シュコダ9Trとは? わかりやすく解説

シュコダ9Tr

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/10 00:05 UTC 版)

シュコダ9Tr
シュコダ9TrH
シュコダ9rHT
シュコダ9Tr(ブルノ2005年撮影)
基本情報
製造所 シュコダオストロフ工場チェコ語版
製造年 1961年 - 1982年(量産車)
製造数 7,372両
(7,439両とする資料も存在)
主要諸元
電気方式 直流600 V
架空電車線方式
設計最高速度 65 km/h
車両定員 着席24人
定員80人
車両重量 8.92 - 8.99 t
全長 11,000 mm
全幅 2,500 mm
全高 3,240 mm
床面高さ 750 mm
固定軸距 5,400 mm
主電動機出力 110、115 kw
歯車比 10.68
出力 110、115 kw
制御装置 抵抗制御
電機子チョッパ制御(シュコダ9TrHT)
備考 主要数値は[1][2][3][4][5][6][7][8]に基づく。
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シュコダ9Trチェコ語: Škoda 9Tr)は、チェコシュコダシュコダ・オストロフチェコ語版)が開発・生産したトロリーバス車両。7,300両以上の大量生産が実施され、世界各国に導入された[1][5][7][7][9]

概要

1961年まで製造が行われたトロリーバス車両のシュコダ8Trの後継として開発された車種。モノコック構造を採用した車体デザインはシュコダ8Trから変更されており、乗降扉は基本的に3箇所設けられているが、ソビエト連邦(ソ連)向けの車種に関しては前後の2箇所に設置されている[1][5][7]

主電動機は両車軸の間に垂直方向に設置され、動力はカルダンシャフトを介して後軸へと伝達される。制動装置は後部の車軸に作用する減速用の電気ブレーキ、同じく後部の車軸に作用する機械式パーキングブレーキ、全ての車軸に対応する空気ブレーキが備わっている。車軸と車台を繋ぐサスペンションは板ばねが用いられている[1][4][5][7]

運用・車種

最初の車両となった試作車1957年に製造され、その後3年間プラハを始め各地でデモンストレーション走行を実施したのち、1960年11月30日からチェコスロバキア(現:チェコ)のプルゼニプルゼニ・トロリーバス)で営業運転を開始した。この試作車は先代の車種であるシュコダ8Trと類似した外見を有していたが、同年に車体設計を変更した2両目の試作車が落成し、これを基に1961年以降量産車の製造が始まった。そして、計29次の量産を経て1982年の生産終了までにチェコスロバキア、ソ連、ブルガリアアフガニスタンインド[注釈 1]ノルウェーなど世界各地の都市への導入が実施された。その両数は7,372両、もしくは7,439両とされており、ソ連で製造されたZiU-9ロシア語版ZiU-5ロシア語版に次ぎ、世界で3番目に多く製造されたトロリーバス車両となった[2][10][5][7][11]

1970年代以降、機器の技術進歩に合わせてこのシュコダ9Trについても電気機器やステアリング機構を改良した下記の車種の生産が実施され[注釈 2]、各都市に導入された。ただし、製造数の大半を占めたソ連向けに関しては信頼性の高さや頑丈さ、修繕の容易さが求められた事から旧来の機器を備えたシュコダ9Trの生産が続けられた[2][5][7][9]

また、これら以外に旧ソ連に導入された車両のうち一部は2両を連結した総括制御運転に対応可能な車両として製造され、後方に連結される車両については前照灯など一部機器の省略が行われていた。これらの車両について、製造元のシュコダではシュコダ12Trと呼ばれ区別が行われていた[6][7][8][12]

