ヨウサイ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/07 04:24 UTC 版)
栽培
播種時期の選定や低温障害を受けないようにすること、また十分水分を与えて肥料の効果が長続きするようにすれば、容易に栽培することができる[11]。多湿の土壌を好み、高温には非常に強い性質で、生育温度は25度前後[12]、発芽適温は25 - 30度とされる[13][2]。その一方で低温にはきわめて弱く、気温が低くなると急速に戸建ちが悪くなって10度で発育が止まり、霜に遭うと枯死する[12][2]。乾燥を嫌うため、畑作の場合は生育中の水やりを怠らないようにする[2]。
文献によって一年草か多年草の両方の記載が見られるが、これは栽培する地域によって越冬可能かどうかによるものと考えられている[12]。沖縄などを除く日本の中間地域では露地越冬は不可能なため一年草となり[12]、栽培期間は春(4月)から秋(9月)までで、芽先を収穫していくと次々に分枝して秋まで収穫できる[13]。連作障害は出にくい[13]。繁殖は種子繁殖か栄養繁殖の両方で行われる[12]。しかし秋に開花しても採種は困難で、一部の品種は遺伝的に開花結実しないため、挿し芽による栄養繁殖だけで維持増殖がされている[12]。
中国などでは、畑、水田(浅水)、浮水の3種類の栽培法がある[11]。浮水栽培は、竹と縄で組んだイカダを池に浮かべて、そこに30 cm程度に伸びた挿し苗を植え付けて水上栽培する方法である[11]。日本では、多くは畑作栽培が行われており、直播き・育苗のどちらでも栽培できる[11]。
畑作の場合、20度を超えてから腐葉土を入れた育苗ポットに種を播いて苗作りを始める[13]。畑は土壌水分含量が高く日当たりのよい場所を選び、苗を定植する2 - 3週間前に堆肥を施して耕しておいてから、高さ5 - 10センチメートル (cm) の畝を作る[11][13]。種を播いてから2週間ほどで発芽し、本葉が4、5枚になったら株間をゆったりとって畑に定植する[14]。種からでも育てられるが、家庭では初夏に市販のクウシンサイ(ヨウサイ)のつる先10 cmくらいを挿し芽で発根させ、育てるほうが手軽にできる[15]。
つるは極めて旺盛に伸びて畑全面を覆うようになるので、畝間を十分広くとって苗を植え付ける[16]。地温維持と乾燥防止、雑草抑制対策のため畝にはマルチングを施しても良く、資材はビニールの他、紙や藁を使ってもよい[14]。良品多収のためには肥料切れを起こさないように管理する[2]。追肥は草丈が15 cmくらいになったころから始め、畝間にぼかし肥や鶏糞を与えるとよいとされる[14]。株が高さ30 cmになったら収穫を始める合図で、芽先を15 - 20 cm切って随時収穫する[11][14]。そのあと、次々に側枝が伸びてくるため、伸びてきた側枝を20 - 30 cmの長さで収穫する[11]。つるの伸びが早いため、遅れないように次々と収穫する[2]。つるが混み合ってくると軟弱な芽しか取れなくなってくるため、密になったところを刈り取って、つるをまばらにすると良くなる[15]。
日本でも、沖縄県で従来より栽培されていたほか、九州地方などの温暖な地域で栽培が広がりつつあり、栽培農家も増えている。消費者が入手または栽培するのも容易になりつつある。
コンテナ栽培でも育てやすく、家庭菜園にも向いている[6]。岐阜県立恵那農業高等学校では、水を入れたコンテナ容器で栽培する方法「コンテナドボン栽培」を開発[17]。名古屋市堀川において、ポットトレイにペットボトルをつけた「ペットボトルミニ浮島」での栽培を2010年に行い、1%程度の塩分を含む汽水域での栽培が可能であることを確認した。2017年2月には竹をしならせ二重のビニールテープで固定した「竹製浮島」を考案し、同年7月に栽培実験を行った。
病虫害
台湾の文献では、白さび病、タニシ類、ヨトウムシなどが防除対策のいる病害虫としてあげられている[11]。ただし、日本ではほとんど問題にならず、ハスモンヨトウの食害に遭う程度である[11]が、サツマイモ属に属するため、 アリモドキゾウムシ・イモゾウムシの宿主植物となることから、沖縄県・奄美諸島から日本本土への植物体の持ち込みは検疫によって禁止されている。
栽培品種
中国南部では重要な野菜のひとつであり、記載されている品種の数も多い[12]。繁殖方法によって種子繁殖の品種の系統[注 1]と、遺伝的にまったく開花結実しないため株分けによる栄養繁殖の品種の系統に大別できる[12]。また、栽培条件によって水生と陸生にも系統分けができる[12]。日本の育苗会社が市販するものはほとんど固有品種名を持たず、「エンサイ」「カンコンサイ」などの作物名をそのまま用いており、市販品種間の形質差も明確な違いが見られないことから類似系統と考えられている[12]。
