ガスプロムとは? わかりやすく解説

ガスプロム

読み方がすぷろむ
【英】: gazprom

1989年旧ソ連邦ガス工業改組して、その機能引き継ぐ形で設立され国家ガスコンツェルン。
1993年株式会社化された。 ロシア国内において天然ガス探鉱開発生産国内輸送輸出国内販売卸売り段階まで)事業展開するロシア最大級企業であるとともに世界最大ガス生産企業従業員数は約32万人)である。ロシア国内に約70社、そして、欧州には現地企業との合弁ガス輸送販売子会社を約20社保有している。
2005年時点でガスプロムがロシア国内探鉱保有する天然ガス確認埋蔵量28兆6,200立米世界全体の約17%相当するまた、ガスプロムの2005年天然ガス生産量は5,479立米前年比0.5%増)でロシア全体89%に相当する。ガスプロムは2010年まで天然ガス生産量を5,500億から5,600立米水準維持し2020年には5,800億から5,900立米、そして、2030年までには6,100億から6,300立米まで増加させる計画である。
ガスプロムはロシア国内生産した天然ガスの約2割を欧州向け輸出して売上額の約6割を稼ぎ出しているが、国内向けには同6割をロシアへ供給しているものの全売上額の約3割を稼ぎ出しているにすぎないロシア国内向けのガス供給価格連邦料金庁による規制によって欧州向けガス輸出価格数分の一の水準抑制されていることがその理由である)。欧州向けガス輸出はガスプロムにとって経営最重要課題であるため、2005年12月、ガスプロムはバルト海海底経由するドイツ向けの“Nord Stream”,旧名北欧ガスパイプラインNorth European Gas Pipeline)の建設開始した。同パイプラインはガスプロムにとって既存ベラルーシおよびウクライナというパイプライン通過国を迂回できる利点がある。
この他、ガスプロムは天然ガス輸出先多様化長期的な経営課題として取り上げている。第一に、現在は探鉱開発があまり進んでいない東シベリア極東での新規ガス田開発北東アジア向けのパイプラインによる天然ガス輸出プロジェクトである。第二LNG(Liquified Natural Gas液化天然ガス輸出プロジェクトで、バレンツ海沖合のシュトックマン・ガス田を開発し欧米向けにLNG輸出する構想持っている
ガスプロムは、チェルノムイルジン(在任期間1989年8月1992年5月、後にロシア連邦首相就任)、ビャヒレフ(在任期間1992年5月2001年5月)という大物社長二代続き、エリツイン前政権時代には「国家の中の国家と言われる程の存在感示したが、プーチン大統領2001年5月自分腹心であるミレルをガスプロムの社長に就任させた。2005年5月には株式50%超を政府保有とし、2006年1月までに残り株式を完全自由化させた。

小森 吾一、2007年3月

ガスプロム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/12/30 13:15 UTC 版)

ガスプロム
Gazprom, Газпром
サンクトペテルブルグのガスプロム本社ビル、ラフタ・センター
種類 株式会社
市場情報
本社所在地 ロシア
サンクトペテルブルグ
設立 1989年
業種 天然ガス
法人番号 3700150124062
事業内容 ガス事業など
代表者 会長 ヴィクトル・ズプコフ
CEO アレクセイ・ミレル
従業員数 466,000(2018)
主要株主 ロシア政府(50.23%)
主要子会社 ガスプロムバンク
関係する人物 ヴィクトル・チェルノムイルジン(元社長、ロシア連邦首相)
レム・ヴャヒレフ(元社長)
ドミートリー・メドヴェージェフ(前会長、ロシア連邦大統領)
外部リンク www.gazprom.ru
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ガスプロムロシア語: Газпром、ラテン文字表記の例:Gazprom)は、ロシア企業天然ガスの生産・供給において世界最大の企業である。創設は1993年2月17日半国営の天然ガス独占企業である。ロシア政府が50.23%の株式を保有している。

天然ガスの生産高(採掘量)は5237.9億立方メートルで、これはロシアの88%(残りはITERA社および石油企業の生産)、全世界の23%に相当する。埋蔵量は、17,800立方キロメートルで、これは世界の38%を占めると言われる。

国内総生産並びに鉱工業総生産の約8%(2000年)、ロシアの国家税収の約25%も1993年から2003年の間、毎年平均40億ドル以上を占めていた。ガスプロムは58の子会社(2002年9月現在)と、約30万人の従業員を抱える。パイプライン15万2000キロメートル、地下貯蔵施設22か所(総容量790億立方メートル)を保有し、採掘、生産、供給、販売までを独占している。

