ホイール・アライメントの最適化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/10 03:54 UTC 版)
「ラジドリ」の記事における「ホイール・アライメントの最適化」の解説
切れ角アップ 実車のドリフトと異なり、ラジドリ(RWD)の場合後輪のグリップが極端に小さい。その為、ドリフト中前輪に制動が掛かると簡単にリヤが流れて車が巻いて(=スピンして)しまう。ドリフト走行時に車体に角度を付けると更にその傾向が強くなり、ステアリングの切れ角を大きくして前輪が転がって抵抗にならないようにする必要がある。このステアリングの切れる量を増やす改造を切れ角アップという。切れ角アップのための専用パーツを使用するか、Cハブやナックルを削るなど加工をすることで可能となる。ただしフロントのドライブシャフトの限界角以上は切れないため、切れ角を純正品より増やした切れ角アップ対応ユニバーサルシャフトなども発売されている。下記は主にフロントアームやナックルの加工で作用範囲を増やす改造方法だが、全ての改造の基本として前輪の可動範囲の拡張(ステアリングワイパーやナックル等ステアリング機構の変更・プロポで変更できる場合は設定変更も含む) サーボホーンを延長(支点からの半径を大きくする=物理的な作動距離が伸びる) 以上の改造を施してステアリングの切れ角を増さなければならない。 Aアーム化(C脚化) GPラジコンカーや1/12EPカーの多くに採用されているAアームタイプのサスペンションを使用する手法。上記切れ角アップに際し、従来のEPラジコンカーの多くに採用されているCハブタイプのサスペンションでは構造がネックとなり切れ角に限界があった。そこでCハブが無い実車同様のピロボール支持タイプのサスペンションにすることで切れ角の限界を増やす改造が施される。構造上アーム長を長くすることが可能になるためトレッド幅の変更が容易になり、Cハブの省略でステアリングナックルのキャスター角がアッパーアームで自由に変更できる。特に前輪の転がり抵抗を極限に減らし切れ角が必要な2駆ドリでは必須の改造となる。ドリラジでのAアーム採用は、大手メーカーであるヨコモから発売されたAアーム採用型のドリフトパッケージタイプCが最初であった。そのためAアーム化はC脚化とも呼ばれる。ドリラジにAアーム化を施す際、従来はドリフトパッケージタイプCのパーツを流用する事が多かったが、近年ではサードパーティからAアーム化キットやパーツが発売されている。しかしAアーム化キットが使用出来るシャーシや純正採用シャーシは極一部に限られ、多くのシャーシでは自己流や自作による改造が必要であり改造手法としては難易度が高く、初心者~中級者は手にしにくい。RWD車では最初からAアーム化されて販売されているシャーシが殆どである。 ナロースクラブ化 ステアリングナックルの上下キングピンを繋ぐ延長線の接地点とホイールの中心線の接地点までの距離をスクラブ半径と呼ぶ。オフセットの多いホイールなど使用しスクラブ半径が多くなった場合、ステアリングを切るとタイヤが前後に大きく移動する。そのため実車同様の動き(リアル)を主体とするドリラジにおいては大変見栄えが悪く、またタイヤの移動量が多いためボディやシャーシにタイヤが干渉したり、シャーシとタイヤの位置関係(ジオメトリー)が変化することによるコントロールのし難さなどの問題があった。そこで、上記Aアーム化を施しサスペンションアームを延長、オフセットの小さいホイールや小型のステアリングナックルを使用することでスクラブ半径を限りなく0に近づける改造が施され、ナロースクラブ化と呼ばれるようになった。ただしナロースクラブという手法はサスペンション構造の全面的な改造やパーツ購入による資金投入が必要なため一般には上級者向けの改造となる。 ポジキャン ステアリングを切った方向側のタイヤが、タイヤトレッド側から見てポジティブ側に角度が付いている状態を示す。通常のキャンバーにおけるネガティブキャンバー・ポジティブキャンバーとは違う。実車と同等の見た目を狙った改造であり、セッティングよりもリアリティを求める部分が大きい。改造法としては、Aアーム化によるアッパーアームの後退またはロワアーム前進によるキャスター角の付与やポジキャンになるように作られたナックルなどの専用パーツを使用する。ポジキャンが比較的普及した現在では大キャスター角+キングピンアングル(後述)の付与が主流である。ただし一般的には走りにくくなるため、ある程度の操縦テクニックが必要となる。 キングピンアングル・トレール Cハブタイプのサスペンションは一部製品を除き、キングピンを繋ぐ線とホイールの中心線が並行であった。しかし実車ではキングピンを繋ぐ線(キングピンアングル)は傾斜しており、ステアリングを切るとポジキャンとなる。そこでドリラジで実車同様の動きを再現するためキングピンのアングルを傾斜させる改造が施されるようになった。改造法としては、ポジキャンになるように作られた専用パーツ(主にナックル)を使用し、一般的にはAアーム化が必要となる。トレールとは、4WD車のナックルではアクスルとほぼ同一線上についていたキングピンの取り付けをアッパー側を後ろ(及びロア側を前)にずらしたもので、本来は直進安定性のために付けるものだったが、二駆ドリでカウンター時に大きな舵角になるとキャスター・キングピンアングル・トレールの角度の効果によってより前輪が安定して転がるようになった。だが、キングピンアングルの傾斜によってタイヤの角が抵抗になる現象は変わらず、キャンバーの変更や角の丸いタイヤの変更などで解消する必要がある。 アッカーマン 実車やレース用ラジコンではステアリングを切ったときに左右のタイヤで内輪差が生まれるため、その抵抗を少なくするアッカーマンステアリングと呼ばれる角度がステアリングに施されている。ドリフト走行においてはアッカーマンステアリングが逆に抵抗や挙動の乱れにつながるため、アッカーマンステアリングを意図的に無くした「アッカーマン0」という改造が存在する。あくまでもドリフト走行時のみ有効に働くものであり、特にカウンターステアを多用するケツカキに対して有効なものである。ただし等速やカウンターを多用しない走行では必要性は低く、またケツカキにおいても必ずしも必要なものではない。フロントタイヤの動きがドリフトコントロールの要である二駆ドリではアッカーマンの調整は必然で、アッカーマンが正しく調整されていないと容易にスピンを起こしたり、走りにくい等の要因となる。主に何も操作していないニュートラル状態~常用域~フルにステアを切った状態でそれぞれ調整を行う。理想的には左右輪が全て同じ角度の回転(パラレル)よりも、ステアを切っていくごとに少しずつトーアウトになる状態(内切れ)が良いとされるが、個人の好みやマシンの特性、コースなどでその調整具合は異なる。RWD車のアッカーマンを調整するための機構もメーカーによって様々だが、旧来からのステアリングワイパーの形状変更(及びセンターリンクのターンバックル化)のほか、平行または湾曲した「ラック」と呼ばれる長方体のパーツをベアリング等でスライドさせる、所謂「スライドラック機構」を2014年頃から採用しているシャーシもある。 鬼キャン 実車の改造と同じようにタイヤに極端なネガティブキャンバーを付けることを言う。単に見た目を好む場合や、セッティングの結果として鬼キャンになる場合があり少なからずセッティングとしての要素も見られる。またタイヤそのものがテーパー状でキャンバーを多く付けた場合にも接地面積が減らないよう工夫されたタイヤも存在する。キャンバーを付ける場合はアッパーアーム(ターンバックル)を短くすることで可能となるが、ドライブシャフトの長さがネックとなりキャンバーが多くつけられない場合あるのでドライブシャフトを短くするなどの工夫も必要になる。一部安価なシャーシはアッパーアームが非調整式なため、調整式のものに変更するなどの必要性がある。
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