ミニ独立国とは? わかりやすく解説

ミニ独立国

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/11 15:01 UTC 版)

ミニ独立国(ミニどくりつこく)は、日本国内において地域振興や自然保護運動の手段として一定の地域にて「建国」を標榜する活動、およびその成果である「国家」の総称。

概要

地域や地区を活性化させる目的のもと賛同者が集まり、国家経営を基準にして地域づくりを国づくりに置き換える形で、地域づくりに取り組むまちづくり団体が主となっており[1]、観光客の増加など地域の振興を目的とした宣伝の一環として架空の国家を建国する形態が多い。

政治的・思想的な主張からの独立運動民族自決とは違い、現実に日本国からの分離独立を主張しているわけではないため、国際機関によって承認されることはなく、主催者も正式な国家の設立を目的としてはいない。個人や少人数で独立を宣言するミクロネーションと関連付けられることもあるが、思想や信念ではなく観光客の増加など宣伝を目的にしていることが違いとされる。このため住民グループや商工会観光協会などが主体となって運営していることが多いが、町や村など地方自治体レベルで行っていることもある[2]

自治体の住民を『国民』、首長市町村長)を『国家元首』としている国が多いが、観光大使広報大使を国家元首に任命する国もある。

1972年に長崎県西海町で建国された「自然の国」や[1]1977年8月に「独立宣言」をした新邪馬台国(大分県宇佐市)がミニ独立国の先駆けとされている[3]

東北地方の小さな村が突如日本から独立するという1981年に刊行された井上ひさしの小説『吉里吉里人』がヒットしたことをきっかけに、1982年に小説の舞台と同名の吉里吉里という地区を抱える岩手県大槌町が、町おこしの一環として「吉里吉里国」として独立宣言したことがが話題となったことをきっかけとして1980年代には各地でミニ独立国の建国が相次ぐミニ独立国ブームが起こり最盛期の1986年にはミニ独立国オリンピックが銀杏連邦(東京都八王子市)で開かれるといった盛り上がりを見せ、ローマ教皇ヨハネ・パウロ2世を訪問したアルコール共和国(新潟県真野町)やアイスランドと相互に友好訪問団を派遣する等の友好関係を構築した流氷あいすらんど共和国(北海道紋別市)といった独自の国際交流を図った独立国も存在した[4][5]。その後1988年からはふるさと創生事業の影響を受けて第二次ブームが起こり[2]、1990年時点では203カ国が存在していた[1]。しかし、乱立によりインパクトが無くなったこと、後発国の無計画性などで飽きられ、ブームは沈静化した。

1990年代から財政難や運営主体となっていた自治体の合併、NPO法人の増加やメンバーの高齢化などさまざまな理由で減少し、2010年代まで活動を続けるミニ独立国は少なく[6]、2020年時点ではブーム後の1990年代以降に建国されたものを含め40カ国の活動が確認されている[1]。また自治体や観光協会といった公的団体の主導で建国された国家が後に住民グループ等民間側に移管されるケースや、国名を冠した地域支援NPOの発足、国家活動を休止しつつ国家の理念を引き継いだ活動を自治体の取り組みとして行うといったケースも確認されている[1]

地域の振興の枠組みを超えたシビアな議論を含む独立論については、都道府県独立国家論の項を参照。

ミニ独立国国際連合

ミニ独立国国際連合(ミニどくりつこくこくさいれんごう)は、ミニ独立国同士の交流を目的に発足。年1回、ミニ独立国サミットと称する国連総会を開催している。吉里吉里国とサミットを開催した国が常任理事国となっている[7]

1983年(昭和58年)に、第1回ミニ独立国サミット(USAサミット)が大分県宇佐市の新邪馬台国で開かれた。1984年(昭和59年)までは年2回、1985年(昭和60年)からは毎年1回開催されている[7]

主なミニ独立国の一覧

ミニ独立国をテーマとした作品

吉里吉里人
1981年に発表された井上ひさし長編小説。東北地方の寒村が独立宣言を行う。ブームのきっかけとなった。
サクラクエスト
2017年に放送されたテレビアニメ。ブームの終焉により寂れたミニ独立国「チュパカブラ王国」の2代目国王(観光大使)となった主人公が、仲間たちと共に地域おこしを開始する。

