医学上の歴史とは? わかりやすく解説

医学上の歴史

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/16 14:28 UTC 版)

メランコリー」の記事における「医学上の歴史」の解説

メランコリア」という語は古代医学学説四体液説由来する人体構成する血液粘液・黄胆汁・黒胆汁の4つ体液バランス崩れて病気になるとするこの説では、人間の性格(気質)もこの4体液バランスから決まるとしている。4体液のうち、「黒胆汁」が過剰な人は「憂鬱質」(メランコリア)という気質になるとされたため、「黒い」を意味する古代ギリシア語の「μέλας」(melas) と「胆汁」を意味する「χολή」(kholé) を合成したメランコリア」(憂鬱質)という語が生まれた紀元前5世紀から4世紀にかけての医学者ヒポクラテスは『金言』(箴言、Aphorisms)の中で憂鬱質を、黒胆汁の過剰により引き起こされる精神および身体ある種症状起こす病気」であると記述した。「恐怖感落胆が、長く続く場合」を、彼は憂鬱質症状であるとした。 2世紀ギリシア医学者ガレノスヒポクラテス医学的知識学説の強い影響が残る時代生きた人物で、ヒポクラテスの説をもとに四体液説発展させた。憂鬱質脾臓精巣作られる胆汁の過剰により引き起こされるとし、さらに四体液人間四つの気質四大元素とも結びつけた。この説では憂鬱は土の元素結び付き、さらに四季のうちの秋と、人生のうちの成人期と、一日のうちの午後結び付けた。これをもとに中世にはさらに占星術結び付き牡牛座乙女座山羊座憂鬱質関連付けられた。 中世アラビア医学では、心理学者イスハーク・イブン・イルマーン(英語版)(908年没)が随筆『Maqala fi-l-Malikhuliya』の中で、メランコリア一種として「phrenitis(英語版)」(脳炎狂乱などと訳される)を挙げている。彼はこの種の気分障害診察行いその様々な症状記述しており、主な症状として、突然の挙動愚かな行動恐怖感妄想幻覚などを挙げた。彼はこの気分障害アラビア語で「malikhuliya」と書いているが、11世紀半ばギリシア語アラビア語からラテン語への文献翻訳行ったコンスタンティヌス・アフリカヌスはこれを「melancolia」と訳したここから西欧各国メランコリアの語が広まったペルシア医師心理学者アリー・イブン・アッバース・アル=マジュシ(英語版)(982年没)は、その著書医学百科事典の『Kitab al-Malaki』(コンスタンティヌス・アフリカヌスにより『Liber pantegni(英語版)』の題でラテン語訳された)において精神病についても触れその中で前述のものとは別の種類メランコリアである「clinical lycanthropy(英語版)」(妄想症)を発見し観察したことを述べある種人格の異常と結び付けた。彼は「その患者雄鶏のようにふるまいのように鳴く夜に墓場さまよい、目は暗くなり、口は乾き、こうなるとその患者回復することは難しくなり病気が子へと遺伝する。」と書いている。 イブン・スィーナーアヴィケンナ)は、『医学典範英語版)』(1020年代)で神経精神医学扱いメランコリアを含むさまざまな神経精神医学的状態を詳述している。彼はメランコリアを、気分障害のうち鬱の性質が強いものの述べ患者疑い深くなることがあり、ある種恐怖症悪化させることもあるとしている。『医学典範』12世紀ラテン語翻訳され近世までヨーロッパで広く使われた。 メランコリア対す治療について最も幅広く述べているのは、イギリス学者ロバート・バートン(英語版)の『憂鬱解剖学英語版)』(1621年)であり、彼は文芸および医学双方観点からこの問題扱っている。バートンは、16世紀には音楽とダンスによる治療法が、精神病、特にメランコリア治療にとって死活的に重要視されたことを述べている。 1628年ウィリアム・ハーヴェイ血液循環説発表したことをきっかけ古代医学説は次第否定され憂鬱質説明する四体液説医学分野では顧みられことはなくなったが、文学芸術など他の知的分野にはなお大きな影響与え続けた

※この「医学上の歴史」の解説は、「メランコリー」の解説の一部です。
「医学上の歴史」を含む「メランコリー」の記事については、「メランコリー」の概要を参照ください。

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