人格
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/20 00:11 UTC 版)
人間関係と健康なパーソナリティ
パーソナリティの概念規定は様々ありはするが、人間関係の問題にかかわる場面に限定するなら、実際的に活用できる概念規定としては「パーソナリティとは、人間に特徴的な行動と考えとを決定する精神身体的体系の力動的組織」とするゴードン・オルポートの定義であろう[3][4]。そしてさらに「性格、気質、興味、態度、価値観などを含む、個人の統合体である」としておくとよい[3]。
マズローは、自己実現の原動力となる欲求として<生理的欲求・安全欲求・所属および愛情欲求・尊重欲求・自己実現欲求>を挙げた上で、左側の下位の欲求から上位の欲求へと満たしてゆき、最終的に高次の動機(メタモティベーション)に達するとした。つまり、下位の欲求から充足され最終的に最も高次の欲求に至る人が、より健康的なパーソナリティの人だ、としているわけである[5]。
ゴードン・オールポートは健康なパーソナリティの規準として、次の6つを挙げた[5]。
- 1) 自己意識の拡大。自己自身だけに集中的に向けられていた関心が、家族・異性・趣味・政治・宗教・仕事へと広がり、これにどれだけ積極的に参加し、自己をどれだけ拡大してゆくか。いわば、他人の幸福を自分の幸福と同一視できるほど重要視し、拡大視できるか。
- 2) 他人との暖かい人間関係の確立。家族や友人に対して、どれほど深い愛情を伴う親密さと、全ての人の人間的状態に敬意を払い理解するという、共感性を持つことができるか。
- 3) 情緒的安定。欲求不満の状況でもそれを受容するとともに、これをどれほど適切冷静に処理し、安定した精神状態を保つことができるか。
- 4) 現実的知覚、技能および課題。歪曲されない正確な現実認識と、真実性への認知の構えをどれほどもっているか。基本的知的能力だけでは不十分で、むしろ高い知的能力をもちながら、情緒的均衡を欠くために、健康なパーソナリティとなれない人も多数存在する。
- 5) 自己客観化、洞察とユーモア。自分自身とは何か、自分自身が持っているものは何か、他人は自分が何を持っていると思っているのか、といったことを客観的に知り、洞察しているか。この洞察とユーモア感覚は強く関連している[6]。
- 6) 人生を統一する人生哲学。人生をいかに生きてゆくか、という目標への指向性をどれほど明確にもっているか。そして、人生に統一を与えてくれる哲学、すなわち価値への指向をどれだけもっているか。[注釈 1]
注釈
出典
- ^ M.Hewstone etc., Psychology, BPS Blackwell,2005,
- ^ a b c マット・リドレー『進化は万能である: 人類・テクノロジー・宇宙の未来』大田 直子, 鍛原 多惠子, 柴田 裕之, 吉田 三知世訳 早川書房 2016 ISBN 9784152096371 pp.209-221.
- ^ a b 『人間関係の心理と臨床』p.196
- ^ Allport, G.W. 1937, "Personality ; A psychological interpretation.", NewYork : Holt, Rinehart & Winston
- ^ a b 『人間関係の心理と臨床』p.205
- ^ 洞察とユーモアの評定の相関は0.89という高い値である。(『人間関係の心理と臨床』p.206)
- 1 人格とは
- 2 人格の概要
- 3 哲学における人格概念
- 4 人間関係と健康なパーソナリティ
- 5 脚注
人格と同じ種類の言葉
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