イーゼンハイムさいだんが〔‐サイダングワ〕【イーゼンハイム祭壇画】
イーゼンハイム祭壇画
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『イーゼンハイム祭壇画』(イーゼンハイムさいだんが、独: Isenheimer Altar、仏: Retable d'Issenheim、英: Isenheim Altarpiece)は、ドイツ・ルネサンス期の彫刻家ニコラウス・ハーゲナウアーと画家マティアス・グリューネヴァルトが1512-1516年に制作した祭壇画である[1][2]。フランスのコルマールにあるウンターリンデン美術館に展示されている[2][3]。
- ^ a b c d e f g h 『美はアルプスを越えて』, p. 41-43
- ^ a b c d “The altarpiece of Issenheim”. ウンターリンデン美術館公式サイト (英語). 2023年8月9日閲覧。
- ^ a b c d e f g h 『週刊 世界の美術館 No.51』, p. 24-25。
- ^ a b 『美はアルプスを越えて』, p. 50-52
- ^ Cabello, Felipe (2018). “El retablo de Isenheim: religión, arte y medicina”. Revista Médica de Chile 146 (9): 1050–1058. doi:10.4067/s0034-98872018000901050. ISSN 0034-9887. PMID 30725027.
- ^ a b c d e “Isenheim Altarpiece closed”. ウンターリンデン美術館公式サイト (英語). 2023年8月9日閲覧。
- ^ "Christology. Jesus in the visual arts. Painting and sculpture. The Middle Ages through the 19th century". Encyclopædia Britannica.
- ^ John 3:30
- ^ a b “Isenheim Altarpiece, Outer wings opened”. ウンターリンデン美術館公式サイト (英語). 2023年8月9日閲覧。
- ^ a b “Isenheim Altarpiece, Inner wings opened”. ウンターリンデン美術館公式サイト (英語). 2023年8月9日閲覧。
- ^ a b Stieglitz, Ann (1989). “The Reproduction of Agony: Toward a Reception-History of Grünewald's Isenheim Altar after the First World War”. Oxford Art Journal (Oxford University Press) 12 (2): 87–103. doi:10.1093/oxartj/12.2.87. JSTOR 1360358.
- ^ Flavell, M. Kay (1988). George Grosz. A Biography. New Haven: Yale University Press. ISBN 978-0-300-04145-3[要ページ番号]
- ^ McCouat. “The Isenheim Altarpiece Pt 2: Nationalism, Nazism and Degeneracy”. 2023年8月9日閲覧。
- ^ Stephanie Barron, "1937: Modern Art and Politics in Prewar Germany", in Degenerate Art: The Fate of the Avant-Garde in Nazi Germany, Harry A Abrams/Los Angeles County Museum of Art, New York, 1991[要ページ番号]
- ^ “Musée Unterlinden | the Isenheim altarpiece”. 2014年11月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年9月26日閲覧。[要文献特定詳細情報]
- ^ Restoration of the Isenheim Altarpiece, Whitehot Magazine of Contemporary Art, July 2022. Retrieved 15 July 2023
- 1 イーゼンハイム祭壇画とは
- 2 イーゼンハイム祭壇画の概要
