人格の区画化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/21 00:07 UTC 版)
「ネガティブな心的内容」を離人症状や体外離脱でやり過ごしたり、その記憶を切り離すことは本能的な防衛反応とも云え、一時的なもので済めば障害とはいえない。しかしそれが恒常化すれば、抑圧し切り離した記憶もまた自分の一部であるので、何らかの形で自分を縛っている。それがさらに進んで切り離した自分の記憶や感情が表の自分とは別に心の裏で成長し、それ自身が意志をもったひとつの「わたし」となる(以下本稿では「私」と「わたし」を区別して表記する)。ひとりの人間(人格)の記憶と感情が区画化され、壁で隔てられた状態である。 柴山雅俊は「ネガティブな心的内容」を受け持った「切り離されたわたし」を「身代わり部分」「犠牲者としてのわたし」、「切り離した私」を「存在者としての私」と呼んでいる。「犠牲者としてのわたし」は心の中で生き続けている「まなざしとしてのわたし」でもある。「存在者としての私」は「まなざしとしてのわたし」の気配、視線を感じて「後ろに誰かいる」と気配過敏症状を表す。 「切り離した私」は「切り離されたわたし」を知らないが、「切り離されたわたし」は「切り離した私」のことを知っていることが多い。そして「切り離されたわたし」が一時的にでもその体を支配すると、表では人格の交代となる。しかしほとんどの場合、周りの者には「急に性格が変わる」と思われるだけで別人格だとは気づかれない。「元々の私」「切り離した私」を主人格 (host parsonality)、または基本人格 (original pasonality) と呼ぶ。それに対して「切り離されたわたし」が解離した別人格であり、交代人格 (alter personality) という。交代人格がその体を支配していることもある。交代人格しかいない場合もある。 バン・デア・ハート (Van der Hart) らの構造的解離理論では「あたかも正常に見える人格部分 (ANP)」と「情動的人格部分 (EP)」に分けている。ANPは日常生活をこなそうとする人格部分 (personality parts) であり、EPは心的外傷を受けたときの過覚醒、逃避、闘争などに関わっている。そしてその組み合わせにより、構造的解離は3つに分類される。 詳細は「解離性障害#構造的解離理論」を参照
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