リパーゼ、インスリン、脂肪分解と脂肪蓄積とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > ウィキペディア小見出し辞書 > リパーゼ、インスリン、脂肪分解と脂肪蓄積の意味・解説 

リパーゼ、インスリン、脂肪分解と脂肪蓄積

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/28 04:37 UTC 版)

肥満」の記事における「リパーゼ、インスリン、脂肪分解と脂肪蓄積」の解説

1970年代初期マサチューセッツ大学ジョージ・ウェイド(George Wade)は、雌のラットから卵巣摘出し、そのラット行動観察し性ホルモン体重、および食欲の関係について研究始めた卵巣摘出されたラットは餌をがつがつ食べ始め瞬く間肥満になったラット過食し、その身体には過剰な脂肪蓄積した(第1の実験)。その後ウェイド卵巣摘出したラット厳格な食餌制限行った。このラット激し空腹覚えて何かを食べたくてたまらなくなったとしても、その衝動満たせない食餌制限実施した(第2の実験)。その結果ラット好きなだけ餌を与えられた時と同じくすみやかに肥満体になっただけであった。このラットは完全に動かなくなり食べ物を得る必要がある時にだけ、動くようになったラット卵巣摘出したことにより、ラット脂肪組織循環する血液から脂肪蓄えた一方自由に餌を食べることも許されない時、ラット使えるエネルギー少ない以上、消費エネルギー減らそうとしてその場じっとしたまま動かなくなった(第2の実験)。これについてウェイドは「ラット過食したから太ったではなく太りつつあるから過食した」と説明したラット卵巣摘出するというのは、卵巣から分泌される女性ホルモンエストロゲン(Estrogen)を除去することと同義である。卵巣摘出したラットエストロゲン注射したところ、このラットは餌をがつがつ食べることは無く肥満にもならなかった。卵巣摘出したラット過食する衝動駆られたのは、身体を動かすのに必要なカロリー脂肪細胞次々取り込んだことで、身体エネルギー不足に陥ったためである。脂肪細胞カロリー取り込んで隔離すればするほど、ラットエネルギー補給しようとして食べる量を増やす。だが、脂肪細胞カロリー取り込み続け限り、他の細胞行き渡らせるだけの十分なカロリー不足しラット太り飢え空腹満たせなければエネルギー消費を減らす(動かなくなる)ことで解決しようとする。 エストロゲンは、LPLLipoprotein Lipase, リポプロテイン・リパーゼ)という酵素に対して、ある働きかけを行う。LPLは、脂肪組織骨格筋心筋乳腺を含む多く末梢組織表面発現し血中流れ脂肪細胞内送り込む役割がある。LPL脂肪細胞表面発現している時、血中脂肪脂肪細胞取り込む一方LPL筋肉細胞発現している時、脂肪筋肉細胞取り込まれ筋肉はそれを燃料として消費するエストロゲンには、脂肪細胞にあるLPL活動抑制阻害する作用がある。細胞周辺エストロゲン増えると、LPL活性低下し脂肪蓄積されにくくなる逆に、このラット実験のように卵巣摘出することでエストロゲン分泌されなくなると、脂肪細胞におけるLPL活性化するLPLは、そこでいつもの仕事をする脂肪脂肪細胞取り込む)が、脂肪蓄積させる役割を持つLPL妨害するエストロゲンが無いために脂肪細胞には大量LPL発現し、そのせいで脂肪脂肪細胞次々取り込まれラット肥満体となったラットから卵巣摘出したことで、エストロゲン分泌されなくなりラット通常以上に太っていった。ヒトにおいても、卵巣摘出したあとや、閉経後の女性多く肥満になるが、その理由は、彼女ら体内エストロゲン分泌量が減り、その脂肪細胞LPL大量に発現するからである。 ラット肥満から解放する方法はただ1つエストロゲンラットに戻すことである。さすればラットは再び痩せるうえに、食欲食べる量も正常に戻る。動物たち食餌制限運動強いたところで無駄であり、彼らが肥満になるのを防ぐことはできない脂肪組織における脂肪蓄積減少には、インスリンのほかに、複数酵素複数ホルモンが関わっている。 ヒト含めたすべての生物は、エネルギー基質信号伝達前駆体として、脂肪酸(Fatty Acids)を燃料にしている。脂肪酸輸送および保存する際には、中性脂肪(Triglyceride)という分子の形で行われる。だが、中性脂肪そのまま大きさでは細胞膜通過できず、細胞への出入りが行われる際にはリパーゼ(Lipase)による作用分解されなければならない。この生化学的過程を「脂肪分解」(Lipolysis)と呼ぶ。膵臓から分泌される膵液には脂肪分解作用があり、これは食べ物含まれる脂肪分を腸が取り込む際に欠かせないのであるLPLは、体内脂肪蓄積脂肪分解制御する重要な酵素一種である。脂肪組織骨格筋心筋乳腺を含む多く末梢組織表面発現し血中から脂肪細胞内送り込む役割持ち、この酵素調節するのはインスリンである。インスリンは「脂肪代謝における主要な調節器」であり、同時にLPL活性化調節器でもあり、脂肪細胞におけるLPL活性化促すインスリン分泌されればされるほど脂肪細胞におけるLPL活性化はますます強まり血中から多く脂肪脂肪細胞流入していく。さらに、インスリン筋肉細胞におけるLPL抑制し、それによって筋肉脂肪酸燃料に使うこともできなくなる。脂肪細胞から脂肪酸放出されようという時にインスリン濃度高ければ、これらの脂肪酸筋肉細胞には取り込まれず、燃料として消費されることも無くインスリンによって脂肪細胞に再び押し戻される。 LPLは、脂肪細胞における脂肪蓄積に関わっている。肥満体においては、この酵素活性化が、肝臓における脂肪生成ならびに高インスリン血症増加関係している。炭水化物慢性的な消費が、この酵素活性化漸進的な上昇および脂肪細胞肥大促進することが分かっている。 脂肪細胞表面にあるLPL活性化失われ筋肉細胞表面にあるLPL活性化すると、蓄積した脂肪減少するヒト運動をしている間、LPL活性化脂肪細胞内で低下し筋肉細胞内活性化上昇する。これは脂肪細胞から脂肪放出されるのを促進し燃料を必要とする筋肉細胞消費される。しかし、運動終えた途端、この状況逆転する筋肉細胞におけるLPL活性化失われ脂肪細胞内のLPL活性化急上昇し脂肪細胞運動中に失われた脂肪補充しようとし、再び太る。これは、運動ヒト空腹にさせる理由でもある。運動終えると、筋肉はその補充修復のためにタンパク質を必要とするのに加えて脂肪補充積極的に行う。身体の他の部分は、運動によって身体から流出したエネルギー補充しようとし、その作用食欲が増す。 すなわち、運動をすると、その最中に少しは脂肪減りその分だけ痩せるが、運動終えた途端、(運動中に失われた分の脂肪が)またもや体内復活するようにできている。「運動をしても痩せない肥満防げいのはなぜか?」というのは、これで説明が付く。 男と女太り方がそれぞれ異なるのは、LPL分布異なり、それに付随して分泌されるホルモン影響それぞれ異なるためである。 ATGL(Adipose Triglyceride Lipase, 脂肪組織中性脂肪リパーゼ)は、脂肪細胞における脂肪分解律速酵素(Rate-Limiting Enzyme)である。脂肪分解過程触媒となる別の酵素としてHSLHormone Sensitive Lipase, ホルモン感受性リパーゼ)の存在があり、インスリンはこれらの酵素調節する。ATGLは、遊離脂肪酸(Free Fatty Acids)を除去してジアシルグリセロール(Diacylglycerol)を生成することで脂肪分解開始しHSLがそれを加水分解するグリセロール脂肪酸分解する)。 インスリンは、LPLだけでなく、HSLにも影響を及ぼすHSLは、脂肪細胞にて中性脂肪脂肪酸分解し、それが血液循環流れ出るよう促す。この時、脂肪細胞内の脂肪減少するHSL活性化高ければ高いほど、脂肪細胞からより多く脂肪酸放出され身体はそれを燃料にして消費し貯蔵されている脂肪の量が減っていく。インスリンはこのHSL働き抑制し脂肪細胞内の中性脂肪分解妨害し脂肪細胞からの脂肪酸流出最小限抑えるインスリンはほんのわずかな量でHSL働き抑制しインスリン濃度がわずかでも上昇すると、脂肪細胞内に脂肪蓄積していく。 HSLは、脂肪細胞における脂肪分解だけでなく、ステロイド産生精子形成にも関わる重要な酵素である。HSL欠損すると、脂肪組織萎縮炎症起こりインスリン抵抗性全身惹き起こされ脂肪肝発症促進する。 ATGLとHSL活性化は、絶食している時にWATWhite Adipose Tissue, 白色脂肪組織)で強力に上方調節された(有意増加した)。同時に血漿遊離脂肪酸比率増加し空腹時や絶食状態になると脂肪分解の上昇が確認された。 成長ホルモン(Growth Hormone)には、蓄積した脂肪減少促す作用がある。成長ホルモン中性脂肪分解刺激しLPL阻害することにより、体重と体脂肪減少促進されるHSL活性化は、体重減少伴って大幅に強化されるインスリンLPL活性化させ、HSL作用抑制するが、成長ホルモンインスリンによる脂肪生成作用低下させ、脂肪組織における脂肪貯蔵蓄積抑制阻害する。高脂肪食を組み合わせることで、中性脂肪数値改善されるインスリンを除く全てのホルモンHSL刺激することで中性脂肪分解促進するが、HSLインスリン感受性が非常に高くインスリンを除く全てのホルモンには、インスリンによる脂肪蓄積作用上回る力が無い。インスリン以外のホルモンによる脂肪細胞からの脂肪酸放出が可能となるのは、インスリン濃度が低い時だけである。 1965年医学物理学者のロザリン・サスマン・ヤロウ(Rosalyn Sussman Yalow)と、医師化学者のソロモン・アーロン・バーソン(en:Solomon Aaron Berson)の2人は、「脂肪脂肪細胞から放出させ、それをエネルギーにして消費する」ためには、「Requires only the negative stimulus of insulin deficiency.」(「『インスリン不足』という負の刺激以外は必要ない」)と明言した

