前史『X-MAGAZINE』とは? わかりやすく解説

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前史『X-MAGAZINE』

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/05 21:35 UTC 版)

Jam (自販機本)」の記事における「前史『X-MAGAZINE』」の解説

1978年秋、日大芸術学部中退した高杉弾好きなことだけをしてフラフラ暮らしていた。ある日深夜高杉武蔵小山駅から自宅向かって歩いている途中電柱の下に束になって捨てられていたエロ本群から『スノッブ』という一冊の自販機本発見する高杉はそれに掲載されていた「見開き裁ち落とし接写パンティストッキングを履いた女性の尻を大胆に写したフェティッシュヌード写真」と裏表紙の裏面(表3にあった「もう書店では文化買えない」 というキャッチコピー大いなるショックを受ける。居ても立ってもいられなくなった高杉カメラマン会って写真感想伝えるため、夜が明けるとすぐに編集部電話してアポイントメント取りその日のうちにエルシー企画という出版社訪れた。 この時、高杉顔を合わせたカメラマン武蔵野大門こそエルシー企画社長明石賢生その人であったその場明石編集局長“S”こと佐山哲郎相談して同社自販機本スキャンダル』8頁分の原稿高杉自由に任せることを思いつく。これに応じた高杉友人美沢真之助(=隅田川乱一。後に『Jam』『HEAVEN』『X-MAGAZINE編集者)を誘い誌名を『X-MAGAZINE』と改めた上で「Xランド独立記念版」と題したゲリラ記事一週間制作した。この原稿は『スキャンダル 悦楽超特急 X-MAGAZINE5号1978年12月発行)に掲載され、これが高杉実質的な商業デビュー作となった。扉のキャッチコピーには「自動販売機国家買えることだってある」と記されている。 なお「もう書店では文化買えない」というキャッチコピー考案した佐山哲郎自販機本スキャンダル初代編集長)は竹熊健太郎インタビュー高杉弾が「Xランド発表に至るまでの状況と同コピー生まれた背景次のように回想している。 当時アリス出版にいた亀和田武がね、自分編集してた『劇画アリス』って雑誌で、表3裏表紙のひとつ前)に自分の上半身ハダカ写真載っけて“エロ劇画界のジュリー”なんて言ってたりね(笑)遊んで面白かったよね。どこまでかっこよく滅茶苦茶やるか、競争があった。そのへん俺の「もう書店では文化買えない!」ってのも出たわけだけど、別に思想的どうこうっていうんじゃないんだよね。とにかく面白いことがやりたかったこのへんから妙な連中出入りするようになったんだな。プール監視員をやってた安田邦也とかさ、当時明大出たばかりで、どこからみても快活な好青年でね。それがエロ本になって。あとブルースミュージシャンやってた宇佐美とかね。いろんなのが来たけど、やはり驚いたのは日芸で『BEE-BEE』ってミニコミ作っていた高杉一派だね。 高杉編集センスはなかなかのものでさ。でも特に、隅田川乱一文章力には驚いた刺激的だったよ。その後BEE-BEE』は確か『本の雑誌』のミニコンテストで優勝するんだな。そういえばこの間週刊朝日』で椎名誠が『本の雑誌』の思い出話書いてたけど、出てきたね隅田川の名前が。椎名と、当時本の雑誌』で編集して群ようこがさ、争うようにして読んでたっていうからね、隅田川投書を。 高杉は確か俺がエルシー仕事中にやってきたんだ。「お前のファン来てるぞ」って誰かが呼び来てさ。「可愛い女の子だ」ってかつがれ行ったら、それが高杉(笑)。どこが可愛少女だって。それでミニコミ見せてもらって。横で明石が「どうだ、こいつ使えるか?」って聞くから、「使えるもなにも、一冊すぐに作らせる」って言ったですよ。そしたら明石は「お前はすぐそんなこと言うかダメなんだ」って怒ったの。じゃあってんで、とりあえず俺がやってた雑誌の八ページだけまかせることにしたんだよ。そしたら……連中、いきなり、“乗っ取り宣言”するんだよ。「この雑誌俺たち乗っ取った!」って。なんなんだ(笑)…… — 竹熊健太郎天国桟敷人々自動販売機本の黎明期と『JAM』の出現」『Quick Japan14号 1531997年 太田出版 この「Xランド」が好評だったことから明石は『X-MAGAZINE6号編集高杉に一冊丸ごと自由に任せることにし、高杉美沢雑誌ジャック成功する。後に高杉は「その8頁が当時エロ本世界では考えられないような、すっごい『変』だったらしいんだよ。『面白いじゃん、なにこれ?』みたいに。半分あきれているんだよね(笑)」と回想している。 雑誌編集にあたって美沢友人八木眞一郎(後に『Jam編集者1978年2月日本文華社から創刊され、わずか1号廃刊した幻のパロディ雑誌冗談王』編集長。同誌は日本出版史初め表1から表4広告まで全頁すべて冗談という異色内容で、八木呼びかけ高杉弾美沢真之助、近藤十四郎編集・執筆参加している)を誘い大麻取締法への批判アメリカ薬物事情などエロとは一切関係のないドラッグ特集記事執筆する更には笑いガス実験男性器紙工作、変態SF小説下層サラリーマンのオピニオンエッセイ、実在しない架空の本や『電話帳』の書評などを取り上げ極めつきは「スターダスト 芸能人探訪!! ゴミあさりシリーズ」と銘打ちかたせ梨乃宅のゴミ漁り実行ドラマ台本腐ったミカン使用済みタンポンなどを誌上グラビア無断公開する暴露企画行ったこのようにX-MAGAZINE』は現在では到底考えられないほど過激な企画読物目白押しであり、表向きエロ本だが中身ヌード露出極端に乏しく無茶苦茶過激な企画読み物満載という『Jam』のスタイル創刊前から完全に確立する。これに関してJamブレーン一人だった八木眞一郎は「『Jam』はエロ冗談によっていかに無効化するかが、今考えれば唯一のテーマだったのかもしれない」と後に回想している。 ちなみに漫画家蛭子能収連載前打ち合わせ高杉から「一応表紙エロ感じ見えんですけど中身自分たちが好きに作ってるんですよ。自分たちはこれを“ゲリラ”だと思ってるんです」と熱烈にアピールされたと回想しており、元々高杉自身「もっと突き抜けて、ほとんど無意味方向へ行くまで過激なことをやってみたらどうか」という徹底的に意味を排除したダダ的な誌面作り標榜していた節があったという。

※この「前史『X-MAGAZINE』」の解説は、「Jam (自販機本)」の解説の一部です。
「前史『X-MAGAZINE』」を含む「Jam (自販機本)」の記事については、「Jam (自販機本)」の概要を参照ください。

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