『オシアン』による「再生」
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「スコットランドの氏族」の記事における「『オシアン』による「再生」」の解説
18世紀中盤には氏族制度は過去のものとなり、スコットランドにも近代化の波が押し寄せるが、一人の詩作家によって劇的な変化がおこった。ジェイムズ・マクファーソンの詩集『オシアン』がそれである。1760年に『オシアン』はハイランドに伝わるゲール語民間伝承を再構成して英訳出版したものであったが、その美しさは全ヨーロッパの知識人たちを驚愕させ、ロマン主義の浸透に火をつけた。スタール夫人やシャトーブリアンらは『オシアン』を絶賛し、ナポレオンは愛読書として携行した。未開で野蛮と思われたスコットランドに、ダンテにも劣らぬ崇高で美しい物語が存在したことは、ジャコバイトの敗北で打ちひしがれるスコットランド人たちに新たな誇りをもたらした。 スコットランドの人々は、これをきっかけに失われた誇りを取り戻す運動を始めた。キルトが伝統的な民族衣装となり、各人まちまちであったタータン柄は氏族ごとに統一された。氏族制度が不徹底だったローランド地方にも氏族が確立され、氏族に名を連ねることがスコットランド人の名誉となった。折しも海外へ移民を進めたスコットランド人たちは、移民先でも氏族への帰属意識を忘れなかった。世界各地で氏族の支部がつくられ、総本部の城では毎年、氏族の集まりが開かれるようになった。この習慣は限定的だが、現代にも続いている。
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