ヘーシュリッヒ・エンチェンの同盟領単艦潜入
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「銀河英雄伝説の戦役」の記事における「ヘーシュリッヒ・エンチェンの同盟領単艦潜入」の解説
OVA版オリジナルエピソード(「外伝・奪還者」)。 宇宙暦792年/帝国暦483年12月~翌年1月。ラインハルトが指揮する巡航艦ヘーシュリッヒ・エンチェンによる同盟領への単独潜入とそれに関連した戦闘。 巡航艦にはラインハルトが艦長(中佐)、キルヒアイスは保安主任(中尉)として乗り込んでいた。また、ワーレン少佐が副長として乗り込んでおり、作品の中で間接的に登場したミュラー中尉やアイゼナッハ少佐とともに、ラインハルトの知遇を得る機会として描かれている。 12月、平時の無聊を解消すべく猛訓練に励み、自らも白兵戦訓練に参加していたラインハルトに、上官のレンネンカンプ大佐が、機密保持の誓約書までついた特務の話を持ちかけてきた。その大佐を通じて紹介された統帥本部作戦3課のアーベントロート少将から説明された特務の内容は、先の決闘事件で敵対したヘルクスハイマー伯爵がその後失脚し、軍事機密である指向性ゼッフル粒子発生装置の試作機を携えて同盟に亡命を企図しているので、密かに同盟領に潜入して先回りし、伯爵の亡命の阻止と装置の奪回ないしは船を撃沈する、というものであった。任務の困難さと機密の保持という特殊な条件、また軍歴に残らない点からラインハルトには拒否する権利も与えられたが、いかなる戦いも負けない退かない投げ出さないことを身上とするラインハルトは命令を受諾した。なお、この作戦には統帥本部から派遣されてきたフォン・ベンドリング少佐が監察官として同行した。 命令を受けた翌日、ヘーシュリッヒ・エンチェンは訓練という名目でイゼルローン要塞を進発、回廊の同盟側出口付近で、既に知らされていたキルヒアイス以外の乗組員に事情が伝えられた。その直後、ラインハルトは同盟の哨戒部隊をおびき寄せて帝国の哨戒部隊と戦わせ、その隙に同盟領への侵入を果たすと、ベンドリングの情報をもとに辺境空域を大きく迂回してフェザーン回廊の出入り口まで進み、そこでフェザーンの駐在武官ミュラーからの情報を受けてヘルクスハイマー伯爵の船を追跡し、同行している護衛艦を撃沈した上で伯爵の船にキルヒアイス指揮下の陸戦隊が突入し、白兵戦の末の船を制圧、さらに船倉で装置を発見した。だが、伯爵とその一族は脱出ポッドの事故により死亡、唯一、伯爵の娘であるマルガレーテという10歳の少女だけが生き残った。 指向性ゼッフル粒子発生装置の制御コンピューターにはプロテクトがかけられており、通常のゼッフル粒子の発生以外は、指向性の制御もデータの閲覧も装置の移動も不可能だった。キルヒアイスとベンドリングは、プロテクトの解除方法を知っていると思われるマルガレーテからそれを聞き出そうと試みるが、父親の仇扱いされて協力は得られなかった。やむなく伯爵の船ごと同行させるが、途中で同盟の追跡部隊と遭遇してしまう。ラインハルトは追いすがる同盟軍巡航艦と激しいチェイスをしながら、通常型のゼッフル粒子で大爆発を起こして追跡部隊を撃退した。しかしそれによって包囲網は着実に狭まり、当初予定していた航路は完全に封鎖されてしまった。 ラインハルトが脱出方法を模索している間に、キルヒアイスはマルガレーテの心を解きほぐし、ようやく警戒を解いた。その時、マルガレーテは亡命の真相に繋がる話をキルヒアイスとベンドリングに告げ、この時のベンドリングの態度にキルヒアイスが疑念を抱いた。一方、フェザーンの駐在武官から新しい航路案と補給計画が示された。この時キルヒアイスがマルガレータとベンドリングの現状をラインハルトに伝えた上で、マルガレーテとの取引を提案した。熟考の末、他に選択肢が無いと結論したラインハルトはマルガレーテと取引し、伯爵の船や財産と共に同盟への亡命を認めることを条件にプロテクト解除方法を入手した。 そして開示されたデータの中には、ブラウンシュヴァイク公爵家を探っていたヘルクスハイマー伯爵の一族がリッテンハイム侯爵に狙われた経緯と、その大元になった「ブラウンシュヴァイク公爵の娘エリザベートが遺伝病持ちである」という情報が含まれていた。皇位継承権第一位のあるエリザベートが遺伝病持ちであれば、皇位が継げなくなるばかりか、ブラウンシュヴァイク公爵家もただではすまない。だがリッテンハイム侯爵の娘で第二の皇位継承者であるサビーネは、エリザベートとは母親が姉妹同士の従姉妹であった。つまりサビーネの母、そしてサビーネ自身もまた同じ血統、同じ病気持ちだという可能性があるだけでも皇位が継げなくなるばかりか、リッテンハイム侯爵家も危機にさらされてしまう。余計なことを知りすぎてしまったヘルクスハイマーは命を狙われ、巻き添えで妻を消され、一族を引きつれて帝国から夜逃げするしかなかったのであった。実はベンドリングはこのデータの奪取ないしは消去を真の目的として同行していたが、その内容と貴族の身勝手さにショックを受け、任務の放棄とマルガレーテの保護者として一緒に亡命する旨をラインハルトに告げた。彼の態度にある程度の納得を感じたラインハルトはこれを許可し、装置をヘーシュリッヒ・エンチェンに移設した後、伯爵の船を解放、マルガレーテやベンドリングと別れてイゼルローン回廊に向った。 回廊付近で待ち伏せしていた同盟の部隊中央部を指向性ゼッフル粒子で撃破したヘーシュリッヒ・エンチェンは、回廊への突入を果たしたが、その時点でエネルギーが尽きた。慣性航行を続けながら機雷で相手の追撃を振り切ろうとしていたところに、ようやく帝国の補給艦と接触したが護衛艦を伴わずただちに補給を受けることは不可能に近かった。ところが補給艦から物資を宙に放出してヘーシュリッヒ・エンチェンに受け取らせるという補給方法が提案され、奇抜だが理に適っていると判断したラインハルトはその方法を受諾、物資の回収とエネルギーの補給に成功し同盟の追跡部隊を振り切った。なお、この時にワーレンが、補給艦の艦長が「沈黙艦長」と異名をとるアイゼナッハ少佐であるとラインハルトに告げている。イゼルローン要塞に帰還したラインハルトはすぐにアーベントロート少将の元に出頭し、任務の報告とともに、任務とは別に知りえた裏の事情を承知している事を告げ、これを伏せておく事と引き換えに自身とキルヒアイスの昇進を約束させた。 なお、この任務は極秘任務であるため戦歴には残らず、昇進も理由付けのため17歳の誕生日を待っての事となる。また、この作戦の中で指向性ゼッフル粒子を初めて使用したが、公式記録では3年後のアムリッツア会戦となっている(OVA版ではこの間のカストロプ動乱においても使用されている)。
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