オプトインとオプトアウト
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/18 06:50 UTC 版)
「臓器提供」の記事における「オプトインとオプトアウト」の解説
「:en:Mandated choice」も参照 医学が進歩するにつれて、臓器ドナーに救われる人の数は増え続けている。新たな技術と施術により命を救う機会が増えるにつれて、臓器ドナーに対する需要は実際のドナー数よりも速く増加している。個人の自主性を重んじて、死後の遺体取扱い(要は、死後に臓器提供するか否か)に関しては自発的な同意がなされている必要がある。自発的同意を決定づける方法は主に2つあり、それが「オプトイン」(明示的同意を与えた人だけがドナー)と「オプトアウト」(提供の意向を拒否していない人がドナー)である。オプトアウト又は推定的同意というシステムに関しては、当人が死去した時に臓器を医療用途に提供する意向があると見なされる。オプトアウトで法整備したシステムは、デフォルト効果の帰結として、提供への有効な同意率を劇的に増加させる。例えば、オプトインシステムを採用するドイツでは臓器提供の同意率が人口の12%であるのに対し、文化経済の発展がよく似ていながらオプトアウトシステムを採用するオーストリアでは、その同意率が99.98%である。 「みなし」同意として知られるオプトアウトの同意は、大多数の人が臓器提供を支援するという概念を指すものだが、たとえ彼らが死亡時に臓器を提供したいとしても実際の登録段階を踏んでいないため、実際に登録されているのは人口のごく少数割合に過ぎない。これはオプトアウトシステムにて解決可能で、提供に同意しない人だけが提供拒否リストに登録する必要があるようにすれば、より多くの人がドナーとして登録される。この理由から、ウェールズなどの国では「ソフト・オプトアウト」の同意を採用しており、もしも市民が登録の決断を明確にしていない場合、彼らは登録市民として扱われて臓器提供プロセスに参加することになる。 オプトインの同意は、臓器提供に参加の登録がなされた人だけの同意プロセスを指す。 現在は日本やアメリカ合衆国などがオプトインのシステムであるが、オプトアウト方式を備えた国はより多くの臓器提供を活用できるためより多くの人命が救われていると複数の研究調査が示している。 現在のオプトイン同意の指針では、臓器提供登録にも通じる文書化された何らかの物(例えば日本では運転免許証裏側にある提供意思へのチェック記入)がない限り、個人は死亡時に臓器ドナーにならないというのが前提である。臓器ドナーになるための登録は、個人の思想態度に大きく依存する。肯定的な見解の人は臓器提供に利他的な感覚を感じることもあるだろうが、他方で登録された臓器ドナーの命を救うために医師が懸命に処置をするのか信頼できない(臓器移植のためにドナー側を見殺しにするのではないか)といった否定的な見解を持つ人もいる[誰?]。 オプトアウトの推定的同意システムに関する一般的な懸念を幾つか挙げると、新しいシステムに対する社会学的な恐怖、倫理的な異論、感情的な部分、そして提供の不承諾を決定した人に関する拒否登録簿の管理不安などがある。このほか提供に対する選択の自由を損ねるといった意見 や現存する宗教的信念との対立といった懸念も存在する。幾つか懸念はあるものの、アメリカにおける臓器提供の承認率は95%である。このレベルの全国的な受け入れなら、推定的同意への方針転換が一部の臓器不足問題の解決に有用な環境を育てる可能性もあり、その場合は個人が「不承諾(opt-out)」を希望すると文書化しない限り臓器ドナーになる意思があると想定されるが、この意向も尊重される必要がある。 公共政策、文化的側面、インフラ、その他の要因により、推定的同意のオプトアウトモデルが必ずしも効果的な提供率の増加に直接つながるわけではない。イギリスには、臓器提供に参加するのに立会人または保護者の同意が必要であるなど、臓器提供プロセスに関する違った法律や指針が幾つかある。当方針は保健省 (イギリス)によって協議されている。効果的な臓器提供の観点から、オーストラリア(100万人あたりドナー14.9件、2011年にドナー337人)など一部のシステムでは、家族が同意ないし拒否を出す必要があり、ドナー当人が同意した場合でも覆らずに不承認となる場合がある。スペイン(住民100万人あたりドナー40.2件)、クロアチア(ドナー40.2/ 100万人)、ベルギー(ドナー31.6/100万人)など オプトアウト方式を備えた幾つかの国ではドナー率が高いが、 このシステムでもギリシャ(ドナー6件/ 100万人)などはドナー率が低いままである。スペイン国立移植機構の会長は、1990年代から始まったスペインの法整備アプローチがドナー率増加に成功した主な理由ではないとの認識である。推定的同意での提供システム採用で成功しているスペインの例を見ると、家族が提供に関して協議を行う間、集中治療室(ICU)には、ドナーとなりうる人物の認識を最大限にして各臓器を維持するのに十分なだけの医師をつけておく必要がある。スペインの推定的同意モデルの成功を可能にしている特徴は、移植コーディネーターの要員数とされる。効率的な臓器調達に正当性を与えるべく、オプトアウト提供が実施されている各病院に最低1人は移植コーディネーターの常勤が推奨されている。 オプトアウトまたは推定的同意の提供システムを成功させるには、世論が不可欠である。健康に関する オプトアウトシステムへの方針転換がドナー増加の手助けとなるのかを判定するために行われた研究では、何らかの形のオプトイン方式からオプトアウト方式に方針転換変更した国で20%-30%の増加が確認された 。 もちろん、この増加が健康政策の転換と大いに関係があるのは間違いないが、ドナー増加に影響を与えうる他の要因の影響も受けているかもしれない。 「ドナー優先権規則」として知られるドナーの意志を汲んだ移植優先権は、新しい方法ながらオプトイン方式において高い提供率を奨励する目的で、優先度システムに「非医療」基準を組み入れた最初のものである。最初にイスラエルで導入された同規則は、臓器を必要とする個人がレシピエントのリスト上位に移動できるようにしたものである。リスト上位への移動には、臓器提供が必要になる前に個々のオプトインが行われているという条件付きである。この方針は、以前に臓器ドナーとして登録した個人の場合や家族が以前に臓器提供している人の場合は、他の移植可能なレシピエントよりも優先して臓器移植が受けられるよう、非医療基準を適用するものである。リスト上位に移動する前に、双方のレシピエントが同じ医療ニーズであることを確認する必要がある。 オプトイン方式においてはこうしたインセンティブが提供率を高めるのに有用であるが、提供に関して推定的同意がデフォルト(初期の設定)となるオプトアウトほどは成功していない。 国方針採用年アルゼンチン オプトアウト 2005 ブラジル オプトイン チリ オプトアウト 2010 コロンビア オプトアウト 2017 スペイン オプトアウト 1979 オーストリア オプトアウト ベルギー オプトアウト イギリス オプトアウト イスラエル オプトイン アメリカ合衆国 オプトイン 日本 オプトイン
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