※この「リパーゼ、インスリン、脂肪分解と脂肪蓄積」の解説は、「肥満」の解説の一部です。
「リパーゼ、インスリン、脂肪分解と脂肪蓄積」を含む「肥満」の記事については、「肥満」の概要を参照ください。


リパーゼ、インスリン、脂肪分解と脂肪蓄積

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/30 13:56 UTC 版)

ダイエット」の記事における「リパーゼ、インスリン、脂肪分解と脂肪蓄積」の解説

1970年代初期マサチューセッツ大学ジョージ・ウェイド(George Wade)は、雌のラットから卵巣摘出し、そのラット行動観察し性ホルモン体重、および食欲の関係について研究始めた卵巣摘出されたラットは餌をがつがつ食べ始め瞬く間肥満になったラット過食し、その身体には過剰な脂肪蓄積した(第1の実験)。その後ウェイド卵巣摘出したラット厳格な食餌制限行った。このラット激し空腹覚えて何かを食べたくてたまらなくなったとしても、その衝動満たせない食餌制限実施した(第2の実験)。その結果ラット好きなだけ餌を与えられた時と同じくすみやかに肥満体になっただけであった。このラットは完全に動かなくなり食べ物を得る必要がある時にだけ、動くようになったラット卵巣摘出したことにより、ラット脂肪組織循環する血液から脂肪蓄えた一方自由に餌を食べることも許されない時、ラット使えるエネルギー少ない以上、消費エネルギー減らそうとしてその場じっとしたまま動かなくなった(第2の実験)。これについてウェイドは「ラット過食したから太ったではなく太りつつあるから過食した」と説明したラット卵巣摘出するというのは、卵巣から分泌される女性ホルモンエストロゲン(Estrogen)を除去することと同義である。卵巣摘出したラットエストロゲン注射したところ、このラットは餌をがつがつ食べることは無く肥満にもならなかった。卵巣摘出したラット過食する衝動駆られたのは、身体を動かすのに必要なカロリー脂肪細胞次々取り込んだことで、身体エネルギー不足に陥ったためである。脂肪細胞カロリー取り込んで隔離すればするほど、ラットエネルギー補給しようとして食べる量を増やす。だが、脂肪細胞カロリー取り込み続け限り、他の細胞行き渡らせるだけの十分なカロリー不足しラット太り飢え空腹満たせなければエネルギー消費を減らす(動かなくなる)ことで解決しようとする。 エストロゲンは、LPLLipoprotein Lipase, リポプロテイン・リパーゼ)という酵素に対して、ある働きかけを行う。LPLは、脂肪組織骨格筋心筋乳腺を含む多く末梢組織表面発現し血中流れ脂肪細胞内送り込む役割がある。LPL脂肪細胞表面発現している時、血中脂肪脂肪細胞取り込む一方LPL筋肉細胞発現している時、脂肪筋肉細胞取り込まれ筋肉はそれを燃料として消費するエストロゲンには、脂肪細胞にあるLPL活動抑制阻害する作用がある。細胞周辺エストロゲン増えると、LPL活性低下し脂肪蓄積されにくくなる逆に、このラット実験のように卵巣摘出することでエストロゲン分泌されなくなると、脂肪細胞におけるLPL活性化するLPLは、そこでいつもの仕事をする脂肪脂肪細胞取り込む)が、脂肪蓄積させる役割を持つLPL妨害するエストロゲンが無いために脂肪細胞には大量LPL発現し、そのせいで脂肪脂肪細胞次々取り込まれラット肥満体となったラットから卵巣摘出したことで、エストロゲン分泌されなくなりラット通常以上に太っていった。ヒトにおいても、卵巣摘出したあとや、閉経後の女性多く肥満になるが、その理由は、彼女ら体内エストロゲン分泌量が減り、その脂肪細胞LPL大量に発現するからである。 ラット肥満から解放する方法はただ1つエストロゲンラットに戻すことである。さすればラットは再び痩せるうえに、食欲食べる量も正常に戻る。動物たち食餌制限運動強いたところで無駄であり、彼らが肥満になるのを防ぐことはできない脂肪組織における脂肪蓄積減少には、インスリンのほかに、複数酵素複数ホルモンが関わっている。 ヒト含めたすべての生物は、エネルギー基質信号伝達前駆体として、脂肪酸(Fatty Acids)を燃料にしている。脂肪酸輸送および保存する際には、中性脂肪(Triglyceride)という分子の形で行われる。だが、中性脂肪そのまま大きさでは細胞膜通過できず、細胞への出入りが行われる際にはリパーゼ(Lipase)による作用分解されなければならない。この生化学的過程を「脂肪分解」(Lipolysis)と呼ぶ。膵臓から分泌される膵液には脂肪分解作用があり、これは食べ物含まれる脂肪分を腸が取り込む際に欠かせないのであるLPLは、体内脂肪蓄積脂肪分解制御する重要な酵素一種である。脂肪組織骨格筋心筋乳腺を含む多く末梢組織表面発現し血中から脂肪細胞内送り込む役割持ち、この酵素調節するのはインスリンである。インスリンは「脂肪代謝における主要な調節器」であり、同時にLPL活性化調節器でもあり、脂肪細胞におけるLPL活性化促すインスリン分泌されればされるほど脂肪細胞におけるLPL活性化はますます強まり血中から多く脂肪脂肪細胞流入していく。さらに、インスリン筋肉細胞におけるLPL抑制し、それによって筋肉脂肪酸燃料に使うこともできなくなる。脂肪細胞から脂肪酸放出されようという時にインスリン濃度高ければ、これらの脂肪酸筋肉細胞には取り込まれず、燃料として消費されることも無くインスリンによって脂肪細胞に再び押し戻される。 LPLは、脂肪細胞における脂肪蓄積に関わっている。肥満体においては、この酵素活性化が、肝臓における脂肪生成ならびに高インスリン血症増加関係している。炭水化物慢性的な消費が、この酵素活性化漸進的な上昇および脂肪細胞肥大促進することが分かっている。 脂肪細胞表面にあるLPL活性化失われ筋肉細胞表面にあるLPL活性化すると、蓄積した脂肪減少するヒト運動をしている間、LPL活性化脂肪細胞内で低下し筋肉細胞内活性化上昇する。これは脂肪細胞から脂肪放出されるのを促進し燃料を必要とする筋肉細胞消費される。しかし、運動終えた途端、この状況逆転する筋肉細胞におけるLPL活性化失われ脂肪細胞内のLPL活性化急上昇し脂肪細胞運動中に失われた脂肪補充しようとし、再び太る。これは、運動ヒト空腹にさせる理由でもある。運動終えると、筋肉はその補充修復のためにタンパク質を必要とするのに加えて脂肪補充積極的に行う。身体の他の部分は、運動によって身体から流出したエネルギー補充しようとし、その作用食欲が増す。 すなわち、運動をすると、その最中に少しは脂肪減りその分だけ痩せるが、運動終えた途端、(運動中に失われた分の脂肪が)またもや体内復活するようにできている。「運動をしても痩せない肥満防げいのはなぜか?」というのは、これで説明が付く。 男と女太り方がそれぞれ異なるのは、LPL分布異なり、それに付随して分泌されるホルモン影響それぞれ異なるためである。 ATGL(Adipose Triglyceride Lipase, 脂肪組織中性脂肪リパーゼ)は、脂肪細胞における脂肪分解律速酵素(Rate-Limiting Enzyme)である。脂肪分解過程触媒となる別の酵素としてHSLHormone Sensitive Lipase, ホルモン感受性リパーゼ)の存在があり、インスリンはこれらの酵素調節する。ATGLは、遊離脂肪酸(Free Fatty Acids)を除去してジアシルグリセロール(Diacylglycerol)を生成することで脂肪分解開始しHSLがそれを加水分解するグリセロール脂肪酸分解する)。 インスリンは、LPLだけでなく、HSLにも影響を及ぼすHSLは、脂肪細胞にて中性脂肪脂肪酸分解し、それが血液循環流れ出るよう促す。この時、脂肪細胞内の脂肪減少するHSL活性化高ければ高いほど、脂肪細胞からより多く脂肪酸放出され身体はそれを燃料にして消費し貯蔵されている脂肪の量が減っていく。インスリンはこのHSL働き抑制し脂肪細胞内の中性脂肪分解妨害し脂肪細胞からの脂肪酸流出最小限抑えるインスリンはほんのわずかな量でHSL働き抑制しインスリン濃度がわずかでも上昇すると、脂肪細胞内に脂肪蓄積していく。 HSLは、脂肪細胞における脂肪分解だけでなく、ステロイド産生精子形成にも関わる重要な酵素である。HSL欠損すると、脂肪組織萎縮炎症起こりインスリン抵抗性全身惹き起こされ脂肪肝発症促進する。 ATGLとHSL活性化は、絶食している時にWATWhite Adipose Tissue, 白色脂肪組織)で強力に上方調節された(有意増加した)。同時に血漿遊離脂肪酸比率増加し空腹時や絶食状態になると脂肪分解の上昇が確認された。 成長ホルモン(Growth Hormone)には、蓄積した脂肪減少促す作用がある。成長ホルモン中性脂肪分解刺激しLPL阻害することにより、体重と体脂肪減少促進されるHSL活性化は、体重減少伴って大幅に強化されるインスリンLPL活性化させ、HSL作用抑制するが、成長ホルモンインスリンによる脂肪生成作用低下させ、脂肪組織における脂肪貯蔵蓄積抑制阻害する。高脂肪食を組み合わせることで、中性脂肪数値改善されるインスリンを除く全てのホルモンHSL刺激することで中性脂肪分解促進するが、HSLインスリン感受性が非常に高くインスリンを除く全てのホルモンには、インスリンによる脂肪蓄積作用上回る力が無い。インスリン以外のホルモンによる脂肪細胞からの脂肪酸放出が可能となるのは、インスリン濃度が低い時だけである。 1965年医学物理学者のロザリン・サスマン・ヤロウ(Rosalyn Sussman Yalow)と、医師化学者のソロモン・アーロン・バーソン(Solomon Aaron Berson)の2人は、「脂肪脂肪細胞から放出させ、それをエネルギーにして消費する」ためには、「Requires only the negative stimulus of insulin deficiency.」(「『インスリン不足』という負の刺激以外は必要ない」)と明言した

