回点眼とで差がないとも報告されている。プロスタグランジン関連薬との併用時にはβ遮断薬眼圧下降効果に差はなく、就眠時の眼圧下げ効果β遮断薬より強いた第2選択薬として選ばれることも少なくない2010年にチモロールとラタノプロスト合剤、チモロールとトラボプロスト合剤、チモロールとドルゾラミド合剤 (コソプト®/MSD) の3剤が相次いで上市された。 α2受容体作動薬 α2受容体作動薬としてはブリモニジン酒石酸塩が上市されている。眼圧下降機序房水産生抑制ならびにぶどう膜強膜流出路を介した房水流出促進である。眼圧下降効果は単剤ではβ遮断薬とほぼ同等だが、トラフ眼圧下降効果が弱い可能性指摘されている。プロスタグランジン関連薬β遮断薬炭酸脱水酵素阻害薬α2受容体作動薬追加投与した際の眼圧下降効果に関してはほぼ同等という報告と、α2受容体作動薬トラフでやや劣るとする報告がある。ブリモニジン酒石酸塩は、様々な基礎研究において神経保護する効果報告されていたが、The Low-pressure Glaucoma treatment studyという正常眼圧緑内障対す無作為化比較試験において眼圧依存的な神経保護効果がある可能性2011年報告された。 Rhoキナーゼ阻害剤 2014年発売され比較新し薬剤結膜充血高率来すために第一選択とはならないが、プロスタグランジンβブロッカーなどの追加して上乗せ効果得られる詳細は「リパスジル」を参照 カルパイン阻害剤 中澤徹(東北大学大学院医学研究科眼科学分野)らのグループは、視神経細胞死引き起こすタンパク分解酵素である「カルパイン」の働き抑える薬剤を、緑内障発症させたマウス投与し視神経生存率の上昇と神経保護する作用確認した将来的には臨床への応用計画されている。 薬物治療の方針 プロスタグランジン関連薬点眼しても緑内障視野障害進行する場合には点眼薬追加考慮する。ただしノンレスポンダーであることで充分な眼圧下降得られていない可能性がある場合には、プロスタグランジンの他剤への切り替えを行うこともある。ただし、眼圧には日内変動季節変動がありノンレスポンダーの評価は困難である場合がある。追加点眼薬としては具体的にβ遮断薬追加もしくは炭酸脱水酵素阻害薬追加考慮する場合が多い。両者プロスタグランジン点眼薬との併用において眼圧下降効果同等であるという報告が多い。炭酸脱水酵素阻害薬には少な全身的副作用就眠眼圧下降という長所一日二回もしくは三回点眼が必要、しみる、むといった眼局所副作用が多いという短所があり、一方β遮断薬には一日一回点眼充分な眼圧下降効果を持つ薬剤があるためアドヒアランス良好局所副作用少ないといった長所重篤全身的副作用就眠眼圧下降が不十分といった短所がある。加えて治療を受ける個人眼圧下降の必要度の多寡性別年齢既存全身疾患有無などを総合的に考慮して第一選択薬第二選択薬選ばれる。 2剤点眼下で緑内障視神経症が進行する場合には3剤目の追加点眼を考慮する。3剤目の追加投与はいずれ追加においても眼圧下降大きな違いはないとされている。 4剤目の追加点眼の効果限定的である。角膜上皮障害増加などの副作用増加や、アドヒアランス低下考えられるため4剤目の追加点眼は慎重に考慮する必要がある。4剤目の追加行わず次の治療移行することも多い。 その他の点眼治療 プラトー虹彩など一部病型ではピロカルピンなどの副交感刺激薬による縮瞳が有効であることもある。 内服治療と点滴治療 点眼薬多剤使用して眼圧降下が十分ではない場合にはアセタゾラミドなどの炭酸脱水酵素阻害薬内服薬併用する場合がある。副作用として四肢末端のしびれ感、食思不振異味感などがあげられる尿路結石骨髄抑制などの重篤な副作用もあるため通常長期使用しない手術までの短期間眼圧抑えるため、手術希望しない場合、既に複数の手術がなされており手術による効果望みにくい場合などに使用されるマンニトールグリセリンなどの高張浸透圧による点滴治療一過性眼圧下げ必要がある場合選択される充分に眼圧下がっているにもかかわらず緑内障視野障害進行止まらない場合がある。その際にはカルシウム拮抗薬内服して視神経保護効果期待することもある。同じく神経保護効果のある点眼血流改善効果のある点眼併用することもある。 大麻 2003年アメリカ眼科学会は緑内障の治療目的大麻使用して緑内障治療薬上の有用性はないと結論している。 妊娠・授乳と緑内障 妊娠授乳期における緑内障治療薬使用安全性は明らかではない。プロスタグランジン胎盤通過することが知られており、妊娠中の使用避けられる場合が多い。交感神経刺激薬比較的安全とされている。交感神経遮断薬使用により胎児に低心拍数不整脈見られたとの症例報告がある。しかし交感神経遮断薬使用群と比較し、非交感神経遮断薬使用群に有意低出生体重児が多いという報告もある。副交感神経刺激薬により流産早産誘発されるとの報告がある。動物実験では炭酸脱水酵素阻害薬大量投与による催奇形性報告されている。妊娠により眼圧下降するとされている。交感神経遮断薬母乳への移行が多いため授乳期使用避けられることが多い。

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薬剤による治療

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/28 07:47 UTC 版)

バセドウ病」の記事における「薬剤による治療」の解説

甲状腺ホルモン合成抑える抗甲状腺薬メチマゾールチアマゾールメルカゾール)、プロピルチオウラシル(チウラジール、プロバジール)を、規則的に服用する方法定期的に甲状腺ホルモンの量を測定しながら、適切な量の服用することで、血液中の甲状腺ホルモン濃度正常にする。甲状腺刺激ホルモンの量を調整することで普通の人と変わらない生活を営むことができるが、甲状腺刺激抗体消えるまで飲みつづける必要がある為、完治には長い期間を要する副作用としては、5%に皮膚の炎症、0.05%に白血球減少無顆粒球症生じことがある。これらの副作用服用開始から3か月以内現れることが多い。無顆粒球症生じた直ち服薬中止し、他の治療法切り替える必要がある。(好中球1000個/μLを下回れ中止とする。) メルカゾールではMPO-ANCA関連血管炎がまれに引き起こされるメルカゾールは15mg/dayで開始が安全といわれている。 プロピルチオウラシル重症肝障害出現することがあるため、ガイドラインでもメルカゾール第一選択薬としている。

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