世界各国へ導入されたシュコダ9Trであったが、生産が終了した1980年代以降は各都市で後継車両への置き換えが進み、旧:チェコスロバキアの都市ではイフラヴァイフラヴァ・トロリーバス)での1997年の引退を最後に全車両が定期運用から退いた。一方で旧:ソ連のウクライナの都市では21世紀に入っても多数のシュコダ9Trが営業運転に使用され、最後の都市となったリウネリウネ・トロリーバスウクライナ語版)では2020年10月に一度引退しながらも、歴史的な価値が評価され翌11月から再度営業運転に復帰している[注釈 3]。他にもチェコやスロバキアを始め世界各国に保存車両があり、動態保存が行われている事例も多い[5][7][2][13]

導入都市一覧

以下、シュコダ9Trが導入された都市を記す。国名や都市名は2021年現在のものを用いる他、ウクライナについては同年時点で主権が及んでいない地域も含む[2][13][10][5][7][14][15]

シュコダ9Tr 導入都市一覧
導入国 都市 備考
アフガニスタン カーブル [16]
アルメニア エレバン
(エレバン・トロリーバス)
アゼルバイジャン バクー
(バクー・トロリーバス)
ギャンジャ
ブルガリア プロヴディフ
(プロヴディフ・トロリーバスポーランド語版)
[17]
ソフィア
(ソフィア・トロリーバス)
[18]
チェコ ブルノ
(ブルノ・トロリーバス)
[19]
チェスケー・ブジェヨヴィツェ
(チェスケー・ブジェヨヴィツェ・トロリーバス)
[20][21]
ジェチーン
(ジェチーン・トロリーバス)
[22]
フラデツ・クラーロヴェー
(フラデツ・クラーロヴェー・トロリーバス)
[23]
イフラヴァ
(イフラヴァ・トロリーバス)
[24]
マリアーンスケー・ラーズニェ
(マリアーンスケー・ラーズニェ・トロリーバス)
[25]
オパヴァ
(オパヴァ・トロリーバス)
[26]
オストラヴァ
(オストラヴァ・トロリーバス)
[27]
パルドゥビツェ
(パルドゥビツェ・トロリーバス)
[28]
プルゼニ
(プルゼニ・トロリーバス)
[29]
テプリツェ
(テプリツェ・トロリーバス)
[30]
ズリーン
オトロコヴィツェチェコ語版
(ズリーン/オトロコヴィツェ・トロリーバス)
[31][32]
ジョージア バトゥミ
チアトゥラ
ゴリ
クタイシ
ルスタヴィ
スフミ
(スフミ・トロリーバス)
トビリシ
(トビリシ・トロリーバス)
エストニア タリン
(タリン・トロリーバス)
ラトビア リガ
(リガ・トロリーバス)
インド ムンバイ 左側通行に対応
リトアニア カウナス
(カウナス・トロリーバス)
ヴィリニュス
(ヴィリニュス・トロリーバス)
ドイツ ベルリン
ツヴィッカウ
ドレスデン
エーベルスヴァルデ
(エーベルスヴァルデ・トロリーバス)
[33]
エアフルト
ゲーラ
グライツ
ライプツィヒ
マクデブルク
ポツダム
(ポツダム・トロリーバス)
ヴァイマル
ノルウェー ベルゲン
(ベルゲン・トロリーバス)
[34]
ポーランド グディニャ
(グディニャ・トロリーバス)
ルブリン
(ルブリン・トロリーバス)
オルシュティン
(オルシュティン・トロリーバスポーランド語版)
ワルシャワ
(ワルシャワ・トロリーバスポーランド語版)
ヴァウブジフ
(ヴァウブジフ・トロリーバスポーランド語版)
ルーマニア ブカレスト
スロバキア ブラチスラヴァ
(ブラチスラヴァ・トロリーバス)
[35]
プレショフ
(プレショフ・トロリーバス)
[36]
ウクライナ チェルニウツィー
ドニプロ
ハルキウ
キエフ
ルーツィク
ルハーンシク
リヴィウ
リシチャンシク
ホルリフカ
リウネ
セヴァストポリ
クリミア
(クリミア・トロリーバス)
テルノーピリ [37]

ギャラリー

チェコ・スロバキア(旧:チェコスロバキア)

ドイツ(旧:東ドイツ)

