医学上の課題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/07 23:48 UTC 版)
日本でも、2017年に不適切な抗菌剤処方を抑制して耐性菌を増加させないよう、厚生労働省がガイドラインを作成した。21世紀初頭には、新たな抗生物質の開発が停滞してきており、耐性菌の問題も抗生物質の過剰な使用や誤った使用によって、抗生物質が効かない症例が急増している。創傷では耐性菌を生じにくいハチミツや精油、金・銀・銅といった、金属のナノ粒子を使ったものが研究され、創傷被覆材に組み込まれるようになった。 感染症あるいは癌の治療において、化学療法はその原因となる病原体そのものを排除する根治的な治療法として、重要な方法である。ところが、ある薬剤に対して病原体が耐性を獲得すると、その薬剤による治療は不可能になり、他の代替薬を用いなければならない。 さらに病原体の自然耐性の有無や、多剤耐性の獲得などによって代替できる薬剤が存在しない場合、化学療法による治療が不可能になるため、治療効果が大きく劣る別の治療法を検討するか、患者の免疫機構によって自然回復するのを待つしかできない。従って、重症化や、場合によっては死亡につながる危険性が高くなる。このことから薬剤耐性は、医学上大きな課題になっている。 また、薬剤耐性病原体による疾患の特徴として、しばしば日和見感染や院内感染との関連が挙げられる。これらの薬剤耐性病原体の多くは、それ自体のビルレンス(毒性)が強くないものが多く、健常者に感染しても疾患の原因になることは無い。しかしながら、加齢や、他の疾患(AIDSなど)、ストレスや疲労によって、免疫機能が低下した状態にあるヒト(易感染宿主)では、弱毒性の病原体によっても感染症(日和見感染症)を発症してしまう。 この場合、宿主の免疫機構が低下していることに加えて、病原体が薬剤耐性を獲得していると治療が極めて困難になり、通常の健常者では考えられないような弱毒性病原体による感染が、生命を脅かしかねない。病院などの医療機関では、易感染宿主となる病人が多いのに加えて、さまざまな種類の化学療法薬が普段から使用される機会が多いため、病原体が薬剤耐性を獲得する機会が多く、これらの病原体による院内感染が発生しやすい状況にある。
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