出典

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag ah ai aj 足立大育, 十代田朗, 津々見崇「ミニ独立国を契機としたまちづくりの持続性に関する研究」『観光研究』第33巻第3号、日本観光研究学会、2021年、145-151頁、CRID 1390855267548367616doi:10.18979/jitr.33.3_145ISSN 1342-0208 
  2. ^ a b 大下茂, 天野光一, 熊耳冬樹「ミニ独立国による地域づくりに関する研究 : 地域をアピールする観点からの考察を含めて」『観光研究』第8巻第2号、日本観光研究学会、1997年、9-18頁、 CRID 1390282680746369024doi:10.18979/jitr.8.2_9ISSN 1342-0208 
  3. ^ サントリー地域文化賞 地域別受賞者一覧 新邪馬台国”. サントリー文化財団 (1999年11月). 2016年12月22日閲覧。
  4. ^ a b c d e f おとなプラス 独立しよう、国を作ろう!地域が輝いた「ミニ独立国」ブーム… 新潟県内でもユニークな活動を展開 今はなき「3カ国」の遺産とは - 新潟日報2023年9月15日
  5. ^ あいすらんどの歴史 - 流氷あいすらんど共和国(Internet Archive)
  6. ^ 風・論説委員室から 森川純 ミニ独立国に学ぶこと - 北海道新聞2018年1月14日朝刊
  7. ^ a b ミニ独立国国際連合”. ツチノコ共和国. 2025年1月22日閲覧。[リンク切れ]
  8. ^ 新世代歌人山田航のモノローグ紀行 室蘭中島町を行く - 北海道新聞2020年8月7日夕刊
  9. ^ a b c d e f g ミニ独立国が万博 全国から40カ国参加へ - 朝日新聞1985年10月14日朝刊
  10. ^ 別海ミルク王国37年で活動終了 - 北海道新聞2023年4月13日夕刊釧路根室版
  11. ^ 氷の迷路や結婚式… 紋別「流氷あいすらんど共和国」、38年の歴史に幕 メンバー高齢化で - 北海道新聞2023年1月26日朝刊北見・オホーツク版
  12. ^ a b c ミニ独立国が一同に北海道連邦岩見沢サミット - 岩見沢新聞1986年8月4日
  13. ^ 港町ルネッサンス第二回えぞ共和国の若者たち - 開発こうほう1989年10月号(北海道開発協会 国立国会図書館デジタルコレクション)
  14. ^ ニコニコ共和国の観光戦略”. 岳温泉 陽日の郷あづま館 (2006年8月22日). 2012年12月22日閲覧。
  15. ^ 大和市のあゆみ(年表)市制施行以後” (PDF). 大和市. p. 5. 2012年12月22日閲覧。[リンク切れ]
  16. ^ 第17回合併協議会会議録” (PDF). 松任・石川広域合併協議会. p. 7 (2004年8月20日). 2012年12月22日閲覧。
  17. ^ 西さがみ連邦共和国|小田原市 小田原市
  18. ^ ひと ミニ独立国の万国博を企画した北浦浩さん - 朝日新聞1985年10月28日朝刊
  19. ^ コロナと戦うため「新邪馬台国」開国 宇佐の「ミニ独立国」10年ぶりに活動 「アマビエ」シール販売 /大分毎日新聞、2020年6月13日地方版。
  20. ^ a b c d e f g h 銀河連邦(サガミハラ共和国)について知りたい。”. 相模原市. 2025年5月21日閲覧。
  21. ^ U5H兵庫五国連邦 各国紹介”. 兵庫五国連邦(U5H). 2024年11月1日閲覧。