沿革・開発

ガスプロムの前身は、1989年ソビエト連邦ガス工業省と石油工業省が統合される際、8月8日付けで旧ガス工業省の企業が改組され、成立したガスプロム・コンツェルンである。この一連の作業を主導したのが、ガス工業相であったヴィクトル・チェルノムイルジン(後の首相)である。1991年11月5日のロシア大統領令および、翌1992年2月17日のロシア内閣の決議によって、ガスプロムとなった。

1999年末までのガスプロムグループ内には、ガス輸送・採掘部門のほかに、海外へのガス販売を目的としたガスエクスポルト社と国内ガス販売を目的としたメジレギオンガス社があり、その他、ガスプロム銀行を筆頭に複数の金融機関が存在している。

ガスプロムは、ロシア最大規模の納税企業であり、ロシア連邦政府への影響力は巨大である。ロシア連邦政府とガスプロムの利害が常に一致するとは限らず、事実、1999年12月の下院国家会議選挙において、レム・ヴャヒレフ社長は、エリツィン政権と対立していた「祖国・全ロシア」を支持したと指摘された。

ガスプロムは、分割・解体化される見通しであったが、ユコス問題も絡み、ロシア政府は、ガスプロムも含むエネルギー産業界の再編へと動いた。2004年12月、ガスプロムは、国営石油会社のロスネフチを吸収合併し、傘下の石油会社ユガンスクネフチガスは分離すると発表した。この結果、ガスプロムに対するロシア連邦政府の株式保有比率は過半数となった。

2005年4月、ウクライナとのガス供給交渉の過程で、倍以上の値上げを要求。ロシア、ウクライナの国家間の対立を招いた。2006年1月1日にはウクライナへのガス供給を停止。ウクライナ側は無視してパイプラインからガスを抜き取ったため、ウクライナから先の供給国である欧州各国のガス圧が低下。国際的な非難を浴びた(ロシア・ウクライナガス紛争を参照)。

2005年9月、ガスプロムは、ロシア石油精製大手の一社シブネフチの株式72.663%を130億1000万ドルで取得した。この企業買収はロシア史上最大の合併である。この買収に伴い、ガスプロム傘下となったシブネフチは、ガスプロムネフチへ社名を変更した。

2006年12月28日、ロスネフチとの間に、戦略的協力に関する合意に達し包括的な提携関係を締結することに成功した。ロスネフチとの合併は、不首尾に終わっていたが、この合意によって石油・ガス田の開発、輸送、販売、新技術開発などを両社共同で事業化することになった。このことによりプーチン政権およびシロヴィキの国家によるエネルギー産業支配、石油、天然ガスによる資源外交の一層の強化に繋がった。

2008年5月、ドミートリー・メドヴェージェフ第一副首相が大統領当選に伴い、取締役会議長(会長)を辞任。同年6月27日、役員会は、後任の会長にヴィクトル・ズプコフ第一副首相(前首相)を選出。メドヴェージェフ新政権でもロシア連邦政府によるガスプロムを筆頭とする、エネルギー産業の支配が継続される。

2016年3月、中国銀行と過去最大の融資合意を交わす[1]

2022年2月24日、ロシアは国境を越えてウクライナに侵攻を開始すると欧州各国はロシアに対する経済制裁を発動。ガスプロムも苦境に立たされることとなった。 翌週、モスクワ証券取引所は取引が中止されたが、ロンドン証券取引所では侵攻前6ドル強であった株価が1ドル以下に暴落した[2]

業績(ルーブル表示)

  03年 04年 05年 06年 07年
売上高 819753百万R 976776百万R 1383545百万R 2152111百万R(9.68兆円、当時1ルーブル4.5円として)
営業利益 226338百万R 267833百万R 453984百万R 788188百万R
税引き前利益   287866百万R  450116百万R 856066百万R
純利益 159095百万R 205684百万R 311125百万R 613345百万R(2.76兆円、当時1ルーブル4.5円として)

欧州主要国 石油・天然ガスのロシア依存度

欧州主要国 石油・天然ガスのロシア依存度
2020年 資料: Canalys[3]
順位 国籍 石油 天然ガス
1位 ドイツ 34% 43%
2位 イタリア 11% 31%
3位 フランス 0% 27%
4位 イギリス 11% 5%

ドイツは輸入に占めるロシア産石油や天然ガスが極めて高く、ロシア産は石油・天然ガス共にシェア1位である。

関連項目

出典

外部リンク


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