ブームの終焉〜2ちゃんねる開設
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「鬼畜系」の記事における「ブームの終焉〜2ちゃんねる開設」の解説
1997年には『危ない1号』『週刊マーダー・ケースブック』愛読者の酒鬼薔薇聖斗が神戸連続児童殺傷事件を起こし、悪趣味系のサブカルチャー書籍を棚から撤去する書店が続々と現れた。1999年5月には「ハッキングから今晩のおかずまで」を手広くカバーする日本最大級の匿名掲示板「2ちゃんねる」が西村博之によって開設され、鬼畜系のシーンは出版文化からインターネットに移行・拡散する形で消滅した。時期を同じくして鬼畜系/悪趣味系に属するサブカルチャー雑誌の廃刊や路線変更が相次ぎ、1999年の『危ない28号』廃刊をもって悪趣味ブームは完全に終焉を迎えた。 『ニッポン戦後サブカルチャー史』(Eテレ)の講師である宮沢章夫は『危ない1号』以降の青山正明の迷走について次のように述べている。 おそらく『危ない1号』において青山が発したメッセージの「良識なんて糞食らえ!」にしろ「鬼畜」という概念にしろ「妄想にタブーなし!」にしろ、すべて「冗談」という、かなり高度な部分におけるある種の「遊び」だったはずだ。しかし、良識派に顰蹙をかうのは想定内だっただろうが、一方で冗談が理解できずにまともに受け止めた層が出現したのは想定外だったということか。2ちゃんねる(のごく一部)、ネットにおけるある種の層に直線的に浸透し、しかも、遊びではなく本気でそれをする者らが現れたと。 村崎百郎の師匠筋にあたるペヨトル工房主宰者の今野裕一も村崎百郎の存在意義が2ちゃんねるの台頭により喪失したことを次のように指摘した。 あの頃、ああいう悪意というものの存在を世の中にリードするような位置に彼(村崎百郎:引用者注)はいたんだと思う。彼が出てきてから数年後に2ちゃんねるのような剥き出しの悪意がそのまま出てくるメディアが現れる。この現状は、彼をものすごく書きにくくさせてたんじゃないかと思う。その意味で、もう村崎百郎の仕事は一旦区切りをつけて、新しい仕事に移行しなきゃいけなかった……違う形で脱皮して、あいつの書く姿勢が変わってくればよかったんだけど。あと、あいつはどちらかというとライターよりは編集者の資質が勝っていた気がするんだよね。電波にしろ鬼畜にしろ「これからはこの辺のものがくるぜ」ってセッティングして、その果てに『危ない1号』とかあったわけでしょう。あれが2ちゃんねるの登場によって、雑誌としてやることではない、普通の人間がやるものに変わってしまった。みんながやってしまうものを黒田(一郎。村崎百郎の本名:引用者注)がやってもしょうがないので。 — 今野裕一インタビュー「村崎百郎が唯一、言うことを聞く、怖がる人間が僕でした」『村崎百郎の本』アスペクト、118-119頁、2010年。 またインターネット上でも1999年以降はテイストレスに興味を持つ人口も減少したようで、死体や奇形など悪趣味に特化したグロサイトは殆ど作られなくなった(テイストレスサイトの総本山だった「下水道入口」も1999年6月17日付で閉鎖している)。これについてばるぼらは「おそらく『何か変わったもの』だったはずの死体や畸形画像が、いつのまにか『ありふれたもの』になってしまい、当時アクセスしていた人々はまた別の変なものを求めて、ネットを徘徊しているのだろうと思う。そもそも2004年に本物の殺人動画、あの首切り映像が出回ったウェブに、これ以上何を求めればいいのだろう。いつかまた会うその時まで、死体は墓に埋めておいてほしい」とコメントしている。 青山と交友があったデザイナーのこじままさきも鬼畜系コンテンツが飽きられた理由に関して同様の理由を次のように述べている。 昔はネットがなかったから、すべての情報には希少価値があって、ゲスなもの、社会から隠されてるものは人気が出た。でも本人(青山正明:引用者注)がそういうのが本心から好きだったとは思えないんです。比喩に出すんですが、人前で「てのひら」って言っても反応しないけど、「チンコ」「ケツの穴」っていうと反応するじゃないですか。それだけだと思うんですよね。僕はそれだけなんです。社会が隠そうとしてるものを表に出すから面白かっただけで、そのものに対する興味が、ってなるとそんなでもない。グロ画像をネットで自由に見られるような時代になったら、もう何の興味もないってことだと。(中略)でも彼についての評価は、あの時代だったからってことはないと思いますよ、今読んでもクオリティはあるし、時代で消費されるようなものは作ってない。時代のあだ花と言われるのは心外です。でも説明は難しいですね、知らない若者に。 — ばるぼら「ある編集者の遺した仕事とその光跡 天災編集者!青山正明の世界 第84回 こじままさきインタビュー part3」(2010年6月13日配信/大洋図書Web事業部・WEBスナイパー)
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