下記は『広州蔬菜品種誌』にみられる品種を示したものである[12]。
- 大骨青(青売) - 茎径1 cmで分枝はやや少なく、葉は深緑色で長さ11.5 cm、幅8 cmの長卵形で葉質はやわらかい。水田早熟栽培で、種子繁殖が行われる。[12]
- 大鶏青(緑豆青) - 茎径1.5 cmで分枝はやや多く、葉は深緑色で長さ6 cm、幅7 cmの長卵形で質がやや劣る。水田栽培で、種子繁殖が行われる。[12]
- 大鶏白(青葉白殻) - 茎径1.5 cmで分枝はやや多く、葉は深緑色で長さ12 cm、幅7 cmの長卵形で優良品種。畑作栽培で、種子繁殖が行われる。[12]
- 大鶏黄(黄葉白殻) - 茎径1.5 cmで分枝はやや多く、葉は黄緑色で長さ11 cm、幅6.5 cmになる長卵形で優良品種。水田栽培で、種子繁殖が行われる。[12]
- 白殻(薄殻) - 茎径1.7 cmで分枝はやや少なく、葉は緑色で長さ15 cm、幅10 cmにもなる長卵形で優良品種。浮水栽培で旺盛な生育を示し、種子繁殖が行われる。[12]
- 剣葉通菜 - 茎径0.8 cmで分枝が多く、葉は青緑色で長さ4 - 7 cm、幅3 cmの長披針形。畑作と水田栽培の両方に対応し、種子繁殖が行われる。[12]
- 細通菜(蕹菜仔、鉄線梗) - 茎径0.5 cmと細く、葉は深緑色で長さ7 cm、幅3 cmの短披針形の優良品種。畑作栽培で収穫期間は長く、繁殖は株分けによって行われる。[12]
- 糸蕹(細通) - 茎径0.6 cmと細く、葉は深緑色で長さ4.5 cm、幅3.5 cmの短披針形の優良品種。茎と葉柄が紫紅色になるのが特徴。畑作栽培で収穫期間は長く、繁殖は株分けによって行われる。[12]
注釈
出典
- ^ a b c d e 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Ipomoea aquatica Forssk. ヨウサイ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年10月22日閲覧。
- ^ a b c d e f 板木利隆 2020, p. 338.
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o 農文協編 2004, p. 31.
- ^ a b c d e f g 主婦の友社編 2011, p. 242.
- ^ [(商品名)「空芯菜」第4343207号。1999年12月10日登録]
- ^ a b c d e f g h i 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 21.
- ^ 第4372141号。2000年3月31日登録。
- ^ 第4512839号。2001年10月12日登録。
- ^ 「[1]阿木川ダム水質浄化実験」恵那農業高校 環境科学科
- ^ 「[2]名古屋市堀川にて水質浄化実験」
- ^ a b c d e f g h i 農文協編 2004, p. 33.
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t 農文協編 2004, p. 32.
- ^ a b c d e f 金子美登・野口勲監修 成美堂出版編集部編 2011, p. 140.
- ^ a b c d 金子美登・野口勲監修 成美堂出版編集部編 2011, p. 141.
- ^ a b 板木利隆 2020, p. 340.
- ^ 板木利隆 2020, p. 339.
- ^ 月刊現代農業2014年11月号に掲載
- ^ 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 98.
- ^ 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 59.
- ^ “水辺で育つ空芯菜で体に栄養、きれいな環境”. 名古屋市上下水道局. 2020年2月4日閲覧。
- ^ [3]厚生労働省:急性毒性(経口)の区分
- ^ [4]安全データシート:しゅう酸カルシウム一水和物
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