- 3 最近の修復
イーゼンハイム祭壇画
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「マティアス・グリューネヴァルト」の記事における「イーゼンハイム祭壇画」の解説
グリューネヴァルトの代表作であるイーゼンハイム祭壇画は、フランスとドイツの国境に位置するアルザス地方(現フランス)のコルマールにあるウンターリンデン美術館に収蔵されているが、元はコルマールの南方20kmほどに位置するイーゼンハイムにあった。この作品は、イーゼンハイムの聖アントニウス会修道院付属の施療院の礼拝堂にあったものであり、修道会の守護聖人聖アントニウスの木像を安置する彩色木彫祭壇である。制作は1511年 ‐ 1515年頃。 祭壇は扉の表裏に絵が描かれ、扉の奥には聖アントニウスの木像が安置されている。扉を閉じた状態の時は、中央と左右のパネル、それにプレデッラ の4つの画面が見える。中央パネルは凄惨な描写で知られるキリスト磔刑(たっけい)像である。聖アントニウス会修道院付属施療院では、平日にはこの画面が公開されていたので、これを「平日面」または「第1面」という。観音開きの扉になっている中央パネルを左右に開くと「キリスト降誕」を中心にした別の絵画が現れる。この場面は修道院で日曜日にのみ公開されたもので、「日曜面」または「第2面」という。この「日曜面」の扉をさらに開くと、中央には聖アントニウスの木像を安置した厨子(ずし)があり、左右には別の絵画パネルが現れる。この画面(第3面)は、聖アントニウスの祭日のみに公開されたものである(以上の説明は、修道院に安置されていた時のオリジナルの状態を説明したもので、ウンターリンデン美術館では展示の都合上、第1面、第2面、第3面を別個に展示している)。 第1面の中央パネルは十字架上のキリストの左右に聖母マリア、マグダラのマリア、使徒ヨハネ、洗礼者ヨハネなどを配したもの。左パネルには聖セバスティアヌス、右パネルには聖アントニウスの像を表し、プレデッラにはピエタを表す。聖セバスティアヌスはペスト患者の守護神であり、聖アントニウスは「聖アントニウスの火」というライ麦から発生する病気の患者の守護神である。第2面は中央パネルに「キリスト降誕」、左パネルに「受胎告知」、右パネルに「キリストの復活」を描く。第3面は左に「聖アントニウスの聖パウロ訪問」右に「聖アントニウスの誘惑」を描く。これらの絵に挟まれた中央は聖者の彫像を安置する厨子になっており、中央に聖アントニウスの座像、向かって左に聖アウグスティヌスの立像、右に聖ヒエロニムスの立像がある。これら厨子内の木像はニコラス・フォン・ハーゲナウ(1445頃 - 1538)の作である(プレデッラにはキリストと十二使徒の彫像があるが、この部分は作者が異なる)。 第1面の中央パネルに描かれた十字架上のキリスト像は、キリストの肉体に理想化を施さない、凄惨で生々しい描写が特色である。十字架上のキリストの肉体はやせ衰え、首をがっくりとうなだれ、苦痛に指先がひきつっている。この祭壇画は前述のように、聖アントニウス会修道院付属施療院にあったもので、この施療院は「聖アントニウスの火」という病気の患者の救済を主要な任務としていた。「聖アントニウスの火」とは、医学的には麦角(ばっかく)中毒と呼ばれるもので、患者が自らの苦痛を十字架上のキリストの苦痛と感じ、救済を得るために、このような凄惨な磔刑像が描かれたと言われる。 ドイツに生まれ、イギリスで後半生を過ごした作家W・G・ゼーバルト (Winfried Georg Sebald、1944年5月18日 - 2001年12月14日)は、『移民たち-四つの長い物語』、第4話「マックス・アウラッハ」において、かつて産業革命発祥地として繁栄したマンチェスターの廃屋となった建物のアトリエで、ひたすら画作に没頭する画家を描いている。ミュンヘン出身のユダヤ人で、ホローコーストを逃れてイギリスに移住した画家は、アトリエでは同じ肖像のデッサンにかかりっきりであったが、一度だけ外国への旅に向かう。こうして彼は長年の夢を叶えるべくコルマールを訪れる。彼は「グリューネヴァルトの祭壇画にむかい、かじりつくように眺めはじめ」、グリューネヴァルトのヴィジョンが、自分には「根っこで相通じるものがあるのです。前景の人物から発せられるそら恐ろしいまでの苦悩が世界全体を覆っていて、そしてそれが暗黒の背景から波のように打ち返し、死んだ人の像めがけて押し寄せてくる。その凄まじさが胸のなかであたかも海潮のように満ち引きしました」と感じ、「苦痛は極限まで達すると、それを感じる条件である意識を消してしまう、そしておそらくは、苦痛そのものをも抹消するのではないか」と考えている。
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