ワフーの最期
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/29 16:52 UTC 版)
「ワフー (SS-238)」の記事における「ワフーの最期」の解説
過去3度の日本海への潜水艦侵入の報を受け、しかも崑崙丸撃沈、国会議員の殉職など目に見える被害が出たという事態を受けて津軽、宗谷両海峡付近の軍拠点である津軽要塞と宗谷臨時要塞は警戒を強化していた。10月7日には舞鶴鎮守府から「現ニ潜入中ノ敵潜ハ必滅シ生還セシメザル様此ノ際特ニ配慮アリ度(たし)」との通告も出された。しかし、10月9日にはソーフィッシュが宗谷海峡へ侵入し、下記の第十五号駆潜艇などが爆雷攻撃を行ったが逃がしてしまうという失態を犯し、もう失敗は許されない状態であった。 10月11日8時30分頃、往路と同じように、宗谷海峡を浮上突破しようとしたワフーは、宗谷臨時要塞の陸上砲台九六式十五糎加農砲の砲撃を受け潜航避退した。 9時20分、稚内基地(水偵基地)から飛び立ち哨戒していた大湊航空隊分遣隊の零式水上偵察機(オミ19号機)は、北緯45度40分 東経142度10分 / 北緯45.667度 東経142.167度 / 45.667; 142.167の宗谷岬の42度12海里の地点で潜航中のワフーを発見した。ワフーは油帯を引きつつ2ノットで航行中と判断された。 その後、同基地所属のオミ2号機(零式水上偵察機)、オミ20号機(九四式水上偵察機)も追跡および攻撃に加わり、大湊航空隊小樽派遣隊からオミ6号機(零式水上偵察機)、オミ12号機(零式水上偵察機)も応援に駆け付けた。 水上機の報告に接した宗谷防備部隊指揮官、大泊艦長の岡恒夫中佐は第15号駆潜艇および第43号駆潜艇、第23号掃海艇、第17号掃海特務艇、第18号掃海特務艇を水上偵察機の誘導のもと発見海域に急行させた。各艦艇が集結するまでの間、稚内派遣隊の3機と小樽派遣隊から2機の増援、更には樺太の大谷より陸軍飛行第38戦隊の司令部偵察機も飛来し偵察活動に加わった。 9時41分、水上偵察機が爆撃し、気泡と重油がわき上がる。 10時34分、再度の爆撃を実施。この後、誘導された駆潜艇が到着する。 12時3分、第15号駆潜艇が爆雷による攻撃を実施。 12時7分、再度、第15号駆潜艇が爆雷による攻撃を実施。3分と7分の攻撃では3度にわたる爆雷17発による実施。 12時21分、第43号駆潜艇が爆雷7発を投下する。一連の攻撃の結果、「潜水艦の航行が停止した」との報告があった。 13時30分、第18号掃海特務艇が現場海域に到着し、爆雷2発を投下する。 こうして、ワフーは午前と午後を通じて執拗な攻撃を受け、5時間にわたる戦闘の末に樺太留多加郡能登呂村二丈岩の200度7.5海里の地点で撃沈され、モートン中佐以下80名の乗組員は全員戦死した。日本側の対潜掃討は16時過ぎまで実施され、計63発の爆雷と爆弾40発がワフーの息の根を止めた。周辺海域には攻撃当日の夜間から翌10月12日に至っても、幅60メートル、長さ3海里の重油の帯がしばらく残っていた。21時、大湊警備府司令長官井上保雄中将からワフー撃沈に対する祝電が送られた。 なお、撃沈に関しては航空攻撃が最終成果であったにせよ海、陸軍に両軍の航空機を加えた共同作戦による成果である事に意義があった。また宗谷臨時要塞は、日本本土において対潜戦闘を実施した唯一の沿岸要塞となった。この撃沈により日本海北部にある期間安全が確保される事になり坂千秋北海道庁長官は早速慰問品を調達、トラックを仕立て稚内、宗谷所在の関係部隊に道民の感謝の気持ちとして贈っている。また、所有する土地や建物を水上偵察機部隊に提供していた西岡農場の主人(後の稚内市長)は撃沈の祝い品として牛2頭を提供し、将兵にふるまわれている。稚内市内からも戦闘の様子が一部観察でき、戦闘後に市内を訪れた兵士たちは市民より歓待を受けた。日本当局は「10月11日、我が軍の航空機が浮上中の敵潜水艦を発見、爆雷3発を投下して撃沈した」と事実とは異なる内容を報道し、アメリカ側はワフーの撃沈を確認した。 ワフーによる崑崙丸撃沈は関係者に衝撃を与え、関釜連絡船の夜行便を中止するなど影響を与えた。一方で、ワフーおよびモートン艦長の喪失はアメリカ海軍に大きな衝撃を与え、戦争末期の1945年6月のバーニー作戦で9隻を侵入させるまで、アメリカ潜水艦が日本海に侵入することはなかった。 ワフーは18隻の日本の艦艇および船舶を撃沈している。ワフーの戦績の多くは、その勇猛さによって名誉勲章に値する功績を挙げながら、上記のように3度目の哨戒において漂流する日本海軍兵士あるいはインド兵を機関銃で銃撃、殺害したためこれを逃したと言われるモートン少佐に艦長が交代してからのものである。その他、第二次世界大戦の戦功で、喪失するまでに6個の従軍星章を受賞している。
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