ジアシルグリセロール
ジアシルグリセロール
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/01 06:18 UTC 版)

ジアシルグリセロール(英: diacylglycerol、DG、DAG)とは、グリセリンに2つの脂肪酸がエステル結合を介して結合した分子である。略称してDGまたはDAGと表し、別名をジグリセリドともいう。右の図は1-パルミトイル-2-オレイル-グリセロールであるが、ジアシルグリセロールにはC1位とC2位の脂肪酸の選び方によって多くの種類がある。
食品添加物
モノアシルグリセロール(Monoacylglycerol)もしくはジアシルグリセロールは油や水などの原料とともによく食品添加物(乳化剤)として用いられる[1]。
商業的には牛や豚、もしくは大豆やセイヨウアブラナ(キャノーラ)などの植物から作られる。また化学合成によっても作られる。パン、ジュース、アイスクリーム、ショートニング、生クリーム、マーガリン、菓子などに良く用いられる。
かつて、ジアシルグリセロールを80%含有し、食後の血中中性脂肪が上昇しにくいことを売りとし、特定保健用食品の許可を得た食用油「健康エコナクッキングオイル」が花王より販売されていた。しかし、発がん性リスクのあるグリシドールに変換する可能性があるグリシドール脂肪酸エステルが他の食用油より多く含まれていることが判明し、花王は2009年9月に「エコナ関連製品」の製造・販売を自粛した。[2]
生化学シグナル

1,2-sn-ジアシルグリセロールは、イノシトールトリスリン酸(IP3)とともにホスホリパーゼCによるシグナルのセカンドメッセンジャーとして働く。IP3が原形質中に拡散してしまうのに対して、ジアシルグリセロールは疎水性のために細胞膜上に留まることができる。またIP3は滑面小胞体からカルシウムイオンをリリースするのに対して、ジアシルグリセロールは膜上でプロテインキナーゼCを活性化させる。典型プロテインキナーゼCアイソザイムは、IP3によって濃度が上昇する原形質中のカルシウムイオンによっても活性化を受ける。12-O-テトラデカノイルホルボール 13-アセタート (TPA) などのホルボールエステルは1,2-sn-ジアシルグリセロールのミミックとして働き、同様の作用を示す。
その他の生化学的機能
ジアシルグリセロールは細胞中で様々な機能を持つ。
代謝

ジアシルグリセロールの合成はジヒドロキシアセトンリン酸に由来するグリセロール3-リン酸が出発となる。グリセロール3-リン酸はまずアシルCoAによりアシル化を受けてリゾホスファチジン酸になる。その後別のアシルCoAが付加し、ホスファチジン酸となり、脱リン酸化されてジアシルグリセロールができる。
ジアシルグリセロールに、ジグリセリドアシルトランスフェラーゼが作用してさらに1分子の脂肪酸が付加し、トリアシルグリセロールとなることがある。
ジアシルグリセロールはホスファチジン酸を経由して作られるため、飽和脂肪酸がC1位に、不飽和脂肪酸がC2位にくる[3]。
脚注
- ^ 大橋きょう子、島田淳子、濃厚な水中油滴型エマルションの系におけるジアシルグリセロールの乳化特性 日本調理科学会誌 Vol.35 (2002) No.2 p.132-138, doi:10.11402/cookeryscience1995.35.2_132
- ^ “エコナに関するご報告”. 花王株式会社. 2024年5月1日閲覧。
- ^ Berg J, Tymoczko JL, Stryer L (2006). Biochemistry (6th ed. ed.). San Francisco: W. H. Freeman. ISBN 0716787245
関連項目
外部リンク
- ジアシルグリセロール - 素材情報データベース<有効性情報>(国立健康・栄養研究所)
ジアシルグリセロール
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/03 10:25 UTC 版)
平成15年度に厚生労働省が行った厚生労働科学特別研究において、ジアシルグリセロールを与えた、がんの発生確率を高位に遺伝子を組み換えた雄の遺伝子組み換えラットの舌で、発がんプロモーション作用が示唆された。雌の遺伝子組み換えラット及び遺伝子組み替えを行っていないラットでは、発がんプロモーション作用は認められなかった。食品安全委員会は、厚生労働省から依頼を受け、食品健康影響評価の追加試験を行った。 厚生労働省では、特定保健用食品の許可にあたっての安全性の審査は妥当であり、健康上の問題はないとした。 その後、食品安全委員会の調査会で発がんプロモーション作用について審議が進められている。高濃度での試験において皮膚に対するプロモーション作用は認められるが、「適切に摂取される限りにおいては、安全性に問題ないと判断した」との中間結論の方向が2009年2月に出された。しかし、それぞれの実験報告の中で「安全」あるいはその根拠が薄く、安全であると結論する根拠は見あたらないとのコメントも提出されており、中間とりまとめ文書は最終化にいたっていない。
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ジアシルグリセロールと同じ種類の言葉
アルコールに関連する言葉 | コリン サリチルアルコール ジアシルグリセロール ジアセトンアルコール シアノヒドリン |
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