※この「リパーゼ、インスリン、脂肪分解と脂肪蓄積」の解説は、「ダイエット」の解説の一部です。
「リパーゼ、インスリン、脂肪分解と脂肪蓄積」を含む「ダイエット」の記事については、「ダイエット」の概要を参照ください。


リパーゼ、インスリン、脂肪分解と脂肪蓄積

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/07 21:46 UTC 版)

インスリン」の記事における「リパーゼ、インスリン、脂肪分解と脂肪蓄積」の解説

1970年代初期マサチューセッツ大学ジョージ・ウェイド(George Wade)は、雌のラットから卵巣摘出し、そのラット行動観察し性ホルモン体重、および食欲の関係について研究始めた卵巣摘出されたラットは餌をがつがつ食べ始め瞬く間肥満になったラット過食し、その身体には過剰な脂肪蓄積した(第1の実験)。その後ウェイド卵巣摘出したラット厳格な食餌制限行った。このラット激し空腹覚えて何かを食べたくてたまらなくなったとしても、その衝動満たせない食餌制限実施した(第2の実験)。その結果ラット好きなだけ餌を与えられた時と同じくすみやかに肥満体になっただけであった。このラットは完全に動かなくなり食べ物を得る必要がある時にだけ、動くようになったラット卵巣摘出したことにより、ラット脂肪組織循環する血液から脂肪蓄えた一方自由に餌を食べることも許されない時、ラット使えるエネルギー少ない以上、消費エネルギー減らそうとしてその場じっとしたまま動かなくなった(第2の実験)。これについてウェイドは「ラット過食したから太ったではなく太りつつあるから過食した」と説明したラット卵巣摘出するというのは、卵巣から分泌される女性ホルモンエストロゲン(Estrogen)を除去することと同義である。卵巣摘出したラットエストロゲン注射したところ、このラットは餌をがつがつ食べることは無く肥満にもならなかった。卵巣摘出したラット過食する衝動駆られたのは、身体を動かすのに必要なカロリー脂肪細胞次々取り込んだことで、身体エネルギー不足に陥ったためである。脂肪細胞カロリー取り込んで隔離すればするほど、ラットエネルギー補給しようとして食べる量を増やす。だが、脂肪細胞カロリー取り込み続け限り、他の細胞行き渡らせるだけの十分なカロリー不足しラット太り飢え空腹満たせなければエネルギー消費を減らす(動かなくなる)ことで解決しようとする。 エストロゲンは、LPLLipoprotein Lipase, リポプロテイン・リパーゼ)という酵素に対して、ある働きかけを行う。LPLは、脂肪組織骨格筋心筋乳腺を含む多く末梢組織表面発現し血中流れ脂肪細胞内送り込む役割がある。LPL脂肪細胞表面発現している時、血中脂肪脂肪細胞取り込む一方LPL筋肉細胞発現している時、脂肪筋肉細胞取り込まれ筋肉はそれを燃料として消費するエストロゲンには、脂肪細胞にあるLPL活動抑制阻害する作用がある。細胞周辺エストロゲン増えると、LPL活性低下し脂肪蓄積されにくくなる逆に、このラット実験のように卵巣摘出することでエストロゲン分泌されなくなると、脂肪細胞におけるLPL活性化するLPLは、そこでいつもの仕事をする脂肪脂肪細胞取り込む)が、脂肪蓄積させる役割を持つLPL妨害するエストロゲンが無いために脂肪細胞には大量LPL発現し、そのせいで脂肪脂肪細胞次々取り込まれラット肥満体となったラットから卵巣摘出したことで、エストロゲン分泌されなくなりラット通常以上に太っていった。ヒトにおいても、卵巣摘出したあとや、閉経後の女性多く肥満になるが、その理由は、彼女ら体内エストロゲン分泌量が減り、その脂肪細胞LPL大量に発現するからである。 ラット肥満から解放する方法はただ1つエストロゲンラットに戻すことである。さすればラットは再び痩せるうえに、食欲食べる量も正常に戻る。動物たち食餌制限運動強いたところで無駄であり、彼らが肥満になるのを防ぐことはできない脂肪組織における脂肪蓄積減少には、インスリンのほかに、複数酵素複数ホルモンが関わっている。 ヒト含めたすべての生物は、エネルギー基質信号伝達前駆体として、脂肪酸(Fatty Acids)を燃料にしている。脂肪酸輸送および保存する際には、中性脂肪(Triglyceride)という分子の形で行われる。だが、中性脂肪そのまま大きさでは細胞膜通過できず、細胞への出入りが行われる際にはリパーゼ(Lipase)による作用分解されなければならない。この生化学的過程を「脂肪分解」(Lipolysis)と呼ぶ。膵臓から分泌される膵液には脂肪分解作用があり、これは食べ物含まれる脂肪分を腸が取り込む際に欠かせないのであるLPLは、体内脂肪蓄積脂肪分解制御する重要な酵素一種である。脂肪組織骨格筋心筋乳腺を含む多く末梢組織表面発現し血中から脂肪細胞内送り込む役割持ち、この酵素調節するのはインスリンである。インスリンは「脂肪代謝における主要な調節器」であり、同時にLPL活性化調節器でもあり、脂肪細胞におけるLPL活性化促すインスリン分泌されればされるほど脂肪細胞におけるLPL活性化はますます強まり血中から多く脂肪脂肪細胞流入していく。さらに、インスリン筋肉細胞におけるLPL抑制し、それによって筋肉脂肪酸燃料に使うこともできなくなる。脂肪細胞から脂肪酸放出されようという時にインスリン濃度高ければ、これらの脂肪酸筋肉細胞には取り込まれず、燃料として消費されることも無くインスリンによって脂肪細胞に再び押し戻される。 LPLは、脂肪細胞における脂肪蓄積に関わっている。肥満体においては、この酵素活性化が、肝臓における脂肪生成ならびに高インスリン血症増加関係している。炭水化物慢性的な消費が、この酵素活性化漸進的な上昇および脂肪細胞肥大促進することが分かっている。 脂肪細胞表面にあるLPL活性化失われ筋肉細胞表面にあるLPL活性化すると、蓄積した脂肪減少するヒト運動をしている間、LPL活性化脂肪細胞内で低下し筋肉細胞内活性化上昇する。これは脂肪細胞から脂肪放出されるのを促進し燃料を必要とする筋肉細胞消費される。しかし、運動終えた途端、この状況逆転する筋肉細胞におけるLPL活性化失われ脂肪細胞内のLPL活性化急上昇し脂肪細胞運動中に失われた脂肪補充しようとし、再び太る。これは、運動ヒト空腹にさせる理由でもある。運動終えると、筋肉はその補充修復のためにタンパク質を必要とするのに加えて脂肪補充積極的に行う。身体の他の部分は、運動によって身体から流出したエネルギー補充しようとし、その作用食欲が増す。 すなわち、運動をすると、その最中に少しは脂肪減りその分だけ痩せるが、運動終えた途端、(運動中に失われた分の脂肪が)またもや体内復活するようにできている。「運動をしても痩せない肥満防げいのはなぜか?」というのは、これで説明が付く。 男と女太り方がそれぞれ異なるのは、LPL分布異なり、それに付随して分泌されるホルモン影響それぞれ異なるためである。 ATGL(Adipose Triglyceride Lipase, 脂肪組織中性脂肪リパーゼ)は、脂肪細胞における脂肪分解律速酵素(Rate-Limiting Enzyme)である。脂肪分解過程触媒となる別の酵素としてHSLHormone Sensitive Lipase, ホルモン感受性リパーゼ)の存在があり、インスリンはこれらの酵素調節する。ATGLは、遊離脂肪酸(Free Fatty Acids)を除去してジアシルグリセロール(Diacylglycerol)を生成することで脂肪分解開始しHSLがそれを加水分解するグリセロール脂肪酸分解する)。 インスリンは、LPLだけでなく、HSLにも影響を及ぼすHSLは、脂肪細胞にて中性脂肪脂肪酸分解し、それが血液循環流れ出るよう促す。この時、脂肪細胞内の脂肪減少するHSL活性化高ければ高いほど、脂肪細胞からより多く脂肪酸放出され身体はそれを燃料にして消費し貯蔵されている脂肪の量が減っていく。インスリンはこのHSL働き抑制し脂肪細胞内の中性脂肪分解妨害し脂肪細胞からの脂肪酸流出最小限抑えるインスリンはほんのわずかな量でHSL働き抑制しインスリン濃度がわずかでも上昇すると、脂肪細胞内に脂肪蓄積していく。 HSLは、脂肪細胞における脂肪分解だけでなく、ステロイド産生精子形成にも関わる重要な酵素である。HSL欠損すると、脂肪組織萎縮炎症起こりインスリン抵抗性全身惹き起こされ脂肪肝発症促進する。 ATGLとHSL活性化は、絶食している時にWATWhite Adipose Tissue, 白色脂肪組織)で強力に上方調節された(有意増加した)。同時に血漿遊離脂肪酸比率増加し空腹時や絶食状態になると脂肪分解の上昇が確認された。 成長ホルモン(Growth Hormone)には、蓄積した脂肪減少促す作用がある。成長ホルモン中性脂肪分解刺激しLPL阻害することにより、体重と体脂肪減少促進されるHSL活性化は、体重減少伴って大幅に強化されるインスリンLPL活性化させ、HSL作用抑制するが、成長ホルモンインスリンによる脂肪生成作用低下させ、脂肪組織における脂肪貯蔵蓄積抑制阻害する。高脂肪食を組み合わせることで、中性脂肪数値改善されるインスリンを除く全てのホルモンHSL刺激することで中性脂肪分解促進するが、HSLインスリン感受性が非常に高くインスリンを除く全てのホルモンには、インスリンによる脂肪蓄積作用上回る力が無い。インスリン以外のホルモンによる脂肪細胞からの脂肪酸放出が可能となるのは、インスリン濃度が低い時だけである。 1965年医学物理学者のロザリン・サスマン・ヤロウ( Rosalyn Sussman Yalow )と、医師化学者のソロモン・アーロン・バーソン( en:Solomon Aaron Berson )の2人は、「脂肪脂肪細胞から放出させ、それをエネルギーにして消費する」ためには、「Requires only the negative stimulus of insulin deficiency.」(「『インスリン不足』という負の刺激以外は必要ない」)と明言した

