《夫々》の正しい読み方
「夫々」の正しい読み方
「夫々」は「それぞれ」と読む。「夫々」の意味解説
「夫々」の意味は、「複数の人の中のひとりひとり。複数の物の中のひとつひとつ」。また「そのひと、その物であると注意を促すときの言葉」。「夫」には「一人前のおとこ。夫婦におけるおっと。労働にたずさわる人」などの意味があるが、それ以外にも「それ」という読みを持った、発語の助字としての用途がある。発語とは漢文の文頭に置かれ、語気を強める役割をする漢字をいい、「夫れ天地は万物の逆旅にして、光陰は百代の過各なり(李白)」の類である。「夫々」はこの発語の用法に基づくもので、男や夫、労働者などの意味はない。なぜ「夫々」と読むのか・理由
「夫々」を「それぞれ」と読むのは、「夫」に「それ」と読む読み方があるから。「それぞれ」と、後ろに繰り返した「ぞれ」を濁って読むのは、日本語の連音現象の一パターンである「連濁現象」によるもの。連濁現象とは、単語と単語が結合して一つの語を作る際に、後ろの語の語頭が清音から濁音に変化することをいう。「夫々」の場合、後ろの語頭が濁って「それぞれ」という読みに変化した。「夫々」の「々」は、同じ漢字や仮名を重ねるときに用いる踊り字の一種で、表記を簡略化する場合に使用され、同の字点、またはノマ点といわれる。「夫々」の類語・用例・例文
「夫々」の類語には、「ひとつひとつ別々である」という意味の「個別」、「ひとりひとり別々である」という意味の「各々」、「ひとりひとりおのおの」という意味の「銘々」などがある。「夫々」の用例としては「夫々の持ち場を離れないようにする」「夫々が自分の価値観を持っている」「夫々の建物の内装・宿泊人数は異なる」などをあげることができる。「夫々」の例文には「現今のイギリスに於ける経済学者の最も優秀な人々は、夫々印度に在任した人たちばかりだとの事である。日本ではこれが満洲。(欧洲紀行) 横光利一」、「木彫の中にも色々変っているものがあるが、なる程、ああいうようにやるからああいう風に出来るのだということが見ると夫々分るのである。(回想録)高村光太郎」、「彼等は夫々大使館の下級吏員に、或は大使邸の書生、下男などに変装して、大夜会場の内外を警戒する手筈になっていた。(黄金仮面) 江戸川乱歩」などがある。
「夫々」の英語用例・例文
「夫々」の英語表現は「Respectively」となる。用例・例文としては「Books and stationery are sold on the second and third floors respectively. (本は2階で、文房具は3階で、それぞれ販売されている)」などをあげることができる。《夫々》の正しい読み方
「夫々」の正しい読み方
「夫々」の読み方は「それぞれ」である。「それぞれ」の漢字表記は「夫々」の他に「其々」もある。
「夫々」の意味解説
「夫々」の意味は「それぞれ」である。つまり、複数の人間の一人ひとり、各自、おのおの、めいめい、複数の物のひとつひとつ、などのような意味で用いられる表現である。「夫」という字の成り立ちは、大の字になって立った人間の頭に、成人の証であるまげを載せた状態を表した象形文字とされる。
「夫」の字は、必ずしも「妻」と対比される「既婚男性」の意味とは限らず、「成人した一人の男性」を指す意味合いもある。
「夫々」は、「個々」や「一人一人」「個人個人」のような表現と同様、個を意味する語を連ねることで「複数ある」「そのどれもが一様ではない」という意味合いを表しているといる。
なぜ「夫々」と読むのか・理由
「夫々」を「それぞれ」と読むのは、日本語の指示代名詞である「それ」を二つ重ねた「それぞれ」という言葉に、意味合いの一致する「夫々」と言う字をあてたためである。「夫」あるいは「夫れ」を、単体で「それ」と読む場合もあるが、その場合、日本語の指示代名詞である「これ、それ、あれ、どれ」のうちの「それ」とは意味が異なり、漢文の書き下し文の中で使われる特殊な言葉である。これは、文頭に置いて調子を整える役割のある「発語の辞」と呼ばれるもので、「そもそも」、「いったい」などと訳される場合もあるが、日本語に訳すことが難しいとされている。
「夫々」の類語・用例・例文
「夫々」の類語は、各々、めいめい、各自、一つ一つなどである。「夫々」の用例、例文は、次のようなものがある。
「着替えた後、すみやかに夫々の持ち場につきなさい。」
「夫々考えがあるだろうから、どのやり方でも良いということにしましょう。」
「長い冒険を終えた二人は、夫々別の道を歩むことになった。」
「夫々の窓には、しっかりと錠がかかっている」
これらを類語で言い換えて、「各自の持ち場につきなさい」としたり、「おのおの考えがあるだろうから」としたり、「一つ一つの窓には」としたりすることも可能である。
「夫々」の英語用例・例文
「夫々」を英語で表記する場合、「each」という語が最も適当である。例えば、「彼はそれぞれのグラスにワインを注いだ」と言う文を英語にする場合は、「He poured wine into each glass.」というように表記する。また、「respectively」という語も、「それぞれ」と訳されることがある。この場合、複数のものごと同士が一対一ではっきりと対応することが前提であり、「妹と私は、それぞれハンバーガーとピザを注文した」といような文の時に、「My sister and I ordered a hamburger and a pizza respectively.」というように使用するので、「each」とは若干使用法が異なる。
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