ウクライナ(旧:ソビエト連邦)

その他

脚注

注釈

  1. ^ インド向け車両は左側通行に適した車体構造を有していた。
  2. ^ この機器の改良は、社会情勢をはじめとする事情からシュコダ9Trの後継車両の開発が遅れた事も要因であった。
  3. ^ 2022年時点でリウネ市内のトロリーバスで使用されているシュコダ9Trは、1990年代に旧チェコスロバキアの都市から譲渡された車両である。

出典

  1. ^ a b c d Přehled trolejbusů”. SKD PRAHA, spol. s r.o.. 2008年3月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年1月22日閲覧。
  2. ^ a b c d e Libor Hinčica; Zdeněk Kresa; Anton Brynych (30 November 2020). Trolejbus Škoda 9 Tr slaví 60 let v pravidelném provozu (Report). Československý Dopravák. 2022年1月22日閲覧
  3. ^ Trolleybus Skoda 9 Tr”. MB Drive Service. 2022年1月22日閲覧。
  4. ^ a b Historická vozidla”. Dopravní podnik města Pardubic a.s.. 2022年1月22日閲覧。
  5. ^ a b c d e f g h Martin Harák 2015, p. 54.
  6. ^ a b Martin Harák 2015, p. 56.
  7. ^ a b c d e f g h i j Martin Harák 2013, p. 48.
  8. ^ a b Martin Harák 2013, p. 50.
  9. ^ a b Martin Harák 2013, p. 47.
  10. ^ a b Plzeňských městských dopravních podniků, a.s (2011-6) (PDF). Plzeňské trolejbusy slaví 70 let. pp. 7. https://www.pmdp.cz/WD_FileDownload.ashx?wd_systemtypeid=34&wd_pk=WzE5OTQsWzQ0XV0%3D#:~:text=Ke%20sv%C3%BDm%2070.,znovuuveden%C3%AD%20do%20provozu%20s%20cestuj%C3%ADc%C3%ADmi. 2022年1月22日閲覧。. 
  11. ^ Martin Harák 2015, p. 53.
  12. ^ Олег Бодня. “Троллейбусные поезда: советская транспортная экзотика”. Грузовик Пресс. 2022年1月22日閲覧。
  13. ^ a b Libor Hinčica (5 December 2020). V Rovně se vrátily do provozu vozy Škoda 9 Tr (Report). Československý Dopravák. 2022年1月22日閲覧
  14. ^ Škoda 9Tr Škoda, Czech Republic”. Urban Electric Transit. 2022年1月22日閲覧。
  15. ^ Roster Škoda 9Tr”. Urban Electric Transit. 2022年1月22日閲覧。
  16. ^ Hlavní strana (2021年6月14日). “Afghanistan”. Společnost pro veřejnou dopravu. 2022年1月22日閲覧。
  17. ^ Vehicle Statistics Plovdiv, Trolleybus”. Urban Electric Transit. 2022年1月22日閲覧。
  18. ^ Vehicle Statistics Sofia, Trolleybus”. Urban Electric Transit. 2022年1月22日閲覧。
  19. ^ DPMB: trolejbusy Škoda 9Tr”. SEZNAM-AUTOBUSU.cz. 2022年1月22日閲覧。
  20. ^ DP města České Budějovice - trolejbusy”. SEZNAM-AUTOBUSU.cz. 2022年1月22日閲覧。
  21. ^ DP města České Budějovice: trolejbusy Škoda 9Tr2”. SEZNAM-AUTOBUSU.cz. 2022年1月22日閲覧。
  22. ^ DP města Děčína”. SEZNAM-AUTOBUSU.cz. 2022年1月22日閲覧。
  23. ^ DP města Hradce Králové - trolejbusy”. SEZNAM-AUTOBUSU.cz. 2022年1月22日閲覧。
  24. ^ Autobusy Jihlava”. SEZNAM-AUTOBUSU.cz. 2022年1月22日閲覧。
  25. ^ MĚSTSKÁ DOPRAVA Mariánské Lázně - trolejbusy”. SEZNAM-AUTOBUSU.cz. 2022年1月22日閲覧。
  26. ^ Městský dopravní podnik Opava”. SEZNAM-AUTOBUSU.cz. 2022年1月22日閲覧。
  27. ^ Dopravní podnik Ostrava - trolejbusy”. SEZNAM-AUTOBUSU.cz. 2022年1月22日閲覧。
  28. ^ DP města Pardubic - trolejbusy”. SEZNAM-AUTOBUSU.cz. 2022年1月22日閲覧。
  29. ^ PMDP - trolejbusy”. SEZNAM-AUTOBUSU.cz. 2022年1月22日閲覧。
  30. ^ DP města Teplic - trolejbusy”. SEZNAM-AUTOBUSU.cz. 2022年1月22日閲覧。
  31. ^ DSZO - trolejbusy”. SEZNAM-AUTOBUSU.cz. 2022年1月22日閲覧。
  32. ^ Historická vozidla”. Dopravní společnost Zlín-Otrokovice, s.r.o.. 2022年1月22日閲覧。
  33. ^ BBG Eberswalde: trolejbusy Škoda 9Tr”. SEZNAM-AUTOBUSU.cz. 2022年1月22日閲覧。
  34. ^ Jiří Šantora (2020年9月23日). “Škoda dodala první vozy do norského Bergenu”. deník.cz. 2022年1月22日閲覧。
  35. ^ DP Bratislava - trolejbusy”. SEZNAM-AUTOBUSU.cz. 2022年1月22日閲覧。
  36. ^ DP mesta Prešov: trolejbusy Škoda 9Tr”. SEZNAM-AUTOBUSU.cz. 2022年1月22日閲覧。
  37. ^ DP Ternopil: trolejbusy Škoda 9Tr”. SEZNAM-AUTOBUSU.cz. 2022年1月22日閲覧。


参考資料

  • Martin Harák (2015-11-10). České trolejbusy historie a současnost, typy, technika, provoz. Praha: Grada Publishing a.s.. ISBN 978-80-247-5552-6 
  • Martin Harák (2013-11-17). Autobusy a trolejbusy východního bloku. Praha: Grada Publishing a.s.. ISBN 978-80-247-4738-5 

シュコダ9Tr(Škoda 9Tr)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/28 03:05 UTC 版)

総括制御 (トロリーバス)」の記事における「シュコダ9Tr(Škoda 9Tr)」の解説

詳細は「シュコダ9Tr」を参照 チェコスロバキア(現:チェコ)のシュコダ生産されソ連にも多数車両輸入されトロリーバス旧式車両であったMTB-82D代わる総括制御運転車両として1968年から導入実施された。MTB-82D運用実績から一部設計変更され実際営業運転使用されなかった切り離しシステム撤去接続装置簡素化が行われた他、後方連結される車両前照灯等搭載行われず当初から総括制御運転前提とした構造となっていた。 キエフ含めたソ連各地都市向けて多数編成導入された他、1975年から1981年の間にはブルガリア首都ソフィアトロリーバスソフィア・トロリーバス英語版))でも使用された。これらの大量導入過程では以下のような形態編成考案されたものの、様々な事情試験結果からどれも実現に至ることはなかった。 両方向形編成 - 道幅が狭い通りでのUターン解消するため、2台の9Trを背中合わせ連結する事で運転台前後備えた編成双方車両鉄道における自動連結器類似した連結器繋がれ一方車両には車体左側にも乗降扉が増設された。だが試験結果内輪差問題となり、実現する事はなかった。 3両編成 - 1970年代当時キエフ開通したライトレールキエフ・ライトレールと共に新興住宅地から市内中心部への大量輸送実現させるために考案された、全長35 mにも及ぶ長大総括制御編成。ウラジーミル・ヴェクリチの主導の元、1976年実験が行われたが、ライトレール輸送力需要賄える判断され実現する事はなかった。

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