交代人格
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/21 00:07 UTC 版)
交代人格の現れ方は多様であるが、例えば弱々しい自分に腹を立てている自分、奔放に振る舞いたいという押さえつけられた自分の気持ち、堪えられない苦痛を受けた自分、寂しい気持を抱える自分などである。先に述べたように、「切り離した私(主人格)」は「切り離されたわたし(交代人格)」のことを知らない。そして、普段は心の奥に切り離されている別の「わたし(交代人格)」が表に出てきて、一時的にその体を支配して行動すると、「切り離した私(主人格)」はその間の記憶が途切れ、戻ってきたときにはその間に何があったのかを知らない。 交代人格は「元々の私」が切り離した主観的体験の一部、あるいは性格の一部であるので極めて多様であるが、事例によく現れるのは次のようなものである。 主人格と同性の、同い年の交代人格。ただし性格が全く異なる。 そのほか、受け持つ事件が起こったときの年齢の交代人格が現れることもある。 子供の交代人格もよく出てくる。4 - 7歳児が多いが、2歳児の人格も報告されている。 他の交代人格の存在を知らず、別の交代人格が表に現れているときの記憶を全く持たない交代人格がある。主人格もそうであるので、幻聴や健忘に困惑しても本人は交代人格がいることに気がつかない。 逆に主人格や、他の交代人格の行動を心の中から見て知っている交代人格もある。 怒りを体現する交代人格や、絶望、過去の耐え難い体験を受け持つ交代人格。リストカットや睡眠薬で自殺を図ろうとする自傷的な交代人格もそのなかに多い。性的に奔放な交代人格が現れることもある。 異性の交代人格なども現れる。 逆にこの子(自分なのだが)はこうあるべきなのだと考えている理知的な交代人格が現れる場合もある。ラルフ・アリソンがISH(内的自己救済者)と呼んだものもこの範疇になる。 危機的状況で現れて、その女性の体格では考えられない腕力でその子を守る交代人格もある。 それらの交代人格は表情も、話言葉も、書く文字も異なり、嗜好についても全く異なる。例えば喫煙の有無、喫煙者の人格どうしではタバコの銘柄の違いまである。絵も年齢相応になる。また心理テストを行うとそれぞれの人格毎に全く異なった知能や性格をあらわす。顔も全く違う。勿論同じ人間なのだから基本となる骨格、目鼻立ちは同じではあるが、単なる表情の違いとは全く異なる。そのほか演技では不可能な生理学的反応の差を示す。 多重人格といわれてもひとつの肉体に複数の人格が宿った訳ではない。あたかも独立した人格のように見えても、それらは一人の人格の「部分」である。例えていえば人間の多面性の一面一面が独立してしまったようなものであり、逆にその分、主人格は「感情」が薄いことが多い。なお、治療者はそれぞれの理解と治療方針に基づいて様々な交代人格の分類を行うことがあるが、一般化はできない。
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