※この「リパーゼ、インスリン、脂肪分解と脂肪蓄積」の解説は、「インスリン」の解説の一部です。
「リパーゼ、インスリン、脂肪分解と脂肪蓄積」を含む「インスリン」の記事については、「インスリン」の概要を参照ください。


リパーゼ、インスリン、脂肪分解と脂肪蓄積

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/23 02:57 UTC 版)

アトキンスダイエット」の記事における「リパーゼ、インスリン、脂肪分解と脂肪蓄積」の解説

1970年代初期マサチューセッツ大学ジョージ・ウェイド(George Wade)は、雌のラットから卵巣摘出し、そのラット行動観察し性ホルモン体重、および食欲の関係について研究始めた卵巣摘出されたラットは餌をがつがつ食べ始め瞬く間肥満になったラット過食し、その身体には過剰な脂肪蓄積した(第1の実験)。その後ウェイド卵巣摘出したラット厳格な食餌制限行った。このラット激し空腹覚えて何かを食べたくてたまらなくなったとしても、その衝動満たせない食餌制限実施した(第2の実験)。その結果ラット好きなだけ餌を与えられた時と同じくすみやかに肥満体になっただけであった。このラットは完全に動かなくなり食べ物を得る必要がある時にだけ、動くようになったラット卵巣摘出したことにより、ラット脂肪組織循環する血液から脂肪蓄えた一方自由に餌を食べることも許されない時、ラット使えるエネルギー少ない以上、消費エネルギー減らそうとしてその場じっとしたまま動かなくなった(第2の実験)。これについてウェイドは「ラット過食したから太ったではなく太りつつあるから過食した」と説明したラット卵巣摘出するというのは、卵巣から分泌される女性ホルモンエストロゲン(Estrogen)を除去することと同義である。卵巣摘出したラットエストロゲン注射したところ、このラットは餌をがつがつ食べることは無く肥満にもならなかった。卵巣摘出したラット過食する衝動駆られたのは、身体を動かすのに必要なカロリー脂肪細胞次々取り込んだことで、身体エネルギー不足に陥ったためである。脂肪細胞カロリー取り込んで隔離すればするほど、ラットエネルギー補給しようとして食べる量を増やす。だが、脂肪細胞カロリー取り込み続け限り、他の細胞行き渡らせるだけの十分なカロリー不足しラット太り飢え空腹満たせなければエネルギー消費を減らす(動かなくなる)ことで解決しようとする。 エストロゲンは、LPLLipoprotein Lipase, リポプロテイン・リパーゼ)という酵素に対して、ある働きかけを行う。LPLは、脂肪組織骨格筋心筋乳腺を含む多く末梢組織表面発現し血中流れ脂肪細胞内送り込む役割がある。LPL脂肪細胞表面発現している時、血中脂肪脂肪細胞取り込む一方LPL筋肉細胞発現している時、脂肪筋肉細胞取り込まれ筋肉はそれを燃料として消費するエストロゲンには、脂肪細胞にあるLPL活動抑制阻害する作用がある。細胞周辺エストロゲン増えると、LPL活性低下し脂肪蓄積されにくくなる逆に、このラット実験のように卵巣摘出することでエストロゲン分泌されなくなると、脂肪細胞におけるLPL活性化するLPLは、そこでいつもの仕事をする脂肪脂肪細胞取り込む)が、脂肪蓄積させる役割を持つLPL妨害するエストロゲンが無いために脂肪細胞には大量LPL発現し、そのせいで脂肪脂肪細胞次々取り込まれラット肥満体となったラットから卵巣摘出したことで、エストロゲン分泌されなくなりラット通常以上に太っていった。ヒトにおいても、卵巣摘出したあとや、閉経後の女性多く肥満になるが、その理由は、彼女ら体内エストロゲン分泌量が減り、その脂肪細胞LPL大量に発現するからである。 ラット肥満から解放する方法はただ1つエストロゲンラットに戻すことである。さすればラットは再び痩せるうえに、食欲食べる量も正常に戻る。動物たち食餌制限運動強いたところで無駄であり、彼らが肥満になるのを防ぐことはできない脂肪組織における脂肪蓄積減少には、インスリンのほかに、複数酵素複数ホルモンが関わっている。 ヒト含めたすべての生物は、エネルギー基質信号伝達前駆体として、脂肪酸(Fatty Acids)を燃料にしている。脂肪酸輸送および保存する際には、中性脂肪(Triglyceride)という分子の形で行われる。だが、中性脂肪そのまま大きさでは細胞膜通過できず、細胞への出入りが行われる際にはリパーゼ(Lipase)による作用分解されなければならない。この生化学的過程を「脂肪分解」(Lipolysis)と呼ぶ。膵臓から分泌される膵液には脂肪分解作用があり、これは食べ物含まれる脂肪分を腸が取り込む際に欠かせないのであるLPLは、体内脂肪蓄積脂肪分解制御する重要な酵素一種である。脂肪組織骨格筋心筋乳腺を含む多く末梢組織表面発現し血中から脂肪細胞内送り込む役割持ち、この酵素調節するのはインスリンである。インスリンは「脂肪代謝における主要な調節器」であり、同時にLPL活性化調節器でもあり、脂肪細胞におけるLPL活性化促すインスリン分泌されればされるほど脂肪細胞におけるLPL活性化はますます強まり血中から多く脂肪脂肪細胞流入していく。さらに、インスリン筋肉細胞におけるLPL抑制し、それによって筋肉脂肪酸燃料に使うこともできなくなる。脂肪細胞から脂肪酸放出されようという時にインスリン濃度高ければ、これらの脂肪酸筋肉細胞には取り込まれず、燃料として消費されることも無くインスリンによって脂肪細胞に再び押し戻される。 LPLは、脂肪細胞における脂肪蓄積に関わっている。肥満体においては、この酵素活性化が、肝臓における脂肪生成ならびに高インスリン血症増加関係している。炭水化物慢性的な消費が、この酵素活性化漸進的な上昇および脂肪細胞肥大促進することが分かっている。 脂肪細胞表面にあるLPL活性化失われ筋肉細胞表面にあるLPL活性化すると、蓄積した脂肪減少するヒト運動をしている間、LPL活性化脂肪細胞内で低下し筋肉細胞内活性化上昇する。これは脂肪細胞から脂肪放出されるのを促進し燃料を必要とする筋肉細胞消費される。しかし、運動終えた途端、この状況逆転する筋肉細胞におけるLPL活性化失われ脂肪細胞内のLPL活性化急上昇し脂肪細胞運動中に失われた脂肪補充しようとし、再び太る。これは、運動ヒト空腹にさせる理由でもある。運動終えると、筋肉はその補充修復のためにタンパク質を必要とするのに加えて脂肪補充積極的に行う。身体の他の部分は、運動によって身体から流出したエネルギー補充しようとし、その作用食欲が増す。 すなわち、運動をすると、その最中に少しは脂肪減りその分だけ痩せるが、運動終えた途端、(運動中に失われた分の脂肪が)またもや体内復活するようにできている。「運動をしても痩せない肥満防げいのはなぜか?」というのは、これで説明が付く。 男と女太り方がそれぞれ異なるのは、LPL分布異なり、それに付随して分泌されるホルモン影響それぞれ異なるためである。 ATGL(Adipose Triglyceride Lipase, 脂肪組織中性脂肪リパーゼ)は、脂肪細胞における脂肪分解律速酵素(Rate-Limiting Enzyme)である。脂肪分解過程触媒となる別の酵素としてHSLHormone Sensitive Lipase, ホルモン感受性リパーゼ)の存在があり、インスリンはこれらの酵素調節する。ATGLは、遊離脂肪酸(Free Fatty Acids)を除去してジアシルグリセロール(Diacylglycerol)を生成することで脂肪分解開始しHSLがそれを加水分解するグリセロール脂肪酸分解する)。 インスリンは、LPLだけでなく、HSLにも影響を及ぼすHSLは、脂肪細胞にて中性脂肪脂肪酸分解し、それが血液循環流れ出るよう促す。この時、脂肪細胞内の脂肪減少するHSL活性化高ければ高いほど、脂肪細胞からより多く脂肪酸放出され身体はそれを燃料にして消費し貯蔵されている脂肪の量が減っていく。インスリンはこのHSL働き抑制し脂肪細胞内の中性脂肪分解妨害し脂肪細胞からの脂肪酸流出最小限抑えるインスリンはほんのわずかな量でHSL働き抑制しインスリン濃度がわずかでも上昇すると、脂肪細胞内に脂肪蓄積していく。 HSLは、脂肪細胞における脂肪分解だけでなく、ステロイド産生精子形成にも関わる重要な酵素である。HSL欠損すると、脂肪組織萎縮炎症起こりインスリン抵抗性全身惹き起こされ脂肪肝発症促進する。 ATGLとHSL活性化は、絶食している時にWATWhite Adipose Tissue, 白色脂肪組織)で強力に上方調節された(有意増加した)。同時に血漿遊離脂肪酸比率増加し空腹時や絶食状態になると脂肪分解の上昇が確認された。 成長ホルモン(Growth Hormone)には、蓄積した脂肪減少促す作用がある。成長ホルモン中性脂肪分解刺激しLPL阻害することにより、体重と体脂肪減少促進されるHSL活性化は、体重減少伴って大幅に強化されるインスリンLPL活性化させ、HSL作用抑制するが、成長ホルモンインスリンによる脂肪生成作用低下させ、脂肪組織における脂肪貯蔵蓄積抑制阻害する。高脂肪食を組み合わせることで、中性脂肪数値改善されるインスリンを除く全てのホルモンHSL刺激することで中性脂肪分解促進するが、HSLインスリン感受性が非常に高くインスリンを除く全てのホルモンには、インスリンによる脂肪蓄積作用上回る力が無い。インスリン以外のホルモンによる脂肪細胞からの脂肪酸放出が可能となるのは、インスリン濃度が低い時だけである。 1965年医学物理学者のロザリン・サスマン・ヤロウ( Rosalyn Sussman Yalow )と、医師化学者のソロモン・アーロン・バーソン( en:Solomon Aaron Berson )の2人は、「脂肪脂肪細胞から放出させ、それをエネルギーにして消費する」ためには、「Requires only the negative stimulus of insulin deficiency.」(「『インスリン不足』という負の刺激以外は必要ない」)と明言した

※この「リパーゼ、インスリン、脂肪分解と脂肪蓄積」の解説は、「アトキンスダイエット」の解説の一部です。
「リパーゼ、インスリン、脂肪分解と脂肪蓄積」を含む「アトキンスダイエット」の記事については、「アトキンスダイエット」の概要を参照ください。


リパーゼ、インスリン、脂肪分解と脂肪蓄積

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/13 14:59 UTC 版)

痩身」の記事における「リパーゼ、インスリン、脂肪分解と脂肪蓄積」の解説

1970年代初期マサチューセッツ大学ジョージ・ウェイド(George Wade)は、雌のラットから卵巣摘出し、そのラット行動観察し性ホルモン体重、および食欲の関係について研究始めた卵巣摘出されたラットは餌をがつがつ食べ始め瞬く間肥満になったラット過食し、その身体には過剰な脂肪蓄積した(第1の実験)。その後ウェイド卵巣摘出したラット厳格な食餌制限行った。このラット激し空腹覚えて何かを食べたくてたまらなくなったとしても、その衝動満たせない食餌制限実施した(第2の実験)。その結果ラット好きなだけ餌を与えられた時と同じくすみやかに肥満体になっただけであった。このラットは完全に動かなくなり食べ物を得る必要がある時にだけ、動くようになったラット卵巣摘出したことにより、ラット脂肪組織循環する血液から脂肪蓄えた一方自由に餌を食べることも許されない時、ラット使えるエネルギー少ない以上、消費エネルギー減らそうとしてその場じっとしたまま動かなくなった(第2の実験)。これについてウェイドは「ラット過食したから太ったではなく太りつつあるから過食した」と説明したラット卵巣摘出するというのは、卵巣から分泌される女性ホルモンエストロゲン(Estrogen)を除去することと同義である。卵巣摘出したラットエストロゲン注射したところ、このラットは餌をがつがつ食べることは無く肥満にもならなかった。卵巣摘出したラット過食する衝動駆られたのは、身体を動かすのに必要なカロリー脂肪細胞次々取り込んだことで、身体エネルギー不足に陥ったためである。脂肪細胞カロリー取り込んで隔離すればするほど、ラットエネルギー補給しようとして食べる量を増やす。だが、脂肪細胞カロリー取り込み続け限り、他の細胞行き渡らせるだけの十分なカロリー不足しラット太り飢え空腹満たせなければエネルギー消費を減らす(動かなくなる)ことで解決しようとする。 エストロゲンは、LPLLipoprotein Lipase, リポプロテイン・リパーゼ)という酵素に対して、ある働きかけを行う。LPLは、脂肪組織骨格筋心筋乳腺を含む多く末梢組織表面発現し血中流れ脂肪細胞内送り込む役割がある。LPL脂肪細胞表面発現している時、血中脂肪脂肪細胞取り込む一方LPL筋肉細胞発現している時、脂肪筋肉細胞取り込まれ筋肉はそれを燃料として消費するエストロゲンには、脂肪細胞にあるLPL活動抑制阻害する作用がある。細胞周辺エストロゲン増えると、LPL活性低下し脂肪蓄積されにくくなる逆に、このラット実験のように卵巣摘出することでエストロゲン分泌されなくなると、脂肪細胞におけるLPL活性化するLPLは、そこでいつもの仕事をする脂肪脂肪細胞取り込む)が、脂肪蓄積させる役割を持つLPL妨害するエストロゲンが無いために脂肪細胞には大量LPL発現し、そのせいで脂肪脂肪細胞次々取り込まれラット肥満体となったラットから卵巣摘出したことで、エストロゲン分泌されなくなりラット通常以上に太っていった。ヒトにおいても、卵巣摘出したあとや、閉経後の女性多く肥満になるが、その理由は、彼女ら体内エストロゲン分泌量が減り、その脂肪細胞LPL大量に発現するからである。 ラット肥満から解放する方法はただ1つエストロゲンラットに戻すことである。さすればラットは再び痩せるうえに、食欲食べる量も正常に戻る。動物たち食餌制限運動強いたところで無駄であり、彼らが肥満になるのを防ぐことはできない脂肪組織における脂肪蓄積減少には、インスリンのほかに、複数酵素複数ホルモンが関わっている。 ヒト含めたすべての生物は、エネルギー基質信号伝達前駆体として、脂肪酸(Fatty Acids)を燃料にしている。脂肪酸輸送および保存する際には、中性脂肪(Triglyceride)という分子の形で行われる。だが、中性脂肪そのまま大きさでは細胞膜通過できず、細胞への出入りが行われる際にはリパーゼ(Lipase)による作用分解されなければならない。この生化学的過程を「脂肪分解」(Lipolysis)と呼ぶ。膵臓から分泌される膵液には脂肪分解作用があり、これは食べ物含まれる脂肪分を腸が取り込む際に欠かせないのであるLPLは、体内脂肪蓄積脂肪分解制御する重要な酵素一種である。脂肪組織骨格筋心筋乳腺を含む多く末梢組織表面発現し血中から脂肪細胞内送り込む役割持ち、この酵素調節するのはインスリンである。インスリンは「脂肪代謝における主要な調節器」であり、同時にLPL活性化調節器でもあり、脂肪細胞におけるLPL活性化促すインスリン分泌されればされるほど脂肪細胞におけるLPL活性化はますます強まり血中から多く脂肪脂肪細胞流入していく。さらに、インスリン筋肉細胞におけるLPL抑制し、それによって筋肉脂肪酸燃料に使うこともできなくなる。脂肪細胞から脂肪酸放出されようという時にインスリン濃度高ければ、これらの脂肪酸筋肉細胞には取り込まれず、燃料として消費されることも無くインスリンによって脂肪細胞に再び押し戻される。 LPLは、脂肪細胞における脂肪蓄積に関わっている。肥満体においては、この酵素活性化が、肝臓における脂肪生成ならびに高インスリン血症増加関係している。炭水化物慢性的な消費が、この酵素活性化漸進的な上昇および脂肪細胞肥大促進することが分かっている。 脂肪細胞表面にあるLPL活性化失われ筋肉細胞表面にあるLPL活性化すると、蓄積した脂肪減少するヒト運動をしている間、LPL活性化脂肪細胞内で低下し筋肉細胞内活性化上昇する。これは脂肪細胞から脂肪放出されるのを促進し燃料を必要とする筋肉細胞消費される。しかし、運動終えた途端、この状況逆転する筋肉細胞におけるLPL活性化失われ脂肪細胞内のLPL活性化急上昇し脂肪細胞運動中に失われた脂肪補充しようとし、再び太る。これは、運動ヒト空腹にさせる理由でもある。運動終えると、筋肉はその補充修復のためにタンパク質を必要とするのに加えて脂肪補充積極的に行う。身体の他の部分は、運動によって身体から流出したエネルギー補充しようとし、その作用食欲が増す。 すなわち、運動をすると、その最中に少しは脂肪減りその分だけ痩せるが、運動終えた途端、(運動中に失われた分の脂肪が)またもや体内復活するようにできている。「運動をしても痩せない肥満防げいのはなぜか?」というのは、これで説明が付く。 男と女太り方がそれぞれ異なるのは、LPL分布異なり、それに付随して分泌されるホルモン影響それぞれ異なるためである。 ATGL(Adipose Triglyceride Lipase, 脂肪組織中性脂肪リパーゼ)は、脂肪細胞における脂肪分解律速酵素(Rate-Limiting Enzyme)である。脂肪分解過程触媒となる別の酵素としてHSLHormone Sensitive Lipase, ホルモン感受性リパーゼ)の存在があり、インスリンはこれらの酵素調節する。ATGLは、遊離脂肪酸(Free Fatty Acids)を除去してジアシルグリセロール(Diacylglycerol)を生成することで脂肪分解開始しHSLがそれを加水分解するグリセロール脂肪酸分解する)。 インスリンは、LPLだけでなく、HSLにも影響を及ぼすHSLは、脂肪細胞にて中性脂肪脂肪酸分解し、それが血液循環流れ出るよう促す。この時、脂肪細胞内の脂肪減少するHSL活性化高ければ高いほど、脂肪細胞からより多く脂肪酸放出され身体はそれを燃料にして消費し貯蔵されている脂肪の量が減っていく。インスリンはこのHSL働き抑制し脂肪細胞内の中性脂肪分解妨害し脂肪細胞からの脂肪酸流出最小限抑えるインスリンはほんのわずかな量でHSL働き抑制しインスリン濃度がわずかでも上昇すると、脂肪細胞内に脂肪蓄積していく。 HSLは、脂肪細胞における脂肪分解だけでなく、ステロイド産生精子形成にも関わる重要な酵素である。HSL欠損すると、脂肪組織萎縮炎症起こりインスリン抵抗性全身惹き起こされ脂肪肝発症促進する。 ATGLとHSL活性化は、絶食している時にWATWhite Adipose Tissue, 白色脂肪組織)で強力に上方調節された(有意増加した)。同時に血漿遊離脂肪酸比率増加し空腹時や絶食状態になると脂肪分解の上昇が確認された。 成長ホルモン(Growth Hormone)には、蓄積した脂肪減少促す作用がある。成長ホルモン中性脂肪分解刺激しLPL阻害することにより、体重と体脂肪減少促進されるHSL活性化は、体重減少伴って大幅に強化されるインスリンLPL活性化させ、HSL作用抑制するが、成長ホルモンインスリンによる脂肪生成作用低下させ、脂肪組織における脂肪貯蔵蓄積抑制阻害する。高脂肪食を組み合わせることで、中性脂肪数値改善されるインスリンを除く全てのホルモンHSL刺激することで中性脂肪分解促進するが、HSLインスリン感受性が非常に高くインスリンを除く全てのホルモンには、インスリンによる脂肪蓄積作用上回る力が無い。インスリン以外のホルモンによる脂肪細胞からの脂肪酸放出が可能となるのは、インスリン濃度が低い時だけである。 1965年医学物理学者のロザリン・サスマン・ヤロウ(Rosalyn Sussman Yalow)と、医師化学者のソロモン・アーロン・バーソン(en:Solomon Aaron Berson)の2人は、「脂肪脂肪細胞から放出させ、それをエネルギーにして消費する」ためには、「Requires only the negative stimulus of insulin deficiency.」(「『インスリン不足』という負の刺激以外は必要ない」)と明言した

※この「リパーゼ、インスリン、脂肪分解と脂肪蓄積」の解説は、「痩身」の解説の一部です。
「リパーゼ、インスリン、脂肪分解と脂肪蓄積」を含む「痩身」の記事については、「痩身」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「リパーゼ、インスリン、脂肪分解と脂肪蓄積」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ


このページでは「ウィキペディア小見出し辞書」からリパーゼ、インスリン、脂肪分解と脂肪蓄積を検索した結果を表示しています。
Weblioに収録されているすべての辞書からリパーゼ、インスリン、脂肪分解と脂肪蓄積を検索する場合は、下記のリンクをクリックしてください。
 全ての辞書からリパーゼ、インスリン、脂肪分解と脂肪蓄積 を検索

英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

リパーゼ、インスリン、脂肪分解と脂肪蓄積のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



リパーゼ、インスリン、脂肪分解と脂肪蓄積のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの肥満 (改訂履歴)、ダイエット (改訂履歴)、インスリン (改訂履歴)、アトキンスダイエット (改訂履歴)、痩身 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS