人格の病理
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『やせ症との対話』(1988) は、病を押してブルッフがテープに吹き込みで残したもので、ブルッフの最後の著書となった。体力の限界をおして本書を遺したのは、当時増加していた行動療法や家族療法だけで患者を治療する傾向に対して警鐘を鳴らす意図があったとされる。そのような手段で得られた治癒は、患者が苦しんでいる深い情緒的問題をほとんど取り上げないため、治療を終えても苦しみ続ける患者がいることをブルッフは数多く観察していた。ブルックは本書において、患者へのさりげない語りかけの言葉の中で、摂食障害の本質について極めて重要な以下の指摘をしている。 これは奇妙な病気だと思いませんか。食欲とか食物とか体重に関連する病気のように言われていますが、実はそうではないのです。対人関係で自分が人からどう見られているかという自尊心の病気なのです。 — ヒルデ・ブルック『やせ症との対話』、星和書店、1993年、70頁。 拒食症患者は底知れぬ自尊心の欠如を抱えており、両親の極めて侵入的な世話を長年にわたって受け続けている。患者のほとんどは、両親を喜ばせることと両親の期待に応えることを命題として生きてきた人々であり、その体験の蓄積からくる葛藤が症状となって患者を支配し、食事制限を行うようになる。ブルッフは、こうした人格的な問題を注意深く取り上げ続ける必要性を伝えている。
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