参考文献

  • 白石 太良「地域づくり型ミニ独立国のいま--4つの事例から」『流通科学大学論集, 人間・社会・自然編』第22巻第2号、流通科学大学学術研究会、2010年1月、2010-01頁、 ISSN 13465538NAID 40017002333 
  • 大塚亮太、初沢敏生「わが国におけるミニ独立国運動の特徴」『福島地理論集』第47巻、福島地理学会、2004年9月、16-22頁、 ISSN 09196854NAID 40006612866 
  • 瀬沼克彰「第16回全国ミニ独立国サミットに出席して (特集 「地域学」と生涯学習)」『社会教育』第52巻第11号、全日本社会教育連合会、1997年11月、39-41頁、 ISSN 13425323NAID 40001633873 
  • 倉原 宗孝、後藤由紀・日景敏也「住民主体のまちづくりに向けての北海道ミニ独立国の活動に関する考察」『日本建築学会計画系論文集』第488号、日本建築学会、1996年10月30日、165-175頁、 ISSN 13404210NAID 110004654464 
  • 後藤有紀、倉原宗孝「7376 北海道ミニ独立国の活動にみる地域・自己の世界生成に関する考察 : その2. 5つの典型事例にみる考察」『学術講演梗概集. F, 都市計画, 建築経済・住宅問題, 建築歴史・意匠』、日本建築学会、1994年7月25日、751-752頁、 ISSN 09150161NAID 110004205747 
  • 倉原宗孝、後藤有紀「7375 北海道ミニ独立国の活動にみる地域・自己の世界生成に関する考察 : その1. 道内の独立国の概要」『学術講演梗概集. F, 都市計画, 建築経済・住宅問題, 建築歴史・意匠』、日本建築学会、1994年7月25日、749-750頁、 ISSN 09150161NAID 110004205746 
  • 倉原宗孝、後藤有紀「095 北海道ミニ独立国の活動にみる生活者意識・行動の生成過程とその評価(まちづくり,都市計画)」『日本建築学会北海道支部研究報告集』第67号、日本建築学会、1994年3月18日、377-380頁、 ISSN 13440705NAID 110006879437 
  • 白石太良「地域づくり型ミニ独立国運動の変容(II)」『流通科学大学論集. 人文・自然編』第5巻第1号、流通科学大学、1992年9月30日、1-10頁、 ISSN 09153047NAID 110000508858 
  • 白石太良「地域づくり型ミニ独立国運動の変容」『流通科学大学論集. 人文・自然編』第4巻第1号、流通科学大学、1991年9月30日、93-116頁、 ISSN 09153047NAID 110000508846 
  • 白石太良「<研究ノート>ミニ独立国運動による地域づくりの現況 : アンケート調査の整理を中心に」、流通科学大学、1990年9月30日、 ISSN 09153047NAID 110000508834 
  • 白石太良「兵庫県における村おこし型ミニ独立国の動向」『流通科学大学論集. 人文・自然編』第2巻第1号、流通科学大学、1989年9月30日、23-40頁、 ISSN 09153047NAID 110000508811 
  • 大沼一雄「過疎の町・過疎の島-2-瀬戸の海に浮かぶミニ独立国」『地理』第31巻第12号、古今書院、1986年12月、97-102頁。 
  • 小林章「「ミニ独立国」「○○村」構想は商業の販促に利用できる(2)村おこしから始まる商業活性化」『商店界』第71巻第8号、誠文堂新光社、1990年8月、134-136頁。 
  • 内閣府、総理府「ミニ独立国"チクリン村"で町おこし――(鹿児島県・宮之城町)」『時の動き』第12巻第8号、国立印刷局、1988年1月、74-76頁。 

関連項目

外部リンク


ミニ独立国

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/08 07:08 UTC 版)

吉里吉里国」の記事における「ミニ独立国」の解説

上記関連して実在三陸鉄道リアス線 吉里吉里駅擁する岩手県上閉伊郡大槌町が、1982年町おこし一環として吉里吉里国として「独立宣言」をした。マスコミ注目集め観光客誘致成功し1980年代のミニ独立国ブームきっかけとなった。しかし1990年代入りブームの沈静化景気後退影響から、ミニ独立国としての活動活発に行わなくなった

※この「ミニ独立国」の解説は、「吉里吉里国」の解説の一部です。
「ミニ独立国」を含む「吉里吉里国」の記事については、「吉里吉里国」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「ミニ独立国」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「ミニ独立国」の関連用語

ミニ独立国のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



ミニ独立国のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのミニ独立国 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの吉里吉里国 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS