《女郎花》の正しい読み方
「女郎花」の正しい読み方
「女郎花」の正しい読み方は「おみなえし」である。「おみなめし」と読まれる場合もある。「女郎花(おみなえし)」は、いわゆる熟字訓である。熟字訓は、2字以上からなる熟字に対して、個々の字とはかけ離れた訓読みを当てる読み方である。だから「女郎花(おみなえし)」を「女(お)+郎(みな)+花(えし)」のように分解することはできない。
「女郎」は「じょろう」と読める。とはいえ女郎花を「じょろうばな」とは読まない。
「女郎花」の意味解説
「女郎花」は、オミナエシ科オミナエシ属の多年草のことで、日本や東シベリア、中国に広く分布している。川の土手など山野に自生し、7月頃から秋にかけて黄色い小花を房状に咲かせる。女郎花の根は、乾かして煎じたものは生薬となり、「敗醤(はいしょう)」と呼ばれる利尿剤として用いられる。また、襲 (かさね) の色目(公家社会で衣服を重ねて着たときの色の取り合わせの種目)の名称でもある。
女郎花は「秋の七草」のひとつに数えられる。ちなみに秋の七草は、萩(はぎ)・薄(すすき)・葛(くず)・撫子(なでしこ)・女郎花(おみなえし)・藤袴(ふじばかま)・桔梗(ききょう)の7種である。万葉集も「女郎花(をみなへし)」は登場する。古くから親しまれてきた植物なのである。
なぜ「女郎花」と読むのか・理由
「おみなえし」の「おみな」には「女性」、「えし」には「圧倒させる」、という意味がある。細く長く伸ばした茎の先に可愛らしい黄色の小花を咲かせる姿が、女性を圧倒する美しさだったことから、そう読まれるようになったという説がある。また、古代において、女性が食べていたという黄色い粟ご飯「女飯(おんなめし)」が転じて、「おみなえし」と読まれるようになったという説もある。「女郎花」の類語・用例・例文
「女郎花」の類語に、「男郎花(おとこえし)」が挙げられる。用例として、「女郎花と呼ばれるオミナエシ科の多年草」「女郎花科という植物の種類」「女郎花科に属する野草」「白山女郎花という名称」が挙げられる。例文。
「…これは林の奥の古い墓地で苔むす墓が四つ五つ並んでその前にすこしばかりの空地があって、その横のほうに女郎花など咲いていることもあろう。」(国木田独歩 「武蔵野」)
「…空ざまに、波の上の女郎花、桔梗の帯を見ますと、や、背負守の扉を透…」( 泉鏡花「貝の穴に河童の居る事」)
「…黄なるに対して、女郎花の根にこぼれた、茨の枯葉のようなのを…」( 泉鏡花「小春の狐」)
「…と乱れて、女郎花の露を思わせるばかり。初夏はおろか、春の…」( 泉鏡花「七宝の柱」)
「…正面には女郎花が一番高く咲いて、鶏頭はそれよりも少し低く五、六本散らばって居る。」(正岡子規 「九月十四日の朝」)
「…車のいずるにつれて、蘆の葉まばらになりて桔梗の紫なる、女郎花の黄なる、芒花の赤き、まだ深き霧の中に見ゆ。」 (森鴎外 「みちの記」)
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