公設派遣村(2009年~)
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「年越し派遣村」の記事における「公設派遣村(2009年~)」の解説
2009年 - 10年の年越しは、日本政府の緊急雇用対策の一環として全国各地で失業者の支援対策を実施。このうち東京都の「公設派遣村」( 正式名称は、「失業者など生活困窮者の年末年始を支援する東京都の生活相談、宿泊提供の事業」である。)は国立オリンピック記念青少年総合センターを会場として、12月29日から1月4日まで失業者らの合宿所と食事をセンターが提供し、ハローワークの関係者らも訪れて就職(就労)・住居の相談会をしている。しかし、その多くは就職(就労)・住居が定まらず、1月5日以後も合宿所を別の都内公設施設に移して失業者支援に当たる。 東京都は6日、宿泊施設外への仕事探しの交通費などとしてほぼ全員に2万2千円を一括支給した。しかし、利用者562人のうち、約200人が東京都が禁じた無断外泊を行った。外泊の連絡は一部しかなかった。東京都は「利用中は生活再建に専念してもらう必要がある」として無断外泊を禁止していた。また、一部の利用者が就活費を酒代やたばこ代に充て、中には施設内で禁止されている飲酒を行い退去処分になった悪質な利用者もいた。施設内で6 - 7日に支給された現金の盗難も数件発生。利用者の50代の男性がアルコール性肝硬変により就寝中に死亡していたことが7日の朝に判明した。 このことについて、昨冬の派遣村の実行委員らでつくる年越し派遣村が必要ないワンストップ・サービスをつくる会は「現金を持ち慣れていない人が多いだけに、一括ではなく2~3日分ずつ渡すなどの配慮が必要だった」と指摘しているが、「細切れの支給は入所者に不便」と意見したのも同会であった。 ワンストップの会は、都の広報活動が不十分として、路上や公園でチラシを配布するなど積極的な広報活動を行った。この結果、利用者が急増し運営予算も当初見積額の6000万円を大幅に上回り、最終的には1億円を超えた。湯浅誠は最終的な利用者数は誰にも予測できなかった。都の職員は一生懸命に運営に当たったと擁護したが、会側からは都の見積もりが甘かったのではないかとの指摘もされた。また、会の活動に対して都の幹部からは、役所の正月休みに生活保護申請を一斉送信するのは強引との指摘もなされたが、同会は「失業が長期化している現在、生活保護を使うしかないのに、1人で役所を訪れると『家族を頼れ』『元気じゃないか』などと申請書の提出さえさせずに門前払いするケースが少なくない。」と集団申請の意義を強調した。 施設への移動の前日に一部の入所者がカプセルホテルに泊まることになったことから、他の入所者の不満が爆発し、暴動寸前の状況になったことから、全員がカプセルホテルに泊まることになった。 しかし、利用者が給付金を酒代やタバコ代に充てたり、あるいは施設内で禁止されている飲酒を行い退去処分になるケースもあり、メディアに大きく取り上げられた。 一連の問題に対して、70件以上の意見が寄せられ、その殆んどが「税金の無駄遣い」などといった批判的な内容だった。また、利用者の中にも、「話していると就労意欲のない人が3分の1くらいは居る」、「施設では盗まれるのが怖く、現金を持ち歩けない」、「実際は派遣切りなどではなく、一時金目的のホームレスのような人も多かった」といった声が上がった。 ワンストップの会は、マスコミに対しては「水に落ちた犬は打て?」との見出しで「壮大なあら捜しの包囲網」と批判し、特に産経新聞と朝日新聞を名指しした。 都の職員の中には、生活保護の申請が通りにくいと噂された区に申請を割り振られた入所者から、「差別するな。土下座して謝れ。」と詰め寄られた者もいた。こうした状況については、利用者のうち傷病者への健康医療サポート・サービス・レベルの低さもトラブルの原因となっているとして、ワンストップ・サービスをつくる会は定期的に各部屋を巡回して入所者に声かけ確認することや、医療受診希望が出た場合には速やかに医療機関につなぐこと、また体調不良を訴えた入所者や受診した入所者に対して後日経過を追って声かけ確認することなどを要請し、同時に救急医療が必要な入所者が救急車を呼ぶことを妨げた職員や、救急隊員から求められた救急車の同伴を断り「救急車を呼んだので責任を取れ」と相談者の胸を小突く等の対応した職員がいるとして、対応改善を求め、改善状況の明示と当該職員の名前を明らかにし、2度と繰り返させないよう謝罪させることを求めた。 東京都は「生活総合相談」を1月15日をもって終了し、今回の対策事業としての宿泊場所と食事等の提供は、1月18日をもって完了した。1月17日夜までに退所手続を済ませた利用者は298人であり、同時点までの利用登録者562人の進路は次の通り。 生活保護や住宅手当など都内区市町村行政福祉施策による支援決定 419人。 国(ハローワーク)による就職安定資金融資(貸付金)決定 1人。 自主退寮者 28人。うち再就職決定は15人、帰郷および個人のつてあるいは理由不明が13人。 病死 1人。 寮内飲酒による強制退寮 2人。 所在不明 111人。なお、所在不明者は1月17日までに給付金精算および自ら退所手続を行なわなかった利用登録者であり、東京都側により退所手続処分がとられている。 1月18日の事業終了に伴う大田区のなぎさ寮退寮に際し、東京都側が準備したバスによる最寄り駅までの送迎を利用したのは264人であった。
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