作画班の体制
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作画監督には安藤雅司が起用された。安藤は『もののけ姫』で26歳にして作画監督に抜擢された。しかし、鈴木敏夫の回想によれば、『もののけ姫』の制作終了後、安藤は一度辞意を示しており、鈴木に慰留されていた。宮崎のアニメーションがキャラクターを理想化・デフォルメする傾向が強いのに対して、安藤はリアリズムを希求し、映像的な快楽を優先して正確さを犠牲にすることを許さなかった。両者の志向は対立していた。 通常のアニメ作品では、原画修正は作画監督が行い、監督は直接関与しない。しかし、宮崎駿監督作品の場合、宮崎がアニメーターの長として全体の作画作業を統括し、原画のデッサン・動き・コマ数などを先に描き直す。このため、作画監督の仕事は宮崎のラフな線を拾い直す作業が主となる。安藤は『もののけ姫』公開後のインタビューで、宮崎の作品では作画監督という肩書で仕事をしたくないと心情を語っている。そこで鈴木は、次回作では「芝居」についても安藤のやり方で制作していいと認めることにした。宮崎自身も、『もののけ姫』の制作で加齢による体力の低下を痛感し、すでに細かな作画修正作業を担いきれない段階にあると考え、作画の裁量を安藤に委ねる方針を取った。それだけでなく、演出を安藤に任せる案もあった。宮崎が絵コンテを描いた『耳をすませば』で近藤喜文が監督を担当した前例もあり、同様の制作体制が取られる可能性もあった。少なくとも『ゴチャガチャ通りのリナ』の段階では、演出を安藤に任せるつもりでいたという。しかし、当の安藤は宮崎の絵コンテで演出をするつもりはなく、結局は宮崎が監督することになった。 原画は過去最大規模の37人体制になった。しかし、当時ジブリ社内の原画陣は過去に例がないほど脆弱で、特に中堅のアニメーターの層が薄かった。これに加えて、フリーで活躍しているアニメーターを積極的に受け入れ、宮崎駿の中になかった表現を取り入れたいという安藤の意向もあり、大平晋也や山下明彦といった実力派のフリーアニメーターが参加した。 動画チェックチーフは舘野仁美。舘野は『となりのトトロ』から『風立ちぬ』までのすべての宮崎監督作で動画チェックを務めている。動画班は最終的に、国内スタッフが99人、韓国の外注スタッフが27人、計126人が動員された。
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