『オックスフォード英国人名事典』
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/10/15 07:00 UTC 版)
「英国人名事典」の記事における「『オックスフォード英国人名事典』」の解説
1990年代初頭、オックスフォード大学出版局は、『英国人名事典』を精査することを決定した。1992年には、オックスフォード大学の近代史教授・コリン・マシュー(英語版)が舵取りを行い、『新英国人名事典』(英: New Dictionary of National Biography; New DNB)の編纂が開始された(書名には2001年までこの名称が用いられた)。マシューは20世紀後半では取るに足らないと思えるような記事でも、原本にあるものは漏らさず収録することを決めた。原本に存在した一部の短い記事は改訂新版でもそのまま残されたが、大部分は新しく書き直された上、14,000件ほどの新しい記事が追加された。新しく収録する記事の提案は、図書館や大学、更に1990年代の発明であるオンラインなどでアンケート調査された。これらの提案は編集者や12人の外部コンサルタント編集者、数百人の副編集者、編集部スタッフによって精査された。 新しい辞書では、2000年12月31日までの「広義の」英国史がカバーされた。例えば、ブリタンニア時代や13植民地、イギリス帝国時代の植民地などの内容が含まれている。この研究プロジェクトは、協同研究として企画され、大学の編集部スタッフだけでなく、世界中から1万人以上が協力した。内容自体は相変わらず選り好みされたものだったが(例えば国会議員は誰一人として収録されようとしなかった)、改訂新版では、英国や以前の植民地の歴史背景を網羅し、そこから、重要で影響力が大きく著名な人物を選んで収録するよう試みられた。19世紀後半の編集者による選出を上書きし、20世紀後期の学識を用いて、「2つの時代に渡る協働作業が、それぞれの時代だけでなく、次の時代にも有益なものを産み出す」ことを願って制作されたが、最終的な記事選択を見ると、理念の実行とはほど遠いものであった。 1999年10月にマシューが亡くなったことを受けて、2000年1月には、オックスフォード大学の歴史学者ブライアン・ハリソン(英語版)が編集者に就任した。新しい辞書は、『オックスフォード英国人名事典』(英: The Oxford Dictionary of National Biography; ODNB)として、2004年9月23日に全60巻・7500ポンドで発行され、会員制のオンライン版も公開された。有効な英国の図書館利用者カードを持っている場合は、オンライン版に無料でアクセスできることが多い。2004年版には、54,922人を収録した、50,113の伝記記事が収録され、旧版の『英国人名事典』に収録された記事は全て網羅されていることが発表されている。旧『英国人名事典』の記事に付けられた見出しも尊重され、別に分けられた「DNBアーカイブ」(英: "DNB Archive")を辿って読むことができる。オンライン版の更新や加筆のため、オックスフォード大学には数人の常置スタッフが残された。ハリソンの次の編集者には、同じくオックスフォード大学の歴史学者、ローレンス・ゴールドマン(英語版)が2004年10月に就任した。最初のオンライン版更新は2005年1月4日に行われ、2001年までに亡くなった人物の記事が収録された。全ての時代から人物をピックアップし、2005年5月23日・10月6日にも2回の更新が行われた。2006年1月5日には2002年に亡くなった人物の記事が収められ、その後も2005年の更新に倣って、5月と10月に更新が行われている。『オックスフォード英国人名事典』には、原本の『英国人名事典』発行前に亡くなったが、収録されなかった人々の記事も含まれている。これらの人物は、『英国人名事典』発行後に、歴史学者の研究で高名になった人々で、ウィリアム・エア(英語版)(1634年〜1675年に活躍)などが含まれる。 オンライン版には検索機能が付けられ、興味分野や宗教、場所、日付、ライフ・イベントなどで人物を検索することができる。この場合は、直接見ることはできない電子索引にアクセスしている。 新しい辞書に対する反応はほとんどが好意的なものだったが、発行から数ヶ月後には、内容の非正確性について、イギリスの新聞や雑誌に批判されるようになった。一方で、このように公然と疑義を指摘された記事はほんのわずかで、2004年9月に発行された50,113もの記事の内わずかに23記事で、結果として修正箇所は100箇所に達しなかった。この修正を含めた記事の訂正案・追加記述案については、出版が検討されている段階から校正作業が進められており、これらの修正は確認が済み次第、オンライン版の事典に追加される。2005年には『オックスフォード英国人名事典』は、アメリカ図書館協会のダートマス・メダル(英語版)を受賞した。2007年には、事典の概評が発表された。 2014年10月からは、デイヴィッド・キャナダインが編集者を引き継いでいる。
※この「『オックスフォード英国人名事典』」の解説は、「英国人名事典」の解説の一部です。
「『オックスフォード英国人名事典』」を含む「英国人名事典」の記事については、「英国人名事典」の概要を参照ください。
- 『オックスフォード英国人名事典』のページへのリンク