焼津市 概要

焼津市

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/02 07:47 UTC 版)

概要

焼津市遠景
大井川港に港するタンカーと富士山

高草山などの丘陵部を境に静岡市、西に藤枝市大井川を挟んで吉田町島田市に接する、志太平野駿河湾沿岸沿いの市である[2]

市内には焼津漁港(焼津港・小川港)と大井川港の2つの港湾があり、全国有数の水産文化都市として機能している。東西の交通アクセスを生かし、江戸時代より焼津漁港ではカツオ漁が盛んであり、現在はカツオマグロを主とする遠洋漁業の基地となっており、2020年(令和2年)の漁業水揚げ額は全国一位である[3][4]

静岡都市圏に属しており[5]、静岡市のベッドタウンである[6]。また、焼津市南部土地区画整理事業(やいづ南部)として166.4ヘクタールに及ぶ南部地区の再開発が行われており[7]、多数の幹線道路公共交通機関の整備や商業施設の集積が進んでいる[8]

地名の由来

日本神話で、日本武尊(ヤマトタケル)が東征の途中で地元の賊衆に襲われた時、草薙剣を薙ぎ倒し、そこで賊衆を迎えうち、火を放って難を逃れた。その様相が烈火のように見えた、あるいはその火で葦が焼け燃え盛ったという伝承から、「焼津」と命名された。

地理

焼津市中心部と焼津港周辺の空中写真。2020年8月16撮影の53枚を合成作成。
国土交通省 国土地理院 地図・空中写真閲覧サービスの空中写真を基に作成。
大崩海岸と富士山
和田浜海岸[9]

位置

東京から西へ約193km、名古屋から東へ約173km、京浜・中京のほぼ中間に位置する[2]志太平野大井川扇状地)の北東に位置する。

地形

静岡市との境には「東海の親不知」とも言われる大崩海岸がある。深海湾と呼ばれる駿河湾に面し、最近では新港の建設により、旧小川(こがわ)港を含めた広域漁港、焼津港を形成している。

山地

主な山

河川

主な川

気候

年間平均気温16.5℃、冬季の降雪もまれな温暖な気候で、面積は70.31k㎡、北部山間部を除き平坦な区域に、約5万5千世帯、約14万人の市民が生活している[2]

地域

市内はおおまかに7つの地区に区分される。

※ この項では大字に当たる住所上の地名を記述する。
焼津(やいづ)
  • 鰯ケ島(いわしがしま)
  • 城之腰(じょうのこし)
  • 北浜通(きたはまどおり)
  • 焼津(やいづ)
  • 焼津(やいづ)(一〜六丁目)
  • 本町(ほんまち)(一〜六丁目)
  • 新屋(あらや)
  • 栄町(さかえまち)(一〜六丁目)
  • 塩津(しおつ)
  • 駅北(えききた)(一〜五丁目)
  • 大栄町(だいえいちょう)(一〜三丁目)
  • 中港(なかみなと)(一〜六丁目)
  • 大村新田(おおむらしんでん)
  • 大村(おおむら)(一〜三丁目)
  • 八楠(やぐす)
  • 八楠(やぐす)(一〜四丁目)
  • 大覚寺(だいかくじ)
  • 大覚寺(だいかくじ)(一〜三丁目)
  • 越後島(えちごしま)
豊田(とよだ)
  • 三ケ名(さんがみょう)
  • 五ケ掘之内(ごかほりのうち)
  • 小屋敷(こやしき)
  • 西焼津(にしやいづ)
  • 柳新屋(やなぎあらや)
  • 小柳津(おやいづ)
  • 小土(こひじ)
  • 保福島(ほふくじま)
小川(こがわ)
  • 小川(こがわ)
  • 小川新町(こがわしんまち)(一〜五丁目)
  • 東小川(ひがしこがわ)(一〜八丁目)
  • 西小川(にしこがわ)(一〜八丁目)
  • 与惣次(よそうじ)
  • 石津(いしづ)
  • 石津向町(いしづむかいちょう)
  • 石津中町(いしづなかちょう)
  • 石津港町(いしづみなとちょう)
東益津(ひがしましづ)
  • 策牛(むちうし)
  • 関方(せきがた)
  • 方ノ上(かたのかみ)
  • 坂本(さかもと)
  • 石脇上(いしわきかみ)
  • 石脇下(いしわきしも)
  • 小浜(おばま)
  • 野秋(のあき)
  • 花沢(はなざわ)
  • 吉津(よしづ)
  • 高崎(たかさき)
  • 中里(なかざと)
  • 岡当目(おかとうめ)
  • 浜当目(はまとうめ)
  • 浜当目(はまとうめ)(一〜四丁目)
大富(おおとみ)
  • 本中根(ほんなかね)
  • 中根(なかね)
  • 中根新田(なかねしんでん)
  • 中新田(なかしんでん)
  • 大住(おおずみ)
  • 三右衛門新田(さんうえもんしんでん)
  • 治長請所(じちょううけしょ)
  • 祢宜島(ねぎしま)
  • 道原(どうばら)
  • 三和(みわ)
  • 大島(おおじま)
和田(わだ)
  • 惣右衛門(そううえもん)
  • 一色(いっしき)
  • 田尻(たじり)
  • 田尻北(たじりきた)
  • 下小田(しもおだ)
  • 下小田中町(しもおだなかまち)
  • 北新田(きたしんでん)
  • すみれ台(すみれだい)(一〜二丁目)
大井川(おおいがわ)
  • 中島(なかじま)
  • 飯淵(はぶち)
  • 利右衛門(りえもん)
  • 吉永(よしなが)
  • 高新田(たかしんでん)
  • 宗高(むなだか)
  • 上小杉(かみこすぎ)
  • 藤守(ふじもり)
  • 下小杉(しもこすぎ)
  • 相川(あいかわ)
  • 西島(にしじま)
  • 上泉(かみいずみ)
  • 下江留(しもえどめ)
  • 上新田(かみしんでん)

人口

焼津市と全国の年齢別人口分布(2005年) 焼津市の年齢・男女別人口分布(2005年)
紫色 ― 焼津市
緑色 ― 日本全国
青色 ― 男性
赤色 ― 女性

焼津市(に相当する地域)の人口の推移
総務省統計局 国勢調査より

隣接自治体・行政区

静岡県

歴史

古代

中世

近世

江戸時代の町並みを残す花沢地区重要伝統的建造物群保存地区
  • 1594年(文禄3年):この頃の和田湊は、大井川奥地の木材を江戸へ回送する集散港であった。
  • 江戸時代には田中藩の治下に置かれる。
  • 1614年(慶長19年):焼津産の生鰹と甘鯛を、駿府城に隠居していた徳川家康に献じる。
  • 1642年(寛永19年):田中藩が浜奉行を設け、海岸の防衛や漁村の貢税の取り立てを行う。
  • 1705年(宝永2年):古文書によれば、鰹節の製造が既に行われていた。
  • 1753年(宝暦3年):永豊寺住職(小川)が、宇治より緑茶種子を持ち帰り、村民に緑茶の栽培を教える。

近代

大井川流域の町村制施行時の町村。33が焼津村。(19.豊田村 20.大富村 21.静浜村→大井川町 22.相川村→大井川町 23.吉永村→大井川町 24.和田村 25.小川村 31.西益津村 32.東益津村)
明治
  • 1871年(明治4年)8月29日廃藩置県で静岡県に属する。
  • 1884年(明治17年)7月:戸長を官選に改め、戸長役場を置く。
  • 1889年(明治22年)10月1日:村制施行により益津郡焼津村が発足。
  • 1896年(明治29年)4月1日:益津郡・志太郡の区域に改めて志太郡が設置され、同郡の所属となる。
  • 1897年(明治30年)8月4日小泉八雲が初めて焼津を訪れる。
  • 1901年(明治34年)
    • 6月28日:町制施行(戸数 1,780戸、人口 10,472人)。焼津町となる。
    • 鰹節の焼津節が土佐節を抜き、東京鰹節相場の首位を確保する。
  • 1903年(明治36年):焼津漁業組合を設立。
  • 1907年(明治40年):焼津漁船の、で冷やす鮮魚の運搬方法が一気に普及する。
  • 1908年(明治41年):鉄道輸送に冷蔵貨車が登場。焼津港の鮮魚の高速輸送が本格化する
  • 1909年(明治42年):このころから焼津漁船の動力化がすすむ。
大正
  • 1924年(大正13年):焼津港初の鋼船が進水。
  • 1925年(大正14年):焼津漁業組合に民間初の漁業無線局が認可される。

近現代

昭和(戦前)
  • 1926年(昭和元年)[元号要検証]:焼津港のカツオ船が急増したため、定数を決め、以後5年間は増加を中止する措置をとる。
  • 1930年(昭和5年)5月30日: 昭和天皇が静岡県内を行幸。焼津町内は鰯ケ島海岸や鰹節製造工場を視察[10]
  • 1937年(昭和12年)7月:焼津船籍の漁船の徴用が始まる。
  • 1941年(昭和16年)8月:漁船の徴用で焼津港の遠洋漁船のほとんどが消滅。焼津港の徴用船はわかっているだけでも 113隻。うち、1940年以後の徴用船で無事帰還できたのは 10隻あまり。乗組員 401人の戦死が確認されている。
昭和(戦後)
  • 1946年(昭和21年)6月18日:昭和天皇の戦後巡幸。焼津魚市場、焼津造船所を視察[11]
  • 1951年(昭和26年)
    • 3月1日:市制施行(戸数 5,604戸、人口 31,016人)。焼津市となる。
    • 6月4日焼津漁港(内港、第一船停泊地約5万m2)完成。
  • 1953年(昭和28年)11月1日:志太郡豊田村を合併。
  • 1954年(昭和29年)3月1日:焼津港を出港した第五福竜丸が、ビキニ岩礁近海で水爆実験に遭い、被曝する。
  • 1954年(昭和29年)3月31日:志太郡藤枝町大覚寺上・大覚寺下地区を合併。(藤枝町の残部は藤枝市の一部となる)
  • 1955年(昭和30年)1月1日:志太郡東益津村小川町大富村和田村を合併。
  • 1956年(昭和31年)
    • 3月:原水爆実験禁止を焼津市議会で議決。
    • 焼津漁港が水揚高68億円に達し、漁港日本一となる。
  • 1957年(昭和32年)4月1日:志太郡広幡村越後島地区を合併。(広幡村の残部は藤枝市へ編入)
  • 1958年(昭和33年):市域の急速な拡大と、それに伴う旧町域への設備投資が嵩み、市財政の累積赤字が4億円を超える。
  • 1958年(昭和33年):赤痢の集団発生。住民821人が感染。原因は上水道の汚染[12]
  • 1959年(昭和34年):昭和通り改装オープン。財政再建促進特別措置法準用団体に転落。
  • 1961年(昭和36年):平和都市宣言。
  • 1965年(昭和40年)10月:マリアナ群島アグリハン島沖合において焼津港所属船2隻遭難、乗組員72名が殉職。(マリアナ海域漁船集団遭難事件
  • 1966年(昭和41年)
    • 3月:昭和40年度末にて財政再建計画書による財政再建を2カ年前倒しで達成、財政再建団体から脱出。
    • 10月:交通安全都市、衛生都市を宣言する。
  • 1968年(昭和43年)3月:焼津漁港の第二・第三船停泊地完成。
  • 1969年(昭和44年):焼津新港(第四計画)起工。
  • 1970年(昭和45年)8月:焼津漁協、超低温冷蔵庫(-45℃、収容能力2,000t)が完成する。
  • 1977年(昭和52年)
    • 2月:ホバート市と姉妹都市提携。
    • 5月:10万都市となる(県下7番目)。
    • 5月2日:日本が200カイリ漁業水域を設定。焼津船籍の漁業水域も大幅に制限される。
  • 1979年(昭和54年)7月:東名日本坂トンネル大火災事故
  • 1980年(昭和55年)4月:障害者福祉都市の指定を受ける。
  • 1983年(昭和58年):第3セクター「株式会社焼津水産振興センター」設立。
  • 1985年(昭和60年)
    • 6月:「核兵器廃絶を願う焼津宣言」を市議会で議決。
    • 10月:焼津さかなセンター、オープン(株式会社焼津水産振興センター発足、現在は協同組合)。

現代

平成
令和

災害史

主な自然災害(20世紀以降)
  • 1923年9月1日 大正関東大震災
  • 1930年2月13日- 伊東群発地震
  • 1930年11月26日 北伊豆地震(三島市で最大震度6,死者272人)
  • 1944年12月7日 昭和東南海地震(静岡県御前崎市で最大震度6)
  (死者・行方不明者1223人、伊豆から紀伊に津波)
  • 1974年5月9日 伊豆半島沖地震(静岡県南伊豆町で最大震度5、死者30人)
  • 1978年1月14日 伊豆大島近海の地震(伊豆大島と横浜市で最大震度5、死者25人)
  • 1980年6月25日- 伊豆半島東方沖で群発地震(伊豆大島と熱海市で最大震度5)
  • 1989年6月30日- 伊豆半島東方沖で群発地震(熱海市で最大震度4)
  • 1989年7月13日【手石海丘】海底火山噴火(伊豆東部火山群)
  • 1998年4月20日 伊豆半島東方沖で群発地震(伊豆大島と熱海市・伊東市で最大震度4)
  • 2009年8月9日 東海道南方沖で地震(最大震度4)
  • 2009年8月11日 駿河湾で地震(静岡県御前崎市・牧之原市・焼津市・伊豆市で最大震度6弱)
  (東海地震観測情報を発表、最大40cmの津波)

  1. ^ a b c 統計やいづ第96号 平成24年度版”. 焼津市 (2013年). 2014年7月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年3月15日閲覧。
  2. ^ a b c 静岡県焼津市のすがた”. 焼津市 (2022年8月1日). 2023年10月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年3月15日閲覧。
  3. ^ 焼津漁港の概要”. 焼津市. 2021年5月22日閲覧。
  4. ^ 焼津港の水揚げ額日本一 412億円、5年連続”. あなたの静岡新聞. 静岡新聞社 (2021年1月10日). 2021年1月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年3月15日閲覧。
  5. ^ 都市雇用圏-Urban Employment Area-”. 東京大学空間情報科学研究センター. 2020年3月22日閲覧。
  6. ^ 焼津市人口ビジョン”. 焼津市. 2023年10月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年3月15日閲覧。
  7. ^ 焼津市の魅力と開発が進む南部エリアのプロフィールを紹介”. そのうち|静岡県焼津市の新築マンション/エンブルエバー焼津を徹底レポート. 2021年5月22日閲覧。
  8. ^ やいづ南部の魅力 - やいづ南部/焼津市の分譲地”. 焼津市南部土地区画整理組合. 2021年5月22日閲覧。
  9. ^ 増田喜久撮影『和田浜海岸からの富士山』2021年2月18日。
  10. ^ 原武史『昭和天皇御召列車全記録』新潮社、2016年9月30日、68頁。ISBN 978-4-10-320523-4 
  11. ^ 『昭和天皇御召列車全記録』p.92
  12. ^ 日外アソシエーツ編集部編 編『日本災害史事典 1868-2009』日外アソシエーツ、2010年、131頁。ISBN 9784816922749 
  13. ^ 焼津市花沢伝統的建造物群保存地区の紹介”. 焼津市. 2014年10月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年3月15日閲覧。
  14. ^ 焼津市新庁舎21日開庁。7階には漁港展望ロビー”. 中日新聞 (2021年9月2日). 2021年9月8日閲覧。
  15. ^ 焼津市の財政事情”. 広報やいづ 2012年10月15号. 焼津市. 2023年10月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年3月15日閲覧。
  16. ^ 当初予算について”. 焼津市 (2012年4月11日). 2012年7月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年3月15日閲覧。
  17. ^ 静岡県警察航空隊 - 静岡県警察
  18. ^ 焼津市立焼津図書館『図書館要覧 平成20年度版』焼津市立焼津図書館、2008年
  19. ^ 長谷川佐撮影『ビオトープ園』2020年7月21日。
  20. ^ 原崎高行撮影『石津浜からの初日の出』2021年1月1日。
  21. ^ 奥津藤也撮影『石津海岸公園』2019年8月4日。
  22. ^ 増田貴文撮影『瀬戸川の鯉のぼり』2021年5月3日。
  23. ^ 大石一美撮影『林叟院』2020年6月22日。
  24. ^ この動画の漁師さんの言葉を参照してください ヒートテック実感の声-静岡編- - ウェイバックマシン(2017年11月22日アーカイブ分) youtube(UNIQLO).2020年1月14日閲覧。






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