中国ムスリムの食事の特徴
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/04 14:15 UTC 版)
「清真料理」の記事における「中国ムスリムの食事の特徴」の解説
家畜を殺すとき、また食物を加工するときは必ずイスラームの教えに従わなければならない。 豚肉を食べるのは禁忌である。ラードを含むような、豚を使った食品を口にすることも同様である。豚のほか、犬、肉食動物の肉、動物の血液も口にしない。 豚など、ハラム(タブー食材)を調理した調理器具や、ハラムを盛り付けた食器は使用しない。 アルコールを微量でも含む食材は使用しない。味噌や酢、醤油など、多くの発酵食品が該当する。(ただし、保存のために加えたアルコールでなく、発酵の過程で自然生成した微量のアルコールだけならハラル認証する国が増えたことに伴い、中国でも認める店が増えている。)(以上は中国に限らず、世界のムスリムの特徴でもある。) 基本的に飲酒は禁止されている。だが上海や北京などの大都市の一部の清真料理のレストランや軽食堂では規律が厳しくなく、漢族や外国人など、非イスラム教徒がアルコールを持ち込むことを黙認していたり、酒類そのものを扱っている店も少なくない。ビールテイスト飲料などノンアルコール飲料は公認している場合もあるが、これらも微量のアルコールを含むために禁止しているところもある。一般的に、大都市であっても青海省、甘粛省などの、戒律の厳しい地域の出身者が営業している店では、酒の扱いや酒の持込を禁じている場合が多い。 海鮮、魚介類に関しては地域や個人により禁忌の如何について意見が分かれる。遼寧省や広東省のような沿海地域の清真食堂では、魚の他、エビ、カニ、タコ、イカ、ナマコ、貝などもよく置かれている。一方で内陸部の清真食堂でそのような物が置かれている事は稀である。クルアーン食卓章96節において「海で漁撈し、また獲物を食べることは、あなたがたにも旅人にも許されている」とあるため、魚食文化のある沿岸部などの地域やそこで育った個人においては、おおよそ魚介類はハラールと解釈される。一方、内陸部出身のムスリムには文化的理由から魚介類を嫌悪する者もいる。また、一部の内陸部のムスリムには、預言者ムハンマドが魚を食べなかったと誤解しているものもあり(実際には、ハディースを調べると食べていることが分かる)、魚食が特に禁じられていなくとも預言者の慣行を重視するとして、魚介類を食べない根拠としているものもいる。これとは対照的に、ドバイをはじめとした多くの中東沿岸地域では、ムスリムの魚食は一般的なことである。 地域によっては昆虫などの小動物も食される。遼寧省では一般の食堂と同様、清真食堂にも蚕の蛹などが置かれている。広東省広州の大きな清真料理のレストランでは水生昆虫をはじめ、それこそ(ハラムにはならない範囲で)広州市の一般の食堂と変わらない多種多様な珍味が置かれている。 回民を含め、基本的に世界のムスリムの食習慣において、ある食べ物についてハラムかハラールかの判定に迷うということは、シャリーアの理屈の上ではありえない。なぜならシャリーアにおいてはハラム以外は全てハラールだからである。イスラームの食文化は決して、許可されたもの以外口にしてはいけないかのような、窮屈なものではない。そのため、上述のような多様な食文化が回民および世界のムスリムの間でも行われているのである。しかしそれは理屈の上でのことで、実際にはハラールの概念はより狭められている。法学派上の解釈の違いや、一部のイスラム学者の見解によってある食べ物がハラムと解釈されることがよくある。また地域の食文化、および個人の家庭の食習慣において食べられないものがハラムであると認識されていることもよくある。一例を挙げれば、ある大連市出身の回族の青年は、蟹を食べることは禁止であると認識していた。しかし実際には大連の回民の間でも蟹はよく食べられる食品である。家庭や周囲で蟹が食べられる事がなかったため、その青年はそれを回民の間での禁止と理解していたのであろう。いずれにしても食事は楽しみながら行うのが本来のあるべき形であるから、(たとえハラールであっても)一個人との間でハラムについて議論をしたり、不快感を与える食習慣を押し付けたりすべきではない。
※この「中国ムスリムの食事の特徴」の解説は、「清真料理」の解説の一部です。
「中国ムスリムの食事の特徴」を含む「清真料理」の記事については、「清真料理」の概要を参照ください。
- 中国ムスリムの食事の特徴のページへのリンク