ブームの沈静化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/07 03:06 UTC 版)
その後、商用モデルでありながらデラックスな内装、豪華な設備を備えたものや、軽乗用車との規格・規制の差を逆手にとったボンバンベースのホットハッチが登場するなど、軽自動車市場は1970年前後の360cc時代を彷彿とさせる過剰装備・過剰性能へと逆行し、軽ボンネットバンの在り方は、実用車としての起源から乖離した、いささかいびつな状況を呈した。 一般には、1989年の物品税廃止・消費税導入で、商用モデルの割安感やメリットが少なくなり、ボンバンブームは終焉(一つの区切り)を迎えたとされる。しかし実際には、物品税以外にも「5ナンバー」の軽乗用車に比べ任意保険や軽自動車税はほぼ半額、自動車重量税も安く、2020年代時点でも乗用モデルに対するメリットが存在している。この時期、自動車に要求される居住性や品質面などの水準が上がった事が主因であり、物品税廃止はそのきっかけに過ぎなかったとも言える。 以後、軽ボンネットバンのラインナップは、1979年の「アルト」登場時のような、本来の形態に沿った簡素な廉価版を中心に設定されるようになった。価格面でのリーダーはやはりアルトであった(これが当てはまらなかった時期も存在した)が、各社がそれにそろえるかたちで横並びとなった(これもまたその時々の税制対策によるところが強い)。 ブームこそ個人ユーザーの軽トールワゴンや軽ハイトワゴン、軽SUV、軽クロスオーバーSUVへの移行もあり、ほぼ沈静化したものの、依然として法人はともかく、一部の個人の低所得者層を中心に一定の需要があった。尤も、ミニカ最終型のH40型系に至っては、全体の販売台数の約80%がバンだったこともあり、乗用(セダン)モデルが販売不振のため2007年に先行廃止となり、モデル末期はバンのみの設定となっていた。 2000年代以降の軽ボンネットバンの各車種においては過剰装備こそ持たないが、安全性や居住性は軽自動車としての基準を満たしており、なおかつエアコンやパワーステアリング、ラジオなど、「乗用車」に求められる必要最低限の装備は標準で備えていた。 2000年代後半まではミラやミニカの場合、パワーウィンドウやキーレスエントリーはメーカーオプションながら新車購入時に設定可能であった。 2013年(平成25年)時点ではミラの場合、パワーウィンドウ・助手席サンバイザー・室内フューエルリッドオープナーの3点がセットでメーカーオプション設定されていた。 8代目アルトバン(HA36V型)の例を挙げるとキーレスエントリーやセキュリティアラームも標準であった。 また、従来はコスト面から省かれがちであった安全装備に関しても充実が図られていた。 アルト・ミラ共にデュアルエアバッグが、ミラバンにはABSも標準装備化されていた。 さらに2014年12月に発売されたアルトはバンも含めてAT車およびAMT車にASVのメーカーオプションが設定され、軽商用車初のASVとなった(なお、2019年(令和元年)7月の仕様変更によりASVのメーカーオプション設定は廃止されている)。 このように、もはや装備面では軽乗用車(特に軽セダン)に肉薄するレベルにまでなっており、また正式なバンとしても最大200kgの貨物を積載する能力があり、原動機付自転車などに比して(機動性を除いた)実用性に勝るミニマム・トランスポーターとして定着した。
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