作画方法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/02 14:05 UTC 版)
面倒くさがり 初代編集者の鳥嶋和彦によると、『Dr.スランプ』では一番簡単だからと丸い山に木があるだけの背景にしたという。『ドラゴンボール』では、描くのが大変な市街地などの背景で闘いに入ると爆破させる、もしくはすぐに登場人物を荒野に移動させたり、超サイヤ人を金髪にすることでアシスタントのベタ塗りの時間を節約させる、などのエピソードがある。『Dr.スランプ』の途中から『ドラゴンボール』までアシスタントは松山孝司1人しか使っておらず、いつも悟空の髪の毛のベタ塗りに時間を取られていたため、鳥山は「超サイヤ人を登場させたことでアシスタント君との約束をやっと果たすことができた」と語っている。 しかし鳥山は2015年に「ボクはいつもそうなんですが、人と話す時、特に収録などされていると余計に面倒だからとか、なんとなくとか、ちょっと格好つけて苦労を悟られないように話してしまうという、つまらないクセがあります。もちろん、そんなに面倒くさがりだったら漫画など描けないし、なんとなく描けるほど漫画家という職業は甘いものではありません。なんてことないようなフリをしていますが、陰ではけっこう頑張っているんです」「ジジイになった今だって、漫画の仕事こそあまりしませんが、わずかな睡眠時間であれこれ頑張っています。それでもなかなか満足できるような仕事はできません。自信のあるような態度も、じつは自分を追い込んでいるだけです。よく言われることではありますが、本当に永遠に勉強だと思っています」と言っている。そして「また、少しだけ話を大げさに盛ってしまったり、プチ自慢したり、言ってることが変わってしまうのも我ながら感心しませんね。へそまがりなうえに孤独好きで人付き合いの悪い部分は、職業的にプラス部分もあったりするので反省はしませんが、人間的にはどうなんでしょう」と言って「流行に乗るな、とまでは言いませんが、わしの作品について来い!なんて言うぐらいの流れに逆らう根性とセンスと個性は、できれば身に付けてほしいですね」とアドバイスしている。 かつてのインタビューではマンガ製作の準備・練習が嫌いなことを公言しており、鳥嶋にも鳥山ほど資料を持っていない作家はなかなかいないと言われている。ただし鳥嶋は鳥山のことを「基本的な絵の勉強を漫画ではなく、デザイン画などから学んでいるため、バランス感覚が優れている」「トーンを使わないので、白と黒のバランスを取るのが非常に上手い」「背景などを描かなくても画面が持つだけの構成力とデッサン力を持っている」とも評している。 3代目編集者の武田冬門によると、インタビューではよく「ペン入れが嫌い」や「ネームがしんどい」と言っているが、実際にはほぼ言わないという。 トーンについて 漫画作品では、あまりタッチをつけない均一な線が用いられており、デジタル作画を導入する前はスクリーントーンの使用が少なかった。前述のように鳥山は自身のことを非常に面倒臭がりだとしており、本人は「切ったり貼ったりするのが面倒だから、というより好きではない」と語っている。ただし、トーンが嫌いなわけではなく、むしろ使いたいとも述べていたこともあり、デジタル作画導入以降の作品ではトーン処理された画面が増えた。 ネームは描かない 一般的に漫画作品は、ネーム、下描き、ペン入れの工程を経て完成する。鳥山も初期はネームを作成した上で下描きをしていたが、その後はネームを描かずに、下描きから始める製作方法を取るようになった(『Dr.スランプ』の連載中期以降、それを逆手に取ったような描写も見られるようになる)。これは「3度も描くのが面倒」と、担当編集者の鳥嶋に進言したことによる。2代目担当編集者の近藤裕は「いきなり下描きが上がってくるから、描き直しをさせていいものかどうか」と、戸惑ったという。 CGによる制作 『ドラゴンボール』連載終了後にバンダイからMacをもらい、使い方を教えてもらったのをきっかけにデジタル制作を始め、以降は制作過程でCGを用いたものがかなりの割合を占めており、「パソコンが無ければ絵を描くのが完全に嫌になっていた」「よくパソコン塗りは味がないなんて言われるが、芸術作品を描いているわけでもないので」とのこと。デジタル化以降のカラーでは、特徴的であったメリハリの利いたアニメ絵のような塗り方から、境界を明確にしないグラデーション塗りに変わっている(特に陰影の塗り方に顕著)。ただしCGを用いるようになった後も『ネコマジン』などの漫画作品は以前と同様に原稿用紙にペン入れしてベタとトーンだけをPCで作業しており、ゲームのデザイン画やイラストを描くときのみペンタブレットを使用している。 模倣の難しさ とよたろうとの対談で、「鳥山先生の絵は、一見するとシンプルなので、連載当時に僕たち子供は描けるような気がしちゃったんですよね。でも実際に描いてみるともう何か、圧倒的にちがうんです。どうやっても『本物の悟空』にならない…」(とよたろう)「そうかもしれないですね。プロのアニメーターさんが描いても『ちょっとちがうかな〜』って思うことがあるくらい(笑)。僕のは線がシンプルだから、かえってむずかしいのかもしれませんね。自分しかわからない線っていうのがあるのかなあ」(鳥山明)と語っている。
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