混合技法のすぐれた特性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/17 05:27 UTC 版)
「ヴィーナマールシューレ」の記事における「混合技法のすぐれた特性」の解説
絵画は生まれた瞬間から劣化が始まる。そのため、画家はみずから生み出したものが変色や劣化から免れるよう、堅牢性と非褪色性を実現する作画材料技術を生み出し、受け継いできた。初期フランドル派の画家ファン・アイク兄弟が15世紀に描いた作品等は、軟質樹脂の導入により、宝石のような艶やかなマティエールを保ち、褪色剥落を免れているようにみえる。 しかし19世紀の印象派の画家たちはつや消しの絵肌を好み、油絵具から油抜きをして描いた。その結果、作品の堅牢性や耐久性は著しく損なわれ、絵具の剥落が起きやすくなった。美術館での保存のためにはワニスが絵に施されなければならず、作者たちの望んだつや消しの効果は失われることになった。このように西欧の歴史の中で絵画技術の伝承は失われていく過程にあった。工房に弟子入りし親方から技術を学ぶことで脈々と伝えられてきた作画技術は、歴史の移り変わりの中で細ってゆき、印象派の時代にチューブ入りの絵具が市販されるにおよんで途絶えたといえる。 明治に本格的に始まる我が国の洋画導入の歴史を振り返れば、西欧において技法の失われゆく時代に始まると言っても過言ではない。それゆえ日本の画家たちは自ら手探りで作画を工夫せざるをえなかった。そんななかで、西欧において失われた絵画技術を発掘する試みが続けられ、1921年にマックス・デルナーによる「絵画技術体系」が発刊された。同書は絵画技術の規範としてひろく5カ国に翻訳された。続いて1959年にはレンヌ美術学校教授グザビエ・ド・ラングレの手によって「油彩画の技術」が出版された。マックス・デルナーの提唱した混合技法はファン・アイク兄弟の失われた作画方法に最も肉薄できる合理的方法として、パウル・クレー、ワシリー・カンディンスキー、オットー・ディクス、そしてウィーン幻想派の画家たち、さらにライプツィヒのテュプケなどに用いられ、その後も脈々と継がれた。 混合技法は絵画技法としては最も基本的なものといえるが、実際に制作するには慎重さと忍耐が要求される。マックス・デルナーはこう述べる。『混合技法は万能ではなく、きびしい訓練と、最終目的が見究められる明確な思考と、手仕事の秩序に従う綿密さが要求される』。そし てさらに絵を描く者一人ひとりが『みずからの目的に合わせ、変えていかなればならない」と。
※この「混合技法のすぐれた特性」の解説は、「ヴィーナマールシューレ」の解説の一部です。
「混合技法のすぐれた特性」を含む「ヴィーナマールシューレ」の記事については、「ヴィーナマールシューレ」の概要を参照ください。
- 混合技法のすぐれた